暴走する力 序
本当にどうしようか。なんかもうどうにもならんし、なるようになるしかないな! なんて言ってる場合でもないか。 生来の開き直りと無気力さで、とりあえずの正気は取り戻す。だが、結果としてこの他に燃え移ってないだけのバチバチいってる緑光の雷ッぽいのは収まる気配がない。本当にどーしよう。
「ヌグッと、ちょっと失礼!」
悩んでいると、急にすぽんと中布団から上半身を湧き出した玖珂が、俺の方にニョッキっと這いより手を握ってくる。
「おい、アブな」
「んー『見た目』よりか痛い」
何やらのんびりと、意味深な言葉を口にしながら俺の手を継続して握り続ける。口調こそ穏やかだが、顔は苦悶の表情を浮かべていた。俺が顔をじーっと見てた事に気づいたのかすかさず目線を斜め左に向けて口走る。
「言葉隠して顔隠さず!」
「自分で言うのかよ」
手の焦げる臭いと、脂汗の流れる顔に、いくら玖珂とはいえ申し訳なさが心より溢れてくる。俺は敵が居ない所でさえ、人に……
そんな事を考えていると、頭に強い衝撃が来る。
「頭突き!!」
ヌがわ!
「まぁまぁ、難しい事考えずにさ。落ち着いて身を委ねて欲しい!」
玖珂はそう言うと、手を胸元まで寄せてくる。ここまで来ると自棄である。言ってもいつも通り聞かなそうだし、信じてみるのもいいかもしれない。
そう思い、心を委ねてみる。信じているぞ、玖珂。
「まぁそうしてくれないといい加減、私の手もきついしね」
自分で空気を壊していくストロングスタイルは止めて頂きたい。
「あつ」
心が乱れ、溢れ出る緑光。まぁ多分、木気の雷光が攻撃の指向性を帯びる。その為一時的に、玖珂の手を焼いてしまう結果になる。
いかん、やばい。普段なら自業自得でも言うべきだろうが今回は流石にヤバい。
流石にあかん。
何時もであれば別に気にせんが、今回は別だ。色々とこいつにも落ち度はあるが、それ以上に俺が悪い。力を暴走させている状態を治してもらっているというのに。
「すまん」
「大丈夫、大丈夫」
へらへらと言う感じで口に出される棒臭い言葉。相変わらずの口調口調だが脂汗と焦げ臭い手のひらに申し訳なさを感じる。
「気にする必要なんてないのに」
いつも迷惑をかけているのはこちらの方なんだし、そうとても優しい顔で言ってくる。流れる黒髪と、慈しみの感情を称えた表情。こいつもこんな表情が出来るのか。
「今回くらいは貸し借りを帳消しにさせて恩を売りたい等と後半更に余分な事、供述し始めたのですまないと思う心も消え始めた。もう半分は余り思い出したくない。俺の記憶からは消した。
「まぁ、そんな訳でレイ君、そろそろ落ち着いt」
どういう理屈か、玖珂の手から俺の手へ何か暖かいモノが伝わってきて暴走が収まってきたのだが、どうもこいつは時間、時間に茶化した言葉を多く飛ばしてくる。
口を開けば余分な事をこぼす玖珂、そう言えばこんな人物だったと余計な事を考えていた自分に涙があふれてくる。
「うん、目も落ち着いてきましたね? 何の感情の起伏も無さそう……」
君のおかげでね
まぁ実際、力の暴走もこいつのおかげで落ち着いてきた所だし、本当に助かったというべきか。
「ここでテレザかエニグマが蒲団を捲ってエロスと勘違いするまでがテンプレなはず!」
「お前のおかげで、もう雷光の制御はできている。腹部にお礼をくれてやれるぞ?」
先ほどまで制御を手伝ってもらってたので申し訳なくも思うが、流石に余裕も無いのできつくいっとく。
ごめんなさいと頭を下げているのは、着物がはだけてボンキュボーンの魅惑のプロポーションを満天下に晒している阿呆。どうにかならんかね?
「ちなみに私のバスト力はFいじょ、あれーレイさん。拳がバチバチいって、笑みがとても怖いですねー」
こんな性格でもなければ見ているだけで赤くなるようなシチュエーションだって言うのに、どうしてもその気になれない。
ぶっちゃけ、ああ、タオル中に入れてボディラインを着物に合わせてたんだ。って感想の方が強くすらある。
いそいそと着物を直している玖珂をつい、男の本能で覗き見てしまう。うん、ポーズとるな? すぐに何かくだらない気にさせてくれるのは護身完成しているというべきか。
まぁ、エロスよりもなんというか親しさを感じるのは良い事なのではないだろうか?
