巨蛇の圧潰
この剣技によって俺は空さえ駆けられる。そういう特性を持っている事が幸いしたのか。急に投げ飛ばされた上空で何とか空中戦を演じられている訳だが、風のない空間でよかったという程度には突進くらいしかできそうにないな。
ただ、不思議な感覚も無くなっている為、直進はそのまま父さんまで届く。
「っぐ、完全には無理だったかそれでも!」
雷光が貫いた光の中心にいたのは蒼き二対の羽と白を基調とした蒼い法衣をまとい紅き爬虫類と人間を混ぜ合わせたかの如き様と明らかに身体と釣り合っていないほど大きな手を持った存在。
完全体ではないらしいが、それでも禍々しい歪さを持ちながらも神々しい半人半神がそこに誕生していた。
大きな赤い右手で剣を抑え込む、今までどんなことをしても壊れなかった自慢の一品だが、この握力だけで粉々にされそうな気さえしてくる。
避けるか、逃げるか?
当然、思いつくのは逃避の思考 溢れ出る魔力も、そもそも俺の身体全体を遥かに上回る手は、純粋に見た目だけでも恐ろしい。
逃げたくなるだけど逃避すれば勝機がなくなる。
そうすればあいつ等にも申し訳立たないだろう。
「っフ、めんどくさい。それよりも、相手を貫く方が簡単かもな!」
生きるか、死ぬかそんな状況でさえ何故か、仲間の顔がちらついた。そんな自分に思わず吹き出しそうになる。
「ふ、良い顔だ。手加減はしないがな!」
俺の顔を見て何か思う事でもあったのか、意味深な笑みを向ける。それは構わない。しかし、何故か握力も増すのは止めてくれ。
相手は変身しても、ボロボロで血が光となって天に昇っている手で握りこまれているだけ。そんな戦い方でさえ、戦力差がひっくり返せないそんな圧倒的なポテンシャルの差。
笑ってもいられない。絶望的状況なはずなのに、先ほどからついつい、色んな意味で笑みがこぼれだす。仲間を想って、こんな戦いなのに勝機が見えてもいるいから、何より戦いが面白いと感じてき始めているから。
本当に、何故か面白い。まるで、辛いとか苦しいとかを感じる心が、消しゴムで消されてるかのように。
それでも今はその現象に感謝をしたい。今やっている事は自害に向かう為に崖を走っているような物。雷速で駆けていようが、貫く事も叶わなければ、それは通常速度で動いているのと同じような物だ。それなのに未だ指が閉め切らず、俺の身体が無事なのは遊んでいるからなのか、それとも別の理由でもあるのか。
それでも徐々に迫りくる指が光を、風景を遮断していく。徐々に暗くなって行く空、自らに迫りくる指と、手のひらで見えなくなる景色が、どうしても自分の身に恐怖を誘う。
「それでは最後だ。ティタノボア・コンプレス」
空間さえも握りこむ巨椀による握りこみ。それは思っていた以上の攻撃である事を、完成寸前に理解する。
「逃れる気なんてサラサラ無かったから気づかなかったけどッ」
どんどん圧迫され、空間が凝固していく。握りこみが遅かったのは周りの空間を固めている事に力の大半をかけていたことが理由であると今更理解する。
どんどん、周りの空間が静止していく。分子の動きが静止していく感覚はまるで急に氷河期でも来たかのような気さえする。
「実際、分子の動きが静止しているならば、氷河期なんてレベルじゃなくヤバいんだけどな! これはまずい」
最大の危機、実際は、自分が思っていた以上のピンチである事に改めて気づく。知っていたからと言って行動こそ変わらなかったがそれでも焦りは変わらずくる。
「フム、それではさようなら。ちょっと悲しいけどね」
終わりだ。自分の周囲の時空間は既に凝固し、概念さえも停止している。そう、今この状態なら知覚できる。時間をかけていただけ合って、これを逃れるすべは一切ない。文字どおりの絶体絶命のピンチそれでも自分に出来る事だけは。
自棄なのかもしれない、それでも自分に出来る最善は果したい。その為、今は自殺行為だとしても!
