B:目覚めぬ龍の夢
次回からは知っている人は知っている知らない人は知らない物語が始まる予定です。
プロローグ〜I don’t know〜
「ん?」
さっきまで誰からかわからない電話を聞き流してきた。俺には良くあることで、相手は公衆電話から意味不明なことを述べて勝手にきってしまう。きっと、中学の頃の友達だろう。
俺は高校一年の入学式の帰り道に橋の下を覗こうとしたのだが…………
「おい、こんなところで油売っている暇があったらさっさと家に帰って夕食を作れよ!」
「あ、はい………」
俺が居候先として厄介になっており、師匠でもある人物がとても怖い顔で睨みつけてくる。ぞんざいな口調だが見た目麗しの女性である。
「また、酒でも飲んできたんですか?」
「ああ、今日はくだらねぇ、仕事ばっかりだったからなぁ………ご老人と飲み比べなんて馬鹿な仕事がこの世にあるとは思わなかったなぁ………」
「じゃ、今日は胃に優しそうな夕食を準備しておきます」
「ん、ありがとな………ところで、何を見てたんだ?」
「えっと、橋の下に何かいたような気がして………」
「ああ………」
頭をぼりぼりとかきながら橋の下を眺め………一瞬だけ、鋭い表情を見せる。
「今、絶対に行くなよ?あそこには私の秘蔵の酒があるからな………行ったら今夜の修行は手を抜かずにボコボコにしてやるからな?」
「あ………わ、わかりました」
酒のこととなると非常に怖いこの人のことだ。本当に言ってしまったら吊るされて井戸に落とされる可能性が高い。
「ほら、おとなしく帰りな!これも修行だと思って全速力で帰れよ?」
「わ、わかりました!!」
俺は帰り道を間違えることなく、そして、もてる力をすべて吐き出して走り出した。
「………本当にあの師匠の孫ってだけはあるな………もうちょっと来るのが遅かったらあいつは間違いなく見てただろうなぁ………せめて、あと一年だけ猶予が欲しい」
彼女は橋の下へと向かっていき、そこにいた相手を川に放り投げたのだった。
「やれやれ、輝にはまだしゃべっちゃいけないってのがつらいねぇ〜」
彼女はそういってその場を後にしたのだった。




