龍と書いてドラゴンと呼ぶ?:日々は続く、どこまでも
七、
季節も夏になり………変わったことといえば………
「暑い………」
ということだった。それ以外に変わったことなんてない。成績は上がったり下がったりを繰り返し、加奈は相変わらずつっけんどんだし、南海は南海で未だに語尾を
「っす」のままで通している。夏休み真っ只中………
「え〜今回は肝試しに行ってもらおうと思う」
美琴さんはばば抜きをしている俺たちに言った。あ、俺にばばがまわってきたようだ。
「肝試し?」
「のわぁっす!!」
よし、南海にいったな………
「ああ、そうだ」
「あ、ばば………」
「よかったっす」
「……ほら、輝の番よ」
「あ、おれあがりだわ………最後は罰ゲームだからな」
ちなみに罰ゲームは一週間の家事である。
「………むぅ、右がアウトっすかね………」
「いや、左がアウトと思うわよ?」
二人して汗かきながら心理戦を行っている。ま、俺は既に一位だから関係のない話しだ。
「お前ら、話をきちんと聞いているのかい?」
「ええ、今回はばば抜きをしようって話でしょう?楽勝ですよ♪」
ゴキン!!
どうやら、ふざけたのが間違いだったようだ………
「すいません、肝試しですね?」
美琴さんは俺を叩いたこぶしをふりながら頷く。
「来月、この近隣の学校を貸しきって行われる……意外と大きな肝試しだ」
「毎年あっている奴ですか………」
「去年は大暴れした輝の責任を私が取らなくてはいけなかったから、今年は暴れないようにしろよ?」
「わかってますって」
俺はそういって首をすくめた。
「何?輝って怖いものが駄目なの?ビビッて建物壊したの?」
なんだかニヤニヤした表情でそんなことを言ってくる加奈だったが………
「いや、輝は驚かしてもらうほうだ。昨年度はやりすぎたおどろかしのせいで新学期になっても閉鎖された教室があったぐらいだったからな………輝、お前のせいで学校七不思議が二桁にいってしまったんだぞ?」
「すいません」
「………あ、あんた何したの?」
「さぁな?俺が見つかったときは既に意識を失っていたそうだからな〜」
「ま、今年も輝はおどろかす側………それで、あんたたち二人は参加者側だからな」
さて、今年も日本の恐怖の夏が…………始まる。まだ、このとき俺たちは肝試しを普通に出来ると思っていたのだった。
小学校には俺以外にもおどろかす側の人間が何人か来ている。
「はい、輝君………あなたは今年はこれしか渡されていませんよ?」
手渡されたのはこんにゃくだった。
「さて、じゃ今年は釣竿で相手の顔面にこんにゃくをぶつけるだけにするか」
持参していた釣竿にこんにゃくをくっつける。
舞台となるこの小学校は四階建てであり、肝試しのルールを説明するとまず、抽選で選ばれた合計三十組のうちの一組(男女混合でもそれ以外でもいい)がはいり、学校の一つ一つを回って印鑑を押してくる。
監視カメラによってその光景は中央管理室で見物されており………そこで驚いた回数、度合いなどによって順位を決定する。一位となった参加者たちは豪華商品がもらえるらしい。そして、おどろかした側でも順位があって一位になると一応豪華商品がもらえるそうだ。去年、俺は一位になったのだが気絶していたために壇上に上がれずに病室で一位の豪華商品?(鉢植えのお花)をもらった。正直、要らなかった。
「ま、今年は一位は無理だろうからな………」
さすがにこんにゃくじゃ無理だろう。俺が陣取った場所は保健室だ。この部屋は本当に出るといわれており………俺だってこんな場所にはいたくないが困ったことにここにする以外もう場所がない。まぁ、もうそろそろ始まってしまうし、確か加奈と南海は最後のほうだといっていたな………
「…………」
聞こえてくるのは自分の心臓の音ぐらいだろうか?
