新類バルバロス
「まぁこれが『見た感じ』ラストステージって所?」
「勝率は?」
風に乗ったのか、それともメンツからいって、別の要因か、外の声がある程度届く。内容的に多分、玖珂とエニグマだろう
「それは聞かない方がいい。でも、未来を切り開くって言い言葉だと思う」
「ええ、そうですねユミさん。惜しむらくは、切り開ける武器を持っているのが敵の肉体の内容物になっているレイさんのみ。というのが残念ですが」
勝率をぼかしただ未来を信じると口にした、その言葉に乗っかるテレザ。三人とも決して目の前の神話の再現ともいえる存在を前に、臆して等はいないようだ。言葉に宿る力は、未来を見据えている。
ならば、俺も声をかけるか。ただ前へ希望の灯を心に燈して!
「最後の決戦と行こうじゃないか!」
一身すべてを刃金に変えて
「ならば来い! 我に血に連なりし因業の人どもよ!!」
多分、最後の一撃で勝負が決まる。
身体をバラバラになってもいい。それは自棄になったのではなく、それでも仲間が助けてくれるという信頼。故に出すは全身全霊。
「吹きすさべ風よ!!、遍く無辺に響け雷鳴!!」
本来は纏め切れない国さえも吹き飛ばす質量の大嵐と雷霆を一つに収束させる。
「まぁ、短い付き合いだけど、俺と言ったら、これだよな」
最後に頼るのは至光剣。今日の朝に見た五行至光剣を参考に、剣に纏った全ての力を魔力光と力に変換し束ねる。
荒ぶる力の奔流は、身を引き裂いて、バラバラにしてしまうかのような感覚さえある。これを制御するという事は、台風を風船の中に入れ持ち運ぶという無理難題をこなす様なものである。
苦難にさらされ地金を晒す、汚泥にまみれ、身動きが取れなくなるような気さえする。強い疲労が心身を浸す。それでも先ほど聞いた仲間の声に、恥じない自分でありたいと節に、節にと願うから。
今の俺ならできそうだ。そんな気持ちが湧きあがる。
だから、力を込める。
「収束せよ!無間に連なる力の欠片、自然の中で最も力ある木行よ! 万象砕く古代神の権能よ!」
力は収束する。自身を避雷針とし、荒天の力を束ね極限まで力を凝縮させる。これは完全に制御された雷霆。いやそれ以上の力である第四の姿。
光はまるで周囲をかき消す滅光となって広がった。
「ぎ……なんとか、って所か……」
制御こそ成功したものの、力の余波で腕に空間が出来上がる。それは俺を中心に縦五、横五メートルの空間。制御に成功しているため、自身を傷つけることは無かったが、正直、仲間が居なくて本当に良かったと思う。
そして、当然ながら敵もまた攻撃の用意をしていた。
「拡散せよ、無間に連なる我が肉体、自然の中でより遍くを統べる土行よ! 万象終わらせる。魔王の権能よ!」
相手の言葉がトリガーとなり、肉体の全ての血と肉が別種の生き物となり俺に方向へじわじわと向かってくる。それは天井から落ちたり、肉から這いずり、隙間から湧いて出てくる。
呪文は偶然か、それともわざわざ合わせたのか、俺と同じタイミングでついとなるような呪文を唱える。違うのは属性のみの似た呪文。それは否が応でも、俺達に血の繋がり以上に似たところがある事を教えてくれる。
……スライム〇スが現れた、コマンド? ってか
初めは不定形の赤グロテスクなスライムの様であったが、もぞもぞと龍、あるいは狼、蟲、そして武器もつ人となって襲い掛かってくる。
「「バルバルバル」」
その威嚇は、生まれてきたばかりのモノとは思えない堂々としたもので、ただ、俺を排除する為だけに産み落とされたものとは思えなかった。目に力がこもると言うが、見られるだけで常人なら身が竦むだろうと思われる。
