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それぞれの課題と

  「『見鬼』いや、もう『天眼』か、それも大分上級ってのが笑えるけど『目』が優れているようだね」


  『見鬼』これは父さん曰く、答えが薄ぼんやりと見える『目』の事らしい。どんなものでも何となく、どうすればいいのか分かる才である。


 この目の凄さは、例えば混沌のように見えて理路整然とされた物、特に推理小説だとかは本の内容を数ページ読んだだけで犯人や方法が分かったりするらしい。用は決められた道をすぐに見つけられる予測の目である。


  「天眼って、神の……ああ、チキュウから来た方だから?」


 テレザも反応したが、『天眼』は、それの完全上位互換とはいかないが、あらゆる場所、あらゆる時間軸、物事の本質を覗ける瞳。


 全知全能の神が、基本的に待つが故に天の眼と呼ばれている。使うのに修練こそ必要だが、常時自分にまつわる物事の本質を覗いてしまうらしい。用は高みからあらゆるものを見る目である。



  「……隠してたみたいだったけど予想通り、千里眼以上だったか」


 改めて凄い眼してたんだな。エニグマが父が天眼と言った時、面白い形相で玖珂を見てたのも分かる。しかも、父さんが言うにはそれは神族と比較してさえ上を探すのは面倒になるレベルらしい。


  「やっぱり分かります?」


 頬を掻きながら目を反らす。ばらされたくなかったのか、面倒くさいなぁーとでも言うような目で父さんを見る玖珂。

 そんな玖珂を何処か仕方ない、何処か羨ましいという様な目で見る父は、何か不思議な空気を纏っていた。


  「上位神族と比較してさえ、上を探すのが難しいモノを隠しもせずに使ってれば普通に分かるよ」


  「そんなに凄いのか?」


 流石に直接聞いてみたくなったので腰を折、問いただす。


  「ああ、だからこれからの戦いはその力を使いこなし、かつ頼りすぎない様に戦うと良い。玖珂さん、君の目は私以上なのだから」


 それは地味に難しいぞ。皆もそう思っていたのか目つきが段々と胡乱げになって行った。


  「使いこなす方法は?」


  「時間制限のある中で分かってる事を聞くのは感心しない」


  当然の質問であるはずなのに、そんなこと聞くなよ。そんな空気が二人の中で共有されている。どういう事なんだろうか? ただそんな疑問も、時間制限その言葉に押し流されて誰しもが口を挟めなくなっているのだが。


  「君にはこれかな」


 手のひらを前に突き出して、光が集う。まるで小さな星の輝きが手に収まるかのような光景は美しいと感じるのと同時に、目の前の男の力について膨大である事を教えてくれる。一瞬の中でその光が形ととなって一つの物質を形成されていた。


 蒼銀に輝くDEっだけか、そんな形に近い銃が渡される。そんな事はどうでも良い。気になるのはその銃を渡された時、玖珂の目が若干、黄色に輝いた事だ。


  「これは……」


 銃を見た後、父を睨みつける。というより、何か言い辛そうに銃と父さんを目が二度往復している。何かぼそりと言ってたが、父さんはカブリを振って押しつけていた。唯一聞こえたフレーズは、


  「私にはもう銃もってますし……」


  「いずれ……必……なる。わ……て  ん……う  その ……は か……って」


 そう言うフレーズのみ聞こえた。その後、玖珂は目がつり上がり、それでも下を向き、口がWの文字を書き、斜めに顔を向ける。何か言い得もしない顔で仕方なしと銃をホルスターにしまっていた。今思ったら、右に三、左に三っつ銃を入れる場所があるんだね。そのホルスター。


  「それでも役に立つ物だ。君たちに一つずつプレゼントだよ」


 頭を少し前に傾けて、こちらに戻ってくる。



  「今はただ、抱きしめて!!」


 その言葉と共に、何かが迫ってくる足音が聞こえる。


  「あ、!」

  「へー」


 他の人も反応していたわけだが、そもそも体が動かない。


  「プレスッ!」



 何故か、寝込んでいる状態の俺にのしかかるように抱き着いてきた。いつもなら、避けるか払うかするその行動。動けなかった事もあるが、動けたとしてもただ、彼女の発する奇妙な空気に、どうも放す気には今回はなれなかっただろう。ホンの数秒までは


