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無明の世界へ

そしてその中で、何かが常に動き続けていくような感覚。その中でさえ不動であったり、流れに逆らわずに動く何がしかの気配その中でも感覚の強いものがいくつか存在する。


 その事に気付くと、奥には確かに何かぼやけた気配のベルセリカの魂が存在した。その魂はなんというか太陽のプロミネンスの部分だけ取り出したような、土星の輪と表面の部分だけのような微妙な感覚がある。


 その魂に疑問を感じながらも、改めてこの世界に対する情報を少し手に入れた気がする。それは削られる奔流の正体。


 まるで激流の様にこの世界では絶えず命が流転している。良くわからんが、そういう事らしい。


  (洗濯機でも想像すればいいと思うよ? 基本は炉の様なものだけど)


 言われて分かる。何かが奪われ材料にされている感覚。無明の世界などではなく、常にここに在るものは全て何かを生み出す為の材料にされている。光も、命も、足を踏む場と言う概念さえも、故に息苦しく、故に何もない。だから真っ黒な世界と認識してしまうのだ。近い概念を魂が認識しているから。


  (君たち人間の原初乃地獄うまれたときとおわるときとは 無明なにもみえないくろ)


 そう、それ故にここは無明、他が終わり何かが始まる。



 『何処か』に色々な物が混ざり合い『あるもの』を新生させる為の場所であり此処にあるものは全てその素材。故にここは炉にして窯。


  (そうそう後、四人捧げれば私は本来の力を取り戻せる。だけどやめた方がいいよ)


 等とこの空間の中で唯一『安定して存在』している者が言ってくる。


  「それで、どうでもいい事ベルセリカのしごのしょぐうや改めてここの説明する為だけにここに呼んだのか?」 


 どうしてもその事実に無機質なってしまう俺がいる。いるだけで目の前の存在の材料にされると分かって真っ当に返せるわけがない。怒りさえなく何もかも無関心。まるで心さえもこの空間に奪われているかのような感覚もある。


  (ん、いや。ここに招いたのはこのままだとヤバそうに思えたから)


 小首を傾げてそう応えるアルヴァ。少しずつ情報を小出しするやり方は、この世界の真実に気づいた今だと少々癪に障る。何時の間にか、何もない場所にイライラと何度も足をバタつかせることが出来る様になった。いつもと違い、踏んでいる地面があやふやな感じで頼りないものでは無くなっていた。これはイメージによる『虚数空間』を『実空間』へ変換できる様になったからだろうか?


 ……うん。本当にいつの間にか知識を得るのはモヤモヤする。分かってたように感じる初めて知る事ってなんかキモい。自分が別の何かになったように感じる。あったはずの記憶が無くなると別人のような人になる者がいると聞くが、無かったはずの記憶があると其れもまた別人のように変わってしまうだろうと自分で体感してしまうのは結構きついものがある。


 そんな俺をじっとアルヴァは見ていた様で何故かこちらに指を指している。


  「なんだ? 話を聞いていなかった事でも突っ込みたいのか?」


  (ここに呼んだ要件は二つ、一つはそれの説明)


  「? ああ、知識がいつの間にか得てる事か」


 何となくわかったが一体どんな説明が来るのだろう? 自分で調べようとすれば調べられそうだが、さっきから悩まされている事もあり、教えて貰えるのならありがたい。今まで使ってきた剣の技なども、この状態で習得しているので詳しく説明してもらえるなら今後の役にも立つだろう。ついつい期待してしまい。足踏みすら止んでいた俺だが、そんな俺の感情とは裏腹に、とても素敵な答えが返ってくる。


  (うん、それは『魂の喚起』と呼んで集中している時や、こういう魂がむき出しになる特殊な空間で起こりやすい。説明終わり)


 期待していたのとは違う、簡潔すぎる説明にどう反応していいか分からなくなる。

 ただ、どういう状態でこの状態になるのかなどは、確かに分かっていると助かる知識なのでとてもありがたいんだが……


 怒ればいいのか、感謝すればいいのか。なんと反応していいか悩んでいると次に……と言う言葉が聞こえる。後に続いた二つ目は、確かに今の自分『達』にとってとても助かる情報だった。……方法は別として


  (レイ、気づいていると思うけど、君はこのまま戦うと負けるよ?)


  「いきなりどうした」


 言いたいことは分かる。本当に唐突だが、その前に起った事を思えば、呼んだ理由とやらはつまりそういう事である


  (ん、だからアレに負けるよ? 多分だけどあいつ本来の力以上になる算段がある)


  こちらをじーっと見て、まるでどうでも良い事の様に淡々と恐ろしい事実を口にする。


 現在、元の力以上に劣化している状態でさえこちらは多数で攻撃しても圧倒されている。それが元の力以上となると……


  (どうした)


 ふと、アルヴァが声をかけて来る。景色が動いているように感じるがどうやら、無意識に後ろに下がっていたようだ。事実の確認でさえ、恐怖心からか足が後ろに進んでいた。


 俺にとっては絶望的な事実を口にされただけだが、その言葉は無機質だが、一応は心配してくれてるようである。その事は分かるのだが、本当に『一応』である事も分かってしまう。感覚や価値観の隔たりを改めて認識するなぁ……


  (という事で二つ目は君たちの強化に手伝ってあげるよ?)


 疑問形に話されっるそれよりまず聞きたい事がある。


  「なぁ、それより父さんの本来以上に強くなる手段ってなんだ?」


  (知らない)


 会話、しゅうりょー


場には何とも言えない空気が流れる。


 瞬く間に話し合いが終わってしまった。こいつ、本当に人の話には答える気ゼロだよね。その言葉にどう反応していいか口をひくひくさせた我ながら情けない顔で悩んでいると何かを思い出したのか、目を中空に漂わせてアルヴァは何かをポツリと言ってきた。


  (現状の認識化で多分だけどありそうだなって感じ)


 その材料も詳しく説明して頂きたいのだが、どうやら答えて頂けない。聞こうと口を開いた時、別の言葉に潰される。コイツ的には本題だったようで、配慮なしに言葉が放たれた。それは……


  (そんな未知数のナナセに対抗するために、君『たち』には『かつて』のナナセと戦ってもらう)


 無表情で言い放たれたその言葉に唐突にテンションの上がるバックグラウンドミュージックが流れ始める。しかし、そんな俺の言葉もどこ吹く風とでも言わんがばかりに何処かを向いて何か四角い物に腰を掛け、アルヴァは足をバタつかせやがる。


  「おい、なにこの演出!? というか君たちって? かつての父さんってなんだよ!?」


  「ここは誰? 私は何所に?」


 とても聞いた事があるギャグが後ろから聞こえる。更に、


  「アレ? 寝てたはずなのに妙に眼が冴えて体調がいいような?? ここは夢ですか」


 うん、とりあえずテレザと玖珂はいるようだ。真後ろにいるようで、声が聞こえる。何か俺と違って調子が良さそうなのが気になるがゆっくりと振り返ろう。


 そう言えば、一人足りないような。


 こういう場に一番反応を示しそうな、俺たちのチーム一番の常識人枠が何故か声を発していない。


  まぁ、いいか後ろを振り返れば済むだろう。ゆっくり振り返る中でそう思っているとそれが後悔すべき考えである事を俺は、すぐ知る事となる。


  「消えろ」


 大きく発せられる言葉に聞き覚えがあるとかではなく籠った殺意が質量すら持っている錯覚があるのでどうしても振り返らされる。


 その殺意を放っていたのは、どう考えても身内であり、我らの冷静担当だった。

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