俺の名は
俺も疑問に思っていたけど、Cって本当になんだろうなー。そう思っていると、とんでもない方向からその解説が入ってくる。主に、玖珂とは別方向の隣から。
「ああよかった。Cの方は何時ものナナセだ。君、今、分裂してるんだよ。その為三人目と言う意味でCだと思うよ」
そう言ってくれたのは、俺の左に存在するエニグマだ。父さんは説明で何と無く察したのか、突っ込む事は無くなり黙って聞いている。
Cと言う言葉に、何やら言いたそうな顔をしていたがそれでも黙って聞いてくれてるのは本当に助かる。
「で、こいつ多分、君の本体の息子」
しかし本当に六歳くらいの父さんと初めて会った時とは違って、やたらフレンドリーにエニグマは父さんと会話していた。
外野おれたちを差し置きわちゃわちゃと話し合っている。なんというかエニグマの表情はとても自然な感じで、話し合っていた。他人に寄りかかり、他人を突き放し、距離感をその時々で変えからかう。それはどこかエリーゼさんと話し合っていたような、自由な距離感。
うん、古い友人つってたから、本来はこっちが正しいんだろうが、どうしても初めに見たのがやたら警戒している状態の方だった為、違和感を覚えてしまう。まぁ、だけど紹介された以上、一応、応えるておく必要性はあるよな。
めんどくさいとは思いつつ、頭に手を置いて返事をしようとする。うん、使用としたんだが……
「はい、こっちが本来の息子の玖珂レイ君です」
暖まっていたほのぼの空間に素敵なインターセプトが右から決まってしまった。メンドクサイ、煩わしいと思ってしまったことが原因か? 今ではとある暴走機関車の独壇場だった。
つーか、後ろに回るな、肩掴むな、肩にアゴ乗せるな、頬に頬寄せるな?!
「よっし、突っ込みたい事いっぱいあるけどまず把握し辛い事から突っ込む。私の息子だよね? なんでそっちの少女と同じ苗字なの??」
?乱舞に、あきれを混ぜ合わせた素敵な表情で、顎を左手で触り考え事をする父さん。どうやら細かな癖は子供の頃から変わってはいなかったらしい。右後ろの煩わしい物体は無視しながらそう考察する。
「それは私が貴方の未来の義理の娘だからですよ? お義父さん」
耳元で大きな声を出すこいつにはどう突っ込んでいいのだろうか? 本当に煩わしいな。
「婿養子なの!?」
父さん本気にしないでくれ。
こちらと右の奴に対して視線を行ったり来たりさせながら父さんはそう突っ込む。今、父さんの頭の中ではどうなっているのだろう。腕を組みながらマジで悩んでいるようである。仕方ない。
「俺の名前は六導・黎だよ……後、父さん! こいつのいう事は八割妄言だから気にしなくていいよ!」
うん、これ位でいいだろう。ある程度身振り手振りで自己主張しながら、そう思って安心しているといつの間にか寄生していた物体が剥がれ落ちていた。
ようやく消えたか。
何時の間にか消えた事に安堵のため息が出そうになったのもつかの間、颯爽と前に躍り出て面白い発言をしてくれた。
「そして、三割寝言!!」
面白いポーズを決めながら吐かれる素敵な言葉に呆れ果ててモノも言えなくなる。これは反応しない方がいいんだろうなーっというのが俺と父さんとエニグマ間での共通認識になってきたのだが、当然、反応してしまう子もいるわけで、
「一割しかマトモな事言えないんですか!!」
「おーテレザ気持ちも分かるけどどーどー」
流石にテレザが突っ込んでしまった。色々苦労かけられているせいもあってかその言葉にはやけに力が入っているようにも思う。しかし、流石にそろそろ玖珂に付き合っていたら話も進まない訳で、俺は玖珂よりもまず、テレザを落ち着かせる。
流石に聞き分けも良く、黙ってくれはしたのだが。何か目は何故、私が……とでも言いたげに少し涙目になっている。すまんな、テレザたぶんアイツ止めても聞かないからお前の方が落ち着かせやすいんだ。
「ナナセ……無視してくれると助かる」
「ふふ」
「なんだい? ナナセ、いきなり笑ったりして」
俺がテレザを宥めている間に、エニグマが、玖珂を無視してくれるように父さんに懇願する。手が離せない状態だったので本当に助かったのだが、何か様子が変わっているようだ。
「いや、どうやら未来の息子は、本当に素晴らしい友達に恵まれているようだと思ってね」
本当に、本当に楽しそうに微笑みながらそう俺達を見回して告げる。何処かその視線は薄らと閉じており、本当の感情は読み辛いものがあるが、それは……間違いなく悪いものではないだろう。
言葉の端からも溢れ出る慈愛の感情がそう告げている。
父さんにここまで率直に思いを伝えられたことが無かった為、何所かこそばゆいものを感じ、ついつい頬を掻いてしまう程度には俺は照れているようだ。
「うん、そうだね。僕も今ならそう思う」
皆、その父さんの言葉に何か感じいるモノがあったようである。四人で顔を見合わせてしまった。その中で代表してエニグマが父さんに改めて、さっきの言葉に応じる。その言葉もまた、何がしかの複雑な感情が込められているように感じる。しかし、暖かな口調で持って伝えられたのだから悪いものでもないのだろう。
「そうか、それは良かった」
さっきまで、ドタバタがあったとは思えないほど周囲は穏やかな空気に包まれていた。なんというか、本当に心を込めて言うんだな。
何時の頃からだろう、父さんと面と向かって話せなくなったのは? 何時の頃からなんだろう、父さんがこんなにも朗らかに表情を変える事が出来なくなったのは?
こうやって、異世界に来て、若い頃の父さんに触れていくうちに初めて思った大切な事。初めて自覚したどうしようもない事。今まで怖くて、あるいは、知らなくて目に映らなかった身内に色々に改めて俺は触れている。そして湧いてくる色々な疑問。
本当に、元の世界でも知れた事さえ、目を反らしてきたんだと気づかされ、俺の足が後ろに下がってしまう。それでも
「どうしたんですか? レイさん?」
それでも
「うん、なんでもない」
今は周りに友がいる。無様は晒せないし、それに落ち度があるなら改善すればいい。周りの視線があるからか、そんな事を考えてしまう。いつもの怠け癖も諦めもどこえやら、また始めればいいと思ってしまう。
父さんの言葉ではないが、本当に良い仲間に巡り合えた。心の中からそう思う。唐突に気づいた自分の情けなさに気落ちしながらも、友に囲まれている事実がそれに躓く事を否定してくれた。
(茶番終わった?)
誰かさんの言葉ではないが、本当にそう思っていたのだが……無慈悲な言葉があらゆる余韻を引き裂いた。
当然ながらその言葉を発した主は、エニグマから痛烈な視線を浴びる事になったのだがそのような物など知らんと言いたげに睨み返している。
「まぁ、聞きたい事もあらかた聞けたし良いか……元々、戦う為に呼び出されたんだしな」
アルヴァの言葉に父さんは仕方ないなーとでもいう格好から心機一転、姿勢を正した。




