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夢より落ちて

 元々買ってあった紙を取りだし、さらさらとかつてエリーゼさんの所で見たカードの情報を参考に書き出しているようだ。


 その際、当初はエニグマの意識を乱さない目的で黙って見ていたはずの俺達は、別の意味で言葉を発せなくなる。

 百と言う数値はこの世界全員を百人と仮定した場合の数値。つまり上に行けば行くほど数値の上昇させ辛くなり、七十代まで行けば一上がるだけでも一対一では下のモノが対応するのは厳しくなるのだ。


 全体の数値ひとつとってみても。九十代もいけば神を名乗ってよく、七十代で人間としては最高値だという。

 エニグマが八十代の数値を誇っているのだって神に近い種族と言う種族補正に過ぎず、それに匹敵していた今までの敵だって高位の魔族だったから匹敵していたに過ぎない。


 実際に戦闘をして、数値を実際に見る。そうした事が、この数値が間違いではない事が肌で分かる。特に、俺と玖珂は改めて完全に覚醒したチキュウ人と言うモノがなんなのか知れた気がした。


 桁が可笑しい、笑いが込み上げてきそうでさえある。


  「炎の聖母の加護とは?」


 その中で直接戦闘には参加しておらず、遠距離からの固定砲台だったテレザだけ、冷静に物事を観察していた。直接相手に触れていない事が今は功を奏している。


  「それは、単純に言うと火や炎と言う概念への耐性だね」


 言葉に若干詰まりながら、説明してくれたエニグマの表情はあまり明るいものではなかった。エニグマの表情もあり、母と言う単語がかなり気になる。もしかしてこれは……

 予測がある程度纏まると、どうしても聞き辛くなる。いつも以上に口が重い気がする。間違っていたら無粋だし、合っていてもだからどうだという。


 でも、聞かなければいけない気がした。


 テレザもそして玖珂も何かを感じているようでもある。特に玖珂は、蒲団の中から出てこそいないもののこっちまで結構近づいてきている。そのため聞いておかなくてはいけない。これからの戦闘の為に。


  「なぁエニグマ、もしかしてこれって?」


  「あーやっぱりわかっちゃったよね……そうだよ想定通り、これは無くなった奥方様の血の繋がらない息子に対する遺産の様なものだよ。これは死の間際にナナセに後付された能力だよ」


  「その言葉だけなのにずいぶんもったいぶった」


  「やるぞ」


  「はい。レイさん」


 もういいやとでも言った風に言葉を紡ぐ。エニグマ自身もあまり触れたくなかった話題らしく、珍しくだらしなく畳の上に倒れこみ手をジタバタさせたのだった。


 その前の様子や、現在の投げやりな様子から、その言葉はというか、ある事を確証させるのが当人にとってどれだけ苦痛なのかわかっている筈なのに玖珂はさらりと失礼な事を言う。


 その無神経な言葉は、流石に自分の身内の話題である事もあり、捨て置くわけにもいかずテレザと一緒に止めに入る。


  「海老ぞりはやめて、タップタップ」


  「テレザ何か聞こえたか?」


  「いえ、蒲団が擦れた音でしょう」


   テレザが蒲団から出れない様に頭の方抑え込み、俺が蒲団ごしから海老ぞりの体勢になる様にひっくり返して足を持つ。実際に、蒲団の中身がどうなっているかは分からんが、いい感じに決まっている感触があるのでいいだろう。


  「君たち……」


 俺たちののそんな馬鹿な光景を見て、エニグマが呆れたような表情に何処か何らかの感情を付与した表情でこちらを見ていた。


  「お客様、夕餉にございます」


 こうして貴重な話しとバカ騒ぎで昼も過ぎ、夜となる。久しぶりとなった貴重な平穏の夜は昼間に最大規模の戦いがあった事を忘れさせてくれた。



  「ずずず、大体、言わなくちゃいけない事は言ったかな」


 エニグマがそう言いながらお茶をしばく。ゆったりと落ち着いているその有様は久しぶりに見たような気もする。ただ……いつものノースリーブのレオタードっぽい姿の上に浴衣は何処と無く不思議な色香が漂っているのはどうにかして頂きたいが。その姿は、窓の近くの空に存在する銀月の光に照らされることもあってどこか神秘的ですらある。


