ダブルライナー
「これで一気に消し飛ばす!!」
それは長大な刀剣を形成する。長さは10メートル優に超える大刀、触れれば消し去る必滅の神剣。どれほど腕が大きかろうと肉体は普通のはず、これほどの大きさならば届く!!
「いいな。こういうの! 決闘みたいだ!!」
いらんというのに歓喜の声をあげて魔力がまた膨れ上がる敵。
その魔力が全て注ぎ込まれ、更なる進化が起こっているバルバロス。俺の攻撃準備に呼応し、膨れ上がる魔力を持った一人のバルバロスを中心に、磁石に集まる砂鉄みたいに集合し、新たな姿を形成する。龍の顔と狼の足、虫の目が人の体型で構成し直されていく。なんだろうアレ、L〇Xとかメダルで動くロボットか何かか?
「フムこんな所か。さぁ、最後の戦いといこう!!」
「では行け! 神人類バルバロスC3よ!」
それは、あらゆる生物の特徴を人間をベースに構成され直した異形の巨人。人間以上の体躯を誇り、その身体能力もまた、既存生物全てを超えるだろう事が想像できる。視力は蜻蛉や鳥の混ぜ合わせ、狼の足や龍と甲虫を混ぜ合わせた翼は、屋内よりも屋外でフルスペックで活動できる容姿で、本当に屋外で戦わなくてよかったと心から思える。
「るぁああああ!!」
いや、何より幸運なのは
「いっけぇええええ!!」
この剣が無事完成した時に、相対できた事!!
まともに戦えば勝者は間違いなく敵の方だ。その能力は多分だが、魔力を除けば全てにおいて相対してきた全ての敵を超越する。そう最後の切り札に相応しい神人類。亜神族と言った所か。
それでも、この剣は全てを滅消させる破壊の新物質。触れれば終わりの滅光の剣。光より逃れるすべはなく、太陽の中心に落ちて生きられる者は存在しない。疑似的な太陽そのものとなった剣と俺の前に敵は無い。
正眼に構え直した状態で振りかぶる。
その過程で重力のかかり具合から多分、腕の上部であろう部分を切り開き、光が差し込む。だが、同時にあいた隙間を使い最速最大の威力を持ってこちらを叩き潰そうとする巨椀が光の出入り口の一部を塞ぎこちらに降り注ぐ。
こちらも結果としてそれに対抗するように剣を振り降ろす。
剣と拳が交差する。その攻撃速度は、絶対的に俺の方が早い。剣と拳が交差した瞬間、拳が俺に当たるかどうかの瀬戸際で、解けて消えて行く。
今までを遥かに超えるスピードと触れれば消える剣を前に容易く、兄弟ともいうべき生物は熱したナイフで裂かれるバターか何かにでもなったが如く消え去った。
綺麗な斬れ跡から、滅光がじわじわと広がって行きまるで元々幻であったかのように淡く消えてゆく。
それでも産まれたばかりで有るとはいえ、その執念は賞賛に値するものであったらしい。
「かすっただけで、……持っていかれるとはな、まぁそれでも」
結果だけ見れば圧勝。されど、高い代償をを払う事となった。
拳が消えてゆく過程で交差した利き腕に拳の衝撃波が襲う。プラズマフォトンに変換された身体でさえまるで子供と大人で喧嘩したかのように腕が軋む程度の怪我が生じる。
けれども紅く、燈に輝く刃が赤い身体を引き裂いて、蒼のローブを引き裂いて未来を掴もうと直進する。
ぐんぐんと伸び、まだ人の形をそして大きさを留めている身体に刃は届く。身体は、ローブ自体の何らかの性能もあって切り裂くのに時間が若干かかった。
それでも、厚紙を破る程度の誤差で心臓まで届く。右腕を怪我しようとも、剣は触れれば必滅どの様な守りでも完全には防げない。速度は十分乗っているのでこのままいけばそのまま勝利だ。それが楽観的な考えだとはわかっていても
「それはどうかな?」
心臓斬り飛ばされても何故か平然としている父の言葉を聞くまでは、そう信じていたんだ
その言葉の途端に、心臓の位置が変わったのならば、まだ対応のしようがあったから
「二重世界線!」
だが、別の場所にもう一つが出現するというのは聞いていない。
「こういうのはどうかな?」
クソが、かなり離れた位置に心臓が生まれている。急に生まれた為、場所自体はすぐに分かった。腰の位置、ケサギリならば十分届く位置だ。右腕さえ無事ならば。