より深き所へ 深化、進化、そして、神化……
何らかの言葉が掠れて聞こえる。甘い誘惑、何時か聞いた。怪しいのに、怪しくない。
確かに、自分だけは絶対に助けてくれると確信できる声が脳内に響く。頭の中、藁に手を伸ばすようにその力の元に行こうとする。
そんな中、そこから救い上げてくれる光を、外から響くの声から見た
「その攻撃は私の目でなんとなく分かった。状況こそ違うもののもう一度あれで!」
それは、何時でも自分の意思のままに突き進む二閃の弾丸
「了解! 本当に空間操作系は便利だねッ!」
それは、はるか昔から続く絆とそれより生ずる未来を手繰り寄せるモノ
「ようやくこちらも準備できました!」
それは、傍らに立ち支える、一陽の元に在る華
「期待できる?」
とても大切な仲間の声が、俺の耳に、そして心に届いてくる。
「ええ、真似し、改良するのには骨が折れましたけど、その価値は十分あると思われます!!」
だからいらない
良いのか
ああ、今はいらない
そうか
だって俺には
今はただ眠ろう 「レイ、時元牢から解き放つよ!」
お前が必要とするその時まで
「他に力を合わせてくれる。友がいる!!」
再度の符召喚により、時間の停止が解かれた空間で俺は貫くのを一時止め、闇を切り払う。
そうする事で、仲間からの援護を受けやすくするために
「ヌぅ」
指を切り刻まれれば流石の父さんも一瞬怯み、拘束が緩む、それでも脱出する隙間もあちらからの援護攻撃が届くような隙間もないのは敵ながら見事と言うしかない。だが、それでも一縷の光が差し込む程度には指がたわむ。
当然、俺の仲間はそれを見逃すはずもない。
「命の活力よ、我が同胞に宿れ! 星に祈る者!! 遅れましたやっちゃってください!」
手の中に拘束されていても、仲間の声は忘れることは無い。その言葉と共に、身体に活力と魔力が優しき光と共に降り注ぐ。胸の奥から血が通う。血流が激しく流れ、魂もまた巡りが早くなる。ギアをあげたエンジンの如く高速で力が高まっていく。
「私の技か!!」
「その改良らしいですよ? なーいすタイミング! 続けて援護!」
エニグマの開いた血路に、全力の攻撃で報いる俺の切り払いに合わせ、テレザが援護魔法を俺達にかける。まるでこのタイミングで掛かると分かってい、たんだろうな。そのタイミングに合わせ、玖珂が銃弾を放つ。
「爆発する銃の爆発にホーミングなする銃の弾丸に当てるサーカス芸をご照覧あれ!! 行けるかな! レイ!!」
追尾弾が光が最も多く流れ込んで行く所に向かってきているのだろう。俺の視界から弾丸形であろう影が形成される。
「援護ッか!?」
その直後、爆発。銃弾はこの分厚い手をこじ開けても依然と変わらぬ速度で俺の鼻をかすめて俺が貫き、そして現在、修復していっている傷口に向かっていった。
「もう一つ、改めて本命だ!! もう一度力を貸してくれ ウッドドラゴン!!」
青き龍はその言葉に、任せろとでも言う様に咆哮をあげる。何故、ここまでこの龍が協力的なのか分からない。父さんも分かっていないようだがこの龍たちは、何処か、父さんにライバルに対して向ける敵対心を持っている気がする。
その様な事を数瞬だけ、剣に力を込める待機時間の時だけ思考を巡らせる。その中で、龍は剣へと力の息吹と雷を降らせる。
最初は到達する事を優先し、速度と威力そして持久力を優先した剣技だった。ならば今、頭に描くは最速ではなく突破力。ただ居ながらにして万物を砕く一撃滅殺。
この一撃は届かせる。




