言葉のGo-Round 強くなれる気はしない
言葉のジェットコースターは止まらない。とりあえず乗組員の俺としては、不注意の行動は死に直結しそうでもあるのでおとなしく聞いてみようと思う。
「才能も金も力もコネもあるのに逃亡生活!に戦ったらいつもこちらが不利のシーソーゲームなんだろうね。もっと楽でもいいと思うんだよ! 大怪我しない。無敵! イカサマ! 最強! でもいいと思うんだよ」
基本的にあんまり褒められた台詞では断じてないが、言いたい事も分かる。
まぁ、今回の戦闘もそうだが確かに、圧勝と言うのも無かった気がする。毎回大怪我してるもんな。
お れ が
基本、敵は俺に襲い掛かってくるのと完全な前衛が俺しかいない為、どうしても盾になる羽目になる。
それをなんでこいつが、それを机に突っ伏してぶー垂れてるのか知らんがそれは普通に仕方ないと思う。それに、
「無茶いうなよ。才能も金も力もコネも確かに持ってるけど、相手の方が全部上なんだから勝ってたり、退けるだけでも御の字だろうが……」
今はこの世界在住者がいないから解らないが相手はこの世界で何年も生きてきた大英雄で、歴史の転換期を生きた化物。聞いた話じゃ万夫不当の英雄だ。
年季が違うというもので。どれほどの才を持とうとも、賭けてきた年季もまた嘘をつかない。相手がこちらよりも才能が有り、全力疾走している奴ならなおさら。
「勝ってる現在の方が可笑しいんだよ」
「そーだけどさー。そもそも、いくらどいつもこいつも足並みそろってないからって一人で来るよね魔人自体は」
まだ三回しか遭遇してないから具体的には分からないが大体そんな感じではある。何故だ。疑問は尽きない。他にも何かあるようで玖珂は言葉を継ぐ。
「それに、見た目と、相手側からの主観年齢ならあっちの大将の方が絶対的に年下なんだけどなー」
なのになんだあれ、勝てる可能性が見えないのだと玖珂は言う。俺もそれには同感な部分もある。今日の夜中の出来事だって幾つかハンデと運が良かったから勝てた様な物だしな。だが、
「それでも、この世界で生き抜いてきた主観年齢はあっちの方が上だよ」
確か六歳くらいの状態でさえ半月以上は戦場で暴れまわっていると聞く。一応、俺達も半月行くか行かないか位はこの世界に居るがそれだけでも届かないと思う。
そう応えるとふてくされて玖珂は何言か吐き捨てる。
「クソナナセBメッ」
「いつも思ってたけど他人の親に記号付けるの止めれ」
目の前の奴の口から流れる様に不平不満が右から左へ溢れ出る。俺はせっかくの休日なのになんでこうも他人の不平不満に付き合っているのだろう?
机の奥の窓を見上げ、空に思いを馳せる。
早めに起きてあっちに付き合った方がマシだったかもなぁ……
思っても何ともならないのだがそう思わずにはいられない。
いやーホント、外は澄み渡る青空だなぁ、俺の心と違って雲一つないや……
「どんなにお外を眺めても、現実は変わらないよ?」
「悩みの種はお前なんだがな」
俺はかけられた言葉に、ため息をついて返す。しかし、どこ吹く風とお茶をすすり、備え付けの茶菓子である。煎餅をバリぼり貪っていた。
自由だな、コイツ…… いつも思うが他人等を本当に気にしない。一応、死の危険とかでは気にするし空気を読むことは分かっているのだが、どうしてこうも協調性がないのか。
いや、一応理由に対しては昨日の朝言ってたか。
相手に対して遠慮をし過ぎた。かつては他人の評価に添うように動きすぎたが故の反動という事らしいが、ふむ。
じーっと、煎餅を食べ続ける玖珂を見ていると、一つだけ、重要な疑問を思い出す。
そう言えばこいつなんで俺達と一緒に旅してるんだ?