「………」
ひたひたひたひた………
「あれ?」
なんだか素足で廊下を歩いているようなおかしな音がこちらに向かっている気がする。参加者全員がシューズをはいているはずなのに………まぁ、何かあったときは中央管理室にいる皆が助けに来てくれるだろう。そこには師匠と美琴さんだっているはずだ。
「………ああ、そういえば今年は監視カメラの台数が足りないっていってて一番使われない保健室はないんだったっけ?………」
ひたひたひたひたひたひた………
音がだんだんとこちらに近づいてきている………俺は息を凝らしてつばも飲み込まなかった。
不意に背中を叩かれた。
「!」
俺は仰天して後ろのほうを徐々に振り返ると………
「輝、どうしたの?」
「真っ青っすよ?気分が悪いんすか?」
「あれ?加奈と南海?」
そこにいたのは参加者にまわっているはずの二人だった。しかも、浴衣を着ている。
「どうしてここに?まさか心配してきてくれたのか?」
「いや、美琴さんが輝にはこんにゃくしか渡してないからお化け要因として輝のところにいってくれっていったから来たのよ!べ、別にあんたが心配になってきたわけじゃないからね!」
「まぁまぁ、加奈さん………とりあえず、私たちは脅かす側の人たちになったということっす」
しかし、二人の手には何も握られてはいないし、二人とも浴衣姿だ。
「何かおどろかすもの、持ってないのか?」
「ええ、持ってないっす………加奈さんはナチュラルにその顔で驚かせると思うっすが………」
「え!な、何でよ!私のどこが怖いのよ!」
「………私は傍観者になってしまいそうっす」
南海に噛み付いている加奈だったのだが………なるほど、この顔ならいけそうだ……
「ま、とりあえずここでこんにゃく持っててもあまり意味ないと思うんだが………」
「そうですよね〜大抵の人が輝さんがいるこの保健室を無視して次のところにいってるようっすからね〜それほど去年輝さんがやりすぎたってことなんすよ〜」
そうなのだろうか?いかんせん、記憶がないので全然わからない。
「つまるところ、輝がこんな保健室にいても意味がないってことよ」
まぁ、加奈がいわなくてもわかっている。しかし………
「そういえばさぁ、お前たち二人がここにくるときなんだか変な音聞かなかったか?」
「さぁ?」
「知らないっすよ?」
二人して首をかしげているところを見るとそうなのだろう。実際、そうなのかもしれない………俺はこんにゃくを持って人が来るのを待った。まぁ、なんだかんだ言ってこの二人が一緒にいてくれるのだろう、これからもずっといてくれるかもしれない。
「アマヤドリ、僕が何故、お化けやくなんだろ?」
「いいだろう、人類の敵なのだからお化けだって似たようなもんだろ?」
「いや、それはちがうだろ?」
「とりあえず、お前しか適任がいなかった」
「別の世界からわざわざつれてきて………」
「いいだろ?」
「まぁ、いいといえばいいんだけど………」
「それより、この小説唐突に終わるの好きらしいな?」
「ああ、そうだよ?」
「まるで尻切れトンボだな」
「読者に妄想の翼を生やさせようとするからだよ………知ってた?」
「いや、想像の翼だろ?」
「こんな楽屋裏的な話、していいのかな?」
「いいんじゃね?」
「うわ、口調が物凄く投げやりになった」
「私はな、黙っていたが投げやりが得意中の得意なんだ。そりゃもう、ナウマン象とかいっぱつでしとめてたぐらいだからな〜」
「………そうなんだ」
「ま、世界は回るさ………いずれ、また会えると思う」
「そうだね、そうに決まってるよね………」
雨ノ月 〜アマヤドリ〜 完
「ああ、そういえば………輝たちのこの後、どうなるんだろ?」
「さぁな?いずれまたやるんじゃね?」
「だろうね、あまりにも中途半端だからね〜」