 くんくん


  「オラァアア!!」


 ……身体よ、今だけは動いてくれ


  「ズバシ!!」


 なんか胸で匂いを嗅いできやがったので、体に残った渾身の力でチョップをくれてやった。


  「いてて、まー、努力してみます」


 俺に叩かれた額を押え、父さんに応える。何か含むものもありそうだったが返答していた。それに対して父さんは、利き手を口元に近づき親指と人差し指で顎を押えながら微笑んでいた。


  「さくっと次、テレザちゃん」


 時間がたったのか、手を叩き次の人間を呼ぶ。


  「はっはい!!」


 呼ばれると思っていなかったのか、びくっと縦に伸び、がくがくと震えだす。先ほどまであった睨んだ様子の敵意も消え去り、どうも緊張しているようだ。右足と右手が明らかに意図せずに同時に出ている。


  「上見て呼吸してー、脱力してーリラックス。まぁオーソドックスに纏まって欠点は無いけど、逆に言えば長所も無い」


 落ち着いた身振り手振りで、ぶるぶると振動パックしていたテレザを父は落ち着かせていた。天を仰ぎ、脱力するテレザ。


 なんというか風船みたいな感じだなー


 俺はというと、途端に視点が上がってる事に気づかずにスライムになっているテレザを見守っていた。


 ここで巨乳だったら胸とか揺れてるよねー。とか、隣というか下のあほうが耳打ちしてくる。ので、とっとと体が動けるようになりたい。まぁ、膝枕で見やすくしてくれてるのは助かるが。


  「うう、気にしています」


 確かに、テレザは良く後方にいて余り戦闘に参加していないように見える事が多い。それは魔術主体の戦闘スタイルだから当然だと思うが? ただ当人と父さんにとっては違うらしい。


 顔をうつむかせ、その言葉を重く受け止めていた。


  「まぁ、悪いことでも無いさ。ただ、前に出る勇気と前に出ない慎重さ、その両方を持つと見違えると思うよ。君にはこれかな」


 そう、戦闘スタイルを考えれば当然の事、だけれどもそれが一番分かりやすく強くなる方法らしい。確かに、俺達にはあまり時間が残されてはいない。それならば正攻法ではなくても手っ取り早く強くなる事も必要なのかもしれない。


 父さんの言葉に少しだけ考えさせられるものを感じた。


 そんな父さんがテレザの事を何か思う事があったのか注視し、空中に手をかざし何かを取り出した。あれは銀の?


  「銀の腕輪?」


 それは赤い月が沈み、蒼い月が昇る意匠が一番印象に残る銀の腕輪。それを丁寧にテレザの手に落とした。渡されると思っていたのに落とされたそれに、わたわたと慌てふためきキャッチする。その慌てふためき加減に、


  「流石にそこは違うか」


  「こ 師  の た とあ ……」


 何かぼそりと呟いていた。テレザもテレザで渡された銀の腕輪を眺めて何かつぶやいている。元々か細い声だったが彼女自身の自信の無さゆえか、その声も小さい。ただ、聞き取れた単語から推測するに見た事があるらしい。


  「昔、片付けのできないのんべぇにやった奴の改良品。効果はエニグマが知ってる」


 か細い声に応える様に、もしくは懐かしき蔭に思いを馳せる様に、ポツリポツリと言葉を漏らす。何処かそれは、一部の人以外、触れてはいけないような気がする行動だった。


  「アレか、確かにテレザには良いモノだね」


 その雰囲気を唯一切り裂けるであろう者の言葉が、口を挟む。今の俺には良くは分からないが、とてつもない魔力が込められて者らしい。


 エニグマもテレザも玖珂も少々驚きながら腕輪を見ていた。後、余談だが、玖珂が一瞬ピクリと動いたため首の位置が若干ずれたのを直すのに手間がかかった。


 どうやら、テレザ自体は他に何か腕輪に思う所があるのか大事そうに嵌めていたのだが。


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