  「まぁ、大体は聞かなくてはいけない事も聞いたと思うな」


  「そうですね。こちらの火属性の攻撃が効かない事、魔力がかつてほど無い為、レイさんの記憶や、エニグマさんの記憶程の技が使えない事は朗報だったと思います」


 俺は胡坐をかきながらもエニグマの意見に返事をして、テレザもそれに同調する。


 食後の風景、俺たちは大きな机を窓側に寄せて、月を見ながら茶を飲み会話をしていた。対照的に部屋の片隅にまるで居場所が無いかのように置かれた綺麗な食台と、綺麗な食べた物の残骸がとても印象的に食後の風情を演出してくれた。アレ、何時取りに来てくれるんだろう?


 まぁ、予想以上に豪華な食事だったので皆、そこそこ真剣に食べていた、満足の行く食事だったと思う。その為、食事中は話が続かなかったのだけれど終わった後に話を再開された。


 ついでに、さっきから話に参加してこないどっかの誰かさんは食器の置かれている入口側を下、窓があり、机が置いてある側を上だとすると右側ですやすやと寝息を立てて寝ておられる。寝る準備に関しては、食後直ぐに歯磨き用のガムと特殊洗浄液を使う徹底ぶりだ。


 風呂については明日の朝入るそうらしい。その行動に俺達は呆れたものの、やっていること自体はそこまで見当違いという訳でもなかったので突っ込む事もできずにいた。

 流石に、父さんに食らった技のダメージこそ例の魔法ゆえか、蓄積していないが、精神的なものは結構存在しているからだ。


 その為、俺達も玖珂に習い、今日はおさらいだけしてすぐ寝る様にする事にした。油断ゆえか、それとも早朝の敗北故か、そんな他愛も無い行動の中、就寝と共に、久々に俺は『彼女の世界』に招かれる事となった。


 いつも通りの無明の暗闇、そこに何処か溶けて無くなってしまいそうな質量の圧迫と、削り取られる力の奔流を感じる。


  「この空間はいつ来ても具合が悪くなりそうだな……それでも」


 『源世帰還』を覚えたが故か、それとも別の要因か、今は最初に来た時よりも息苦しくない。


  「源世帰還?」


 自分でも無意識に知識が溢れ出る。この世界の主とエンゲージし、源世帰還を覚えた辺りから偶に起こる現象だ。 


 必要な時に必要な分だけ『魂から情報を索引』しているらしい……考え事ですら他人事のように知識が溢れる事がある。この感覚はとても悍ましい何かを感じ、背筋がぞくっとした。この世界にいるのとは別の要因で具合が悪くなる。


  「まるで、」


  (自分が別の何かにすげ代わっているかのよう?)


 考え事をしていると不意に、俺の顔を向けていた足元、地面だと仮定できる無明の空間からずいっと何者かが現れて来た。


 それは、蒼い髪に白いワンピースの様な物を纏った十四歳くらいの少女である。それは、この空間の主アルヴァだった。


  「おい、見た目どうした」


 不意にさらっと流していた奇妙な点に、俺はついツッコミを入れてしまう。目の前の少女は最初に逢った時は一桁位であったはずだ。なのに今では中学生くらいの年齢に見えている。それに言葉もかなりはっきり聞こえる様になっている。


  (うん、ああ一人、君は私にササゲただろう? その為、大分自由に話せるようになったんだ)


  「捧げた? ……そうか、ベルセリカ。あいつ死んだのか」


  (そうだよ。君にも聞こえるでしょう? 取り込まれた命の叫びが、『何故か中核が』無いみたいだけど)


 アルヴァに言われ、無明の闇の気配を探る。


 言われた物を探していく中で知った副産物。無明の闇、何もない空間だと思っていたこれは、強大な質量持つが故に暗闇であった事を知る。

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