目とか明らかに光ってるし
「「天より来て!」」
だとしても
臆するわけにはいかないな。
父さんの血肉より新生する生物。それはあるいは俺の弟や妹である存在だ。それでも、外で待っている仲間の為に、近づいてくるそれらを、目的地ごと消し飛ばすように、俺は改めて剣を握り直す。
「大地より生まれでよ! 出チノ新生類」
「天へと帰れ! 新たなる可能性の剣!!」
それはちょうど対を成す技。命の芽吹きである、土行の技に対し、命を破壊しつくす稲妻の、木行の技。
正しさなぞ競った覚えはないが、どちらが正しい技かと言えば十中八九は父の技であろう。
自身の身体さえもプラズマフォトンに書き換えて放たれる剣技の数々は、千は殺す常勝無敗。ただの一体も俺の前に生存を許さず。遍く殺す悪鬼羅刹の所業である。
対する父は殺されても自信の身体から削り落としてでも産み出し癒す誕生と再生。こちらが千殺すというのなら癒して、産んで、千五百の兵を揃える。生命の大奇跡だ。
大勢に賛同される技はどちらかと言えば産み出す技だ。
なんて……
くだらない想像だなぁ!!
減らしても、減らしても湧いてくる新生物と掘っても掘っても先の見えない体内に疲れがたまってくる。これを維持できるのも持って数秒。なのに敵の猛攻は止まらず、吹けば消し飛ぶ命の分際で、牙を、武器を、命を懸けて俺に当ててくる。それに体力や魔力を削られて、今も立っているのが精いっぱいになりそうだ。
ならばいっそ一か八か自滅覚悟で相打ちを
握る剣に、力を込め直すしかし、ふと仲間の表情を思い出して他に手があった事を思い出す。
そうだな、仲間を信じてみるのもいい。
剣を正眼に構えて、この空間に来て、ベルセリカ探索で覚えた魂の探知を使用する。無制限に流れる世界そのものに匹敵する魔力は、規則正しく流れているにも関わらず、心臓の位置を押し隠す。
「質量の桁が違えばこんな事も起こりうる、か……」
無限湧きで必ず前回以上の数で襲い掛かってくる。そもそもこちらの体力だって無尽蔵じゃない。
全ての力を使い、斬る
脱出の余力を残しておくべきではあると考えていたがそれは、もう考えない方が良いだろう。
今も足の速い順に襲い掛かってくるバルバロスの爪と牙と雷、ブレス、弓矢の攻撃を避けながら、全身全霊で持って全てを断ち切る為に今は力を蓄える。
質量に押し流されるというのならば、逆らわなければいい。一瞬しか知覚できぬというのならば、何度も押し流されて知覚すればいい。そうすれば、目的地の情報も多く手に入る。一度ではなく何度も力の探知を循環させる。
その間も増えるバルバロス。それでもこの窮屈な空間で 身動きが取れなくならない様に増殖速度は抑えられている。それに攻撃もまれに味方に当たり、自爆している奴もちらほらいる。
好都合、その分、余計な回避に手を追われずに済む。
「中も外も面白い抵抗をする!」
その言葉を聞き、どうやら仲間が無事である事を確認する。ならば、なおさら引く訳には、行かないな!
迫りくるケモノの群れに、臆していた心が仲間の無事に一気に消し飛ぶ。負けない心で満ちてくる。それは虚脱感を伴うリラックスもあるが、今はそれも良いだろう。力を得るたび、削られていく器の中身に仲間の心を注いでいく。負けない、朽ちない。
「よし、認識した!!」
ここから斜め上、
だから、これは最高の一撃
プラズマフォトンを再構成、制御を成功した今なら、それを放出する事も可能だ!
魔力の本質は死せる魂。今まで倒していたバルバロスの魂さえも喰らって、プラズマフォトンへ再構成する。力を長大な刀剣へ構成し直す。




