【孤高の魔女】
はい、はい。今、行きますよ。
あら。どうしたの、迷子?
インタビューしたくて、この森を抜けて来た……って、すごいわね。そこまでヤワな結界じゃ——いえ、なんでもないわ。
疲れたでしょう、あがって。お茶と……料理は失敗したから、お菓子しかないの。ごめんなさいね。
ふふ、お口にあったようで、なによりだわ。
おいしそうに食べてくれると、私までうれしくなっちゃうわね。
それで、何を聞きにきたのかしら。
大陸に伝わる七不思議、ねぇ。
私が知ってるのは『生きた魔導書』と『呪われた教師』だけよ。
あら、もう知ってるのね。
それも、助言が必要ないくらい正確だわ。頑張って調べたのね。
『孤高の魔女』である私のことも調べた?
——馬鹿な子。言い出さなければ、お家に帰れたのに。
賢い子は好きよ。特に、厳重に施した結界魔法を破るような、危険な子はね。
無駄よ。身体がいうことをきかないでしょう。お茶とお菓子に、とっておきの薬を混ぜておいたもの。
そんなに怖がらなくても、殺したりしないわ。そんなことしてたら、誰も来なくなっちゃうでしょう?
食事も三食ちゃんと出すし、昼寝とおやつの時間もあるわよ。
結界の一番内側なら、自由に行動していいわ。場所は……ここに来る途中に、ときどき赤い杭があったでしょう。あこそが結界の内側よ。
病気の心配なら、しなくていいわ。これでも医師免許を持ってるの。
そうよ。訪れた人間は、誰もここから出られない。
寿命が尽きて、死ぬまで——。
私だって、好きでこんな所に住んでるわけじゃないのよ。
だから、せめて来訪者にお礼がしたいの。
それに……あなたは数百年ぶりの逸材よ。
小型ボイスレコーダーを忍ばせてるなんて、用心深いのね。
でも、視線をやりすぎよ。一目でわかったわ。
それこそ、あなたと会って、すぐにね。
このまま壊してもいいのだけれど、転移魔法でランダムに飛ばしてみましょうか。あなたが頑張った証くらい、後世に残してあげないとね。明日にでも、ルーレットで場所を決めましょう。
人目につくところだと、いいわねぇ。ふふ、そんなに情けない顔しないの。あなたって、見てて飽きないわ。これからは、楽しくなりそうね。
2015/11/18加筆修正