正眼による縦斬。渾身の力による最速の攻撃を考え、行った事である。しかし、それが裏目に出た。このままでは終わる。
「シンプルだが良い手であろう?」
こちらの手を試すようにそう言い放つ。そうだ。確かに、このままでは打つ手なし、しかもただのバルバロス自体は未だ増え続けている。まるで血の泡の如くそこかしこから赤く朱くわき立っている。しかも多分、今も身体は空の上、なんとか勝てたにしても脱出する方法は皆無。
「ああ、一対一ならここで終了だろうよ。父さん」
「ふむ?」
「単純な話し、この力を制御する際に力の余波でここまでの空間が出来た」
俺は改めて今、自身が生存する縦五、横五メートルの空間。制御の余波でここまでなら
「もし、制御せずに暴発させたらどうなるのだろうな?」
「なに!?」
剣の力を加速させ、拡散させる。ただそれだけで、世界は光と共に対消滅するだろう。実際、既に本来の心臓までは届き、腰の位置まで剣は斬り込んでいる。
「何を馬鹿な事を! 死にたいのか!!」
「何となく、死なない気がするんで大丈夫だよ」
理屈としては、自分もまたプラズマフォトンに置き換えているので、多少耐性を持っている。
その為、このまま暴走させても大怪我程度で済むと予想できている。
「心中にはならないさ!」
加わり、重なり、広がり、散らばれ!
魔力を、新たなる力に変換し暴発させる。ただ、勝利を掴むために
長大な剣を媒体にしていた光が、煌々と膨れ上がり、全てを飲み干すように光が散らばり始める。それは徐々に自分の身体にも届き始める。光の一部がまるで熱したフライパンに水を混ぜた時のはねた油の滴のように俺の身体も焼き消しはじめる。
「っぐ、痛みは無くとも、内側から消される感覚は具合が悪い!!」
さしもの父さんも具合がよろしくないのか、苛立たしく口調を崩して、身体ぶれさせた。だが、どんなに動こうとも内側にいる俺には流石に間に合わない。バルバロスも普通の奴らはそこまで早くも無いので安全とは言わないまでも余裕はある。
ハズだったのだが……
「残念ながら、左腕はまだ残っているぞ」
右腕をボロボロにした際、結果的に左腕による攻防も中途半端に終わっていた様で、それはつまり左腕は無事に残っている事を示している。
これはまずい、非常にまずい
いくら暴発と言っても実際にはこちらの安全マージンと威力を考慮した計画的なものを現在行っている。つまりは結構集中力を要す行いであり、そうでなくても、右腕もバルバロスやプラズマフォトンの残光のせいでボロボロ、そのせいか急に剣の向きを変えることはできない。
まぁ単純に言うと動けないし、対応も出来ない。
「やばいなー」
左腕が先ほど開けた右上腕部の穴から俺目掛けて降り注ぐ、身体は右肩から心臓を抜けて、腰まで切り裂かれている筈なのにその行動は一切ブレない。
この位置から見える景色では多分、俺が空けた穴があき、下半身と上半身は繋がっておらずパーフェクトな状態とは言い難い状態になっている。いくら空が飛べるとはいえ、足などアクセとでもいう様に活動している現在には、とても笑えない。
さっきからずっとそうだ。追い詰めている筈なのに
「残念ながらこれにて仕舞だ」
どんなに強くなっても、追い越される
個人の相対では
「色々とイカサマを使っても追いつけないってか……」
心が鉛のように重くなる。どうしても戦う力が湧いてこない。それでも、義務感で使命で、今まで無にしたくなんてなくて、剣だけは持ち続ける。それでも
最早、諦めるしかないのかもしれない。剣に縋って、湧き上がる力に頼って、訳分からない存在に頭下げて、それでさえ絶望的に届かない。
「……詰まらん幕切れだ、しかし、これも運命か」
こちらの様子を察したのか、どこか悲しげに左腕が迫る。心に影が差すように白が黒く塗りつぶされる。命を守る行動をすれば、結果的にこちらの敗北は決まってしまう。
それ程の力は残されていない。