当初は、あの忍者の脅威から対抗する必要があったからだろう。もしかしたら、今も巻き込まれた父さんの手下達に対抗する為と言うのもあるのかもしれない。
だが、話を聞く限り、こいつには、
「帰る気がないのにどうして、帰還を目指す俺達について来るのだろう」
「、それが天眼の使い方か?」
「そうだよ。完全な、うんうん究極的な未来視『も』可能とする力」
煌々と輝く瞳は全てを見透かされそうになる。まるで空から見下ろされているように感じるそれは逃げ場などない絶対的なもの。
「この眼になる前から私は他人を見透かすのが得意でね? 唐突だけどそれが君と一緒に居る最大の理由ー」
先ほどの急に変わった緊張感もなんのその、途端に気の抜けた。そして、別の意味で緊張感が詰まった空気に変わる。軽いような、軽く見せたいようなその様な玖珂の気持ちが伝わる。
「あ、どういう意味だ?」
何となく分かるが、何となくでしか分からない。自分で正解を求められるが、それはとてもめんどくさそうなので直接聞いた方が良さそうだ。
それに、対して目を奇妙に輝かせる。そして三日月に口を歪ませ、言葉を継ぐ。
「眼は、全てを教えてくれる。使いこなせればだけど」
今はまだ、使いこなすには至らない。確かに昨日ではなく夜中の世界で父にそう言われてたな。
特に気にした風でもなく、淡々と口にする。外を見ながら、珍しく落ち着いて語っているので、見た目通りなんというか窓風から吹く初冬の風もあり、美麗である。
これは、風呂に入ってきた後という事もあるだろう。時間が経過している事もあり、流石にそこまで風呂上がりの色気と言うモノを感じはしないが、ここの備え付けの入浴セットは結構いいという事もあり、全体的落ち着いたハーブのいい匂いがする。
と、普通ならここでドキッとすべきなのだろうが、
喋り終わったと思ったらお茶に手が行きずずーっと飲み、バリバリムシャムシャと窓見ながら煎餅貪っていたらそうは思えないんだよな。
さっきまでの真面目モードはどうも長く続かないらしい。ただ、どうもこいつのこの行動は何か違和感感じる。説明できない何かがありそうな気もするが、まぁ言いたくなったら聞けばいいかめんどくさいし。
とりあえず落ち着いて次の話が来るのを待つのが先決か?
「まー今は、ランダムに必ず起こる事だけだけどね」
そうか、、そう言った玖珂は、口に煎餅を含む作業を再開していた。それ以降、ある程度時間が経過しても続きを口にする事が無く時間が経過する。
んー、あれ? もう話終わり?
仕方ないので話を促そう。
「だから?」
そう言うと、何か待ってましたと言わんがばかりに眼が光り輝く。わざと、言葉をゆっくりとぼかす。面白がっている。楽しんでいる?
今までとは別の意味でめんどくさい。
それは冷静に駆け引きを楽しんでいるような感覚さえ起こる。天眼は絶対未来視ではないのか?
「君は解っているだろうに、この眼が君と一緒にいる方が良いと言っているからだよ。今言える事はねー」
確かに何となくは分かるが、どうしても納得がいかない。だから俺は
「なら、俺に関わらず、元の世界とこの世界どっちが好きだ?」
俺の関わらない質問をしてみた。これなら、こいつの事もある程度知れるのかもしれない。父さんにも言われたことだが、それに俺も流石に知りたいのだろう。
みんなの事を、背を押された今がまさにその時、これを逃せば、きっともう聞く事が出来なくなってしまうだろう。ただでさえどいつもこいつも心に一物抱えてるしな。
ただ、目の前の人間を知りたい。珍しく他人に対しての執着を感じる。というか
「純粋にレイ君に今まで友達が少なかったんだろうね」
「うっさいよ。心読むなよ」
自己申告通りの人を見透かすその様に、色々考えさせられるものがある。話がそらされるのは答えたくないからだろうか?
そうだとしても、勇気を出して聞いてみるかせっかく二人きりだし
後で振り返れば、この時に聞いておかなかったらどうなっていただろうか? 父さんと出会ってすぐ後にこいつとあった亀裂が広がり、きっと俺達はこの後にある物に立ち向かえなかった。そう思う日も来るだろう。
「まぁ、だからこそ聞いておきたいんだよ。俺は別に、お前と違って心も過去も読めないんだからさ」
そんな俺の言葉に、煎餅を貪るのも止めて右斜め中空を見ながら、考え事に入る。