「もう着替えは終わったか?」
「うん、所でラッキースケベは堪能した?」
はっはっはこやつめー
拳は空を裂き、天に雷光は舞う。俺は無言で彼奴の腹部に拳を近づける。
「うるばぁ」
そんな俺の行動に、まるで拳があったかのように後方に吹き飛ぶ玖珂。寸止め所か大分距離放してただろうが。
「もういいや、さっきからテンプレとかラッキースケベとかなんだよ?」
「ぐっは! うん? アレ、ネットとかで見たことない?」
主語抜くなよ? ここで言ってもしゃーないので知らないと答える。
「いや、異世界に行く小説とかネットで流行ってたじゃん? そろそろ真似したくなってきてつい」
きちんと着こんで俺と玖珂の二人っきりとなった部屋で、茶と置かれた朝ゴハンを食べながら何故こんな事になっているのか話し合っていた。
テレザとエニグマに関しては、何やら物見遊山の続きを行っているらしい。俺も連れて行く予定だったが起きなかったので既にいなくなっていた玖珂も残してどっか行ったようである。
ついでに玖珂がいなかった理由は早朝の湯浴みが理由ですれ違ったとの事。
テレザとエニグマが居なくなった為、つい、面白くなって潜り込んできたわけですか?
話の内容も頭痛の種なら、ここまでの過程もなっつーことだの一言で、もう素敵な事になっている。
まぁいいや、今は目の前の話に集中しよう。
「ネット小説ねェ・・・」
基本的に読んだことない。どちらかと言うとパソコンは学習や就職支援サイト使用するとき以外、ネット対戦の格ゲーしてたなぁ…… 主人公の対空技、何の為に存在してたんだろう? 俺使ってたのスーツの科学者だけど とか無意味な事を考えてたら
「なんと、話が合わない!」
なんか白熱してる。バタバタしながら煩わしいな
こいつ、そいや良いとこのお嬢様で漫画やゲームを買う事が出来なかったんだっけ?
だから娯楽と言えば、パソコンを何とか学んで学習の合間に動画サイトでアニメを見たり、ネット小説を読んだり、ネットの連載漫画読んだりすることの方が多かったらしい。
玖珂の話を聞いていると箱入りという古風な育て方をされたというのになんで、現代風の気質を持ったへんてこな子に出来上がったんだろうと稀に思っていたが……
周囲の人間だけでなく、モノも人の性格に影響与えるんだなぁと今は理解できる。パソコンの影響力ってすさまじい。まぁ、顔が見えないだけで、多くの人と繋がれるんだから当然か。
「まぁいいや、異世界系が流行ってたんだよネット小説では!」
少し考え事していると、玖珂の発言がヒートアップしていた。珍しくテンションが上がっている。こいつに煩わしいものを感じるが、先ほど助けてもらったのだから大人しく聞いておくのがベストだろう。
「ネット小説では異世界に行ったら、素敵な力に目覚めてこうずばばーんと敵を倒す訳ですよ」
「目覚めてはいるなーお前は眼で俺は血に、か?」
そして一応倒してはいる。四人で一人を囲んでようやく何とかと言う戦闘が多いが
身振り手振りで愉快に説明してくれる。畳すり減るからやめろと言いたくなる機敏な動きで架空の敵と剣での接近戦を演じている。オゥ、その動き実際の戦場でもしろよ。
「ですよねー」
「なのに、現実は上手くいかないんだろうね?」
バンバン
机に突っ伏し両手でサイドの四角机を叩く、食事が終わり、茶と茶うけを味わっていたというのにおかれてる机を叩くものだからこぼれるし、埃も舞う。
とりあえずは、自分の分を避難させるが、野郎……
絶妙に、自分の分がこぼれない様に叩かれている机に、本当に何とも言えぬ感情が湧きおこる。称えればいいのか、怒ればいいのか?
「まるで神を称えるかのような目で私を見ないで、照れる」
よし、切れる一択だな。斬ろう!
純粋に顔を赤らめる玖珂はファンタステイックだな。
私的には異世界系といえば六四とプレステ無印の某ゲームです
例えワゴンの常連だろうとも打ち切りだろうともドリキャスの某ゲームもです




