身体が熱い
日光が横くらいから顔にというか目蓋に突き刺さる。ふかふかのお布団の中に入り、日差しから逃げる様に俺は包まろうとするが、どうも蒲団が動かない。
眩しい、
間取り、気にしていなかったのだがどうやら東側だったのか……何故この様な位置を取っているのだろうか?
光が当たるという事は、長い、長い夜が明けたという事だ。夢の中の事もあり、寝た気にはとてもなれなかったのだが頭及び、身体に何の不自由も疲労もない。
とはいえ一昨日、じゃなくて、昨日聞いた話では、父さんは今日は多分攻め込んで来ないとエニグマから聞いた気がする。俺自身、そう思ってるし予定も特になかったはずー? だったと思うから久しぶりに二度寝したい。
目蓋が下がる……下がっていいよな。日光に背を向けて暖かい蒲団の中に潜る。ふふははは、温い、温い。先ほどまで寒かったが日光と俺自身の体温などできっと暖かくなったのだろう。妙に膨らんでいる気もするが気にすまい。
目も冴えているが起きたくないのだ。
めんどいし
あったかいなー、最近布団で寝てなかったしなー。
ここ最近、ベッドで寝る事はあっても布団で眠れなかったし、いい物だ。薄い中布団を丸め、抱き枕代わりにする。皆に言えない事だがこうするとよく眠れるのだ。
何かさわさわ、ふにふにした抱き枕代わりの蒲団の肌触り。まぁいいや、怖い父さんもいない――-訳でもないけどここにはいないし、うっとおしい弟も、見てたら自分の未来が怖くなる姉もいない。ああ、異世界っていいなぁ……就職の悩みも忘れられるよぉー
若干肌寒い初冬の如き地での早朝。しかしそれも、暖かくなった蒲団の中では関係などない。
本当に親戚のお家とかでもない普通の宿だし雑音も無い。本当に初めて安心して二度寝ができる環境に自身は置かれているんだと現状況から確信できる。
今までは、追ってや格式ばった場所にタイムスケジュールもあって落ち着いて考える事も出来なかった。ようやく来た落ち着ける場所という事で元の世界での事も、夢見心地ながら思い出す。
いや、チキュウでの事を思い出すきっかけは他にもあったような?
薄らぼんやりとある思い出を、サルベージしようと思ったがやめよう。今はただ、ゆっくりと二度寝をするんだ。今は本当に、就職をミスって初めて訪れた何も気にしなくてもいい世界で時間なのだから。
「温い、温い」
命の危険と逃亡ばかりの異世界生活で、初めてこの時、この世界に来て良かったと俺は考える。こんな細やかな幸せさえ、あの世界では味わえなかった。自業自得だけど、今はただ、微睡みに溶けてゆきたい。
「あああ、なんか初めて異世界に来てよかったと感じてるー」
「わかるわー、超わかるわー」
………………
俺の幸せは、ほんの数分で脆くも崩れ去ってしまったようだ。
丸まった中布団から声が聞こえる。思えば、シーツの様な薄い布団なのだから、どう頑張っても成人男性が抱き枕に出来るほどの厚みなんぞ普通に出来んわ。
自分にツッコミを入れようと、過去は戻らないし、失態で失ったものは取り戻せない。
「ほほーしかし、抱き枕派ですかー、レイ君いい趣味してるー」
あーこれは眉間に皺がよる。家族にも内緒にしてきた事なんだがな。
手が段々震えて来たよ!
消してー、修正してー! どうしようもなくコイツをこの世から消滅させてー!!
感情が高ぶり利き手に力が満ちる。震える手に溢れだすのは果して怒りか、熱い何かを感じている。
やたらでかい掛布団やらはどうやら二つを重ねた結果みたいで、三人くらいが入れそうな暗い空間で、中布団に繭の如く包まっている玖珂に俺はどう拳を振り降ろそうか考えてしまう。
熱くなった右手を思いっきり腹部に当てようとしたが、当てる寸前で思い止まる。
衝動的にそう思っても実際には行動に移さない。流石にこの程度の怒りで殴っては、いや、本当に心の奥底から思っていたのならばもしかして……
「ぅへ、なにか熱くなってきた!」
当ててないのに、オーバーなリアクションすんな
次の行動について思案していると玖珂が何か驚いている。中布団に包まった顔はまさにノーフェイス。
だが、明らかに声と仰け反った首から驚いている事と視線が右手に集中していることが分かる。
うーん、右手が仄かに熱い。焼けると言うほどでもないが熱いし、緑光を発している。多分、これを相手にぶつけたら雷光で焼けると思う。
起きた途端、とても素敵な状況に巻き込まれる。感情ひとつでこのザマだ。いったい何が原因なのだろう?
なんて言うまでもないか。
十中八九、夜の出来事が原因だ。心より更に奥の方がチリチリと熱い。まるで炉の中身が昨日とはそっくり入れ替わっている為、耐えられないかのようだ。暴発こそしていないものの急激に力が溢れだし、制御がし辛くなっている。
「あーやっぱり。心配して見に来たかいがあったよ」
おい、ミイラ首を横に振ってやれやれってやってるんだろうけど解り辛いわ!
そこそこしか広くない空間で、ブンブンと身体を振りやがる蛹女に埃臭くなるからやめろと突っ込みた、
「あちぃ」
「ふーん」
怒りで、いや、精神の起伏で魔力は上がり、制御も困難になるようだ。右手がやけに熱い。今は内側からの自焼であり、耐熱属性がある為、痛みも熱々の味噌汁に指を突っ込んだ程度の痛みで済んでいるが、時間の経過ではヤバそうだな。
態度の軽い目の前の全身パックを気にしない様に、冷静に、落ち着いて魔力の制御に努める。
「もう十分、焦げ臭いけ、うーん」
何か、茶化そうとしていきなり下を俯きながら考え始める玖珂、ああどうせバチバチいってるよ、明るいよ、良くチリチリ焦げ臭いだけで済んでるよ!! 中布団が!!
うん、俺の中布団は玖珂が包まっている。無意識に制御できていなかった為、拳を当てようとして近くにあったから、ストーブにずーっと当てていた布製品状態で、火こそ何とかついていないが段々と、ね。
正直、弁償させられそうなのが怖いけど変に動くと間違いなく他に飛び火、文字通りの意味でしそうなので動くに動き辛い。
本当にどうしようか。いい加減、何か知ってそうで知らないコイツに殴打の一つでもくれてやろうかとも、久しぶりにパニくっている。
ああ、めんどくさい




