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不完全な完全なる源世覚醒者 統べる六界の魔天王・ナナセ

  「だからって、浄化は行き過ぎだろう!! 召喚が問題なら、かの国を抑えるだけでいいはずだ!」


  「それだけが問題なら、な。そうではないと皇都に行ってきたのならば分かるはずだ」


 こちらの行動などすでに知っているとでも言いたげにつらつらと言葉を口にする。


  「あっちこっちで、不穏分子がクスぶっているようでもある。『あの時』に戻してみたいと思わないか? エニグマ」


 そう言った父さんの顔は何かを、いや祖父とともにあった時代を懐かしむものだったのだろう。


  「君は、そんなんじゃなかっただろう!! 安易に暴力を選ぶ子じゃなかったはずッ」


 今までの比ではないほど感情を込めてエニグマは父さんに対して叫ぶ! この時の父の性格など俺は知らないがエニグマとっては友の乱心が許せない状態なのだろう。声所か体全体が振るえている。


  「目の前で母上を殺され! 父上もまた友に殺されたと『聞けば』こうなっても仕方ないだろう!!」


 父さんも堪らず感情的に言葉を投げ返す。先ほどまで違い、余裕と言う言葉をどこかに置き忘れていたようにさえ見えるその姿は初めて強い本心に触れた気がする。しかし、


 待て『聞けば』? かつて見た剣の記憶ではあの時、間違いなく父さんは現地にいたはず何を言っているんだ?


  「なっ!?」


  「ねぇ、聞いた話と違和感のある言葉をはなs」


  「ゼスト……!!」


 玖珂は言葉の違和感に気づいたのか、この場で一番、事情に精通していそうなエニグマに聞こうと思ったのだがそれもエニグマの怒号でかき消される。


  「なんじゃぁ?」


  「お前、『あれ』からナナセを再生させたのか!?」


 その怒号もまるで柳に風とでも言うかのようにわざわざ耳に手を当てて聞き返す。あのジジイこちらを挑発してやがる。


  「ほー、やはり聞かされておったか。ほんにお前らだけずるいわい」


  「あーゼスト、それは流石にね」


 ゼストと呼ばれた老人は恨みがましそうにエニグマと父さんを見ていた。父さんもある程度冷静になったのか、それともただ小康状態なだけなのか。


 ゼストと呼ばれた老人に申し訳なさそうに弁明する。曰く、『あの時』の事はあまり口にするなって箝口令を布いてたんだよとの事。

 『あの時』の事がどんな事なのかは部外者の俺には分からない。だが、それでもエニグマはこの空気に呑まれずにひどく怒っているように思えた。


  「あの時の、忌まわしい聖櫃に、封じられた時の残滓魔力からどんな事をしてナナセを蘇生させたのかは知らない。それでも、それは、してはいけない事だろう!」


 言葉を区切りながらも節に節にと祈りを込め感情を振り絞ってゼストに、そして何より父さんに言葉を投げかけるエニグマは何処か悲痛なものが存在した。それでも、


  「命を弄ぶ行い故か?」


  「ナナセ! 君だって家族が似たような事をされて蘇った時、怒ってたじゃないか!?」


  「それは『未来』の話だ」


 父さんは、そんな友の言葉を切り捨てる。どうやら、父さんはかつて蘇生に反対する側だった。しかし、蘇った以上意味があり、かつて大魔王とうさんのとうさんが治めていたころに戻したいのだろう。


 手段など知った事か嘯くように経験していない『未来の話』だと言い放った。


 かつての残滓である目の前の父さんナナセは、何を間違えたか。かつて選ばなかった間違った選択肢を取っている存在。エニグマにとってこれほどの悪夢は他にあるまい。本来なら回避するまでも無かった悪しき可能性がわざわざ目の前に存在するのだ。手は血を出さんが如く握りこんでいる。


  「くっ!」

 

 冷静で居られているモノが今の内に止めるべきだな。正直、俺も本来ならもっと調子を崩していなければならないのだが『何故か』思考はクリアだった。いや何処か感情の起伏が無いと言うべきか。


 そんな事考えている場合でもなさそうなので一番前に出て、仲間を庇うように目の前のちっさい父さんに向き直る。


  「父さん。演説しそうな所大変申し訳ないがそろそろ俺の仲間がお冠だ」


  「まぁいいさ。それでは私としては返答を頂きたいんだが?」


 そう言いながら手を大仰に開きこちらを招き入れる様な姿を取る。正直、今までの流れ的にそちらに行く事は無いと思うのだが……父さんにとって諦めきれぬものなのかもしれない。


  「すまないけど父さん俺たちの答えはやはり、貴方のその考えには付き合えないよ」


  「そうか、そうか」


  俺の言葉に目を伏せる。あらかじめ知っていたのかもしれないそれほどショックは受けていないように思える。それでも様子がおかしい、空気がピリピリしている警戒はしていた方がいいな。


  「……それではもう一つの目的でも果させてもらおーうかなッ!!!」


 その言葉を引き金にして父さんの周囲に魔力の風が吹く、彼の周辺だけ気候の変化が起こり雪が解け、花が芽吹き、と炎が起こり、大地が割れる。そして魔力は日輪の如き光となって背負っていた大剣に集約される。その過程でここら周辺の大地は均され平地となってしまった。


  「へっ何ですか!! これ!  急に周りの風景が変わりましたよ!!」


  「危険じゃ、これは魔力の『五行転換』 逃げるぞい。巻き込まれる」


 トーアとゼストと呼ばれた女性と男性は一目散に逃げ出した。戦闘要員ではないと分かってはいてもその見事な逃げっぷりは流石に俺達も呆れ驚いただろう。


 目の前の人間の闘気に触れてさえいなければ。


  「へー、かつてよりは弱そうじゃないか?」


  「嘘、これほどの魔力と技術でかつてより弱いって言うんだ!!」


  「理解したか、これがお前たち不完全な源世覚醒者と完全な源世覚醒者の違いだ。例え一部でしかなくてもこれだけの違いがある」


 間違いなく本気ではないし、全力ではないと分かってしまう。それなのにこれほどまで隔絶した実力差ってのは反則だろう。


 「安心しろ実力を見るだけだ」


 そう言って剣を構える。極大の魔力が集約したそれは近くにあるだけで雪が解けている。集まっていた野次馬でさえ剣に魔力が集約した段階で近づいてくるのを止めたくらいだ。


  「ただし、この一撃で生きていたらなぁ!!」


  「テレザッツああ!!何時もの!!」


 この剣の属性と特性を瞬時に察知しテレザに大きな声を張り上げて対処法を教える。正直、何時ものとか言われても分かり辛いだろうがそれぐらいでしか余裕がない。


 この剣、名づけるとしたら『五行至光剣・金式』足りない魔力を周囲から収束して属性を付けて放つ。これにどれだけの技術が必要かは俺には分からない。ただ、言えることはこの威力は防がなかったら間違いなく死ぬというだけだ。

           接続(アクセス)


            「出来るかぁあ!!」


 かつてあった事を参考に、漏れ出る魔力を種火に俺は自身の魔力を向上させる。放つは炎の属性を持つ剣技。瞬時に判断し、振り下ろされる剣に合わせて重ねる。


   『翔翼・炎月斬』


 剣の、そして魂の記憶の淵から手繰り寄せる四方の神の名を持つ一撃で迎え撃つ。焔を纏い羽ばたく鳥の如き三日月を描く振り上げの一撃は咄嗟で完成度は高くないがある程度拮抗すればそれでいい。後は、仲間が何とかしてくれる。


  「フム、なかなかやる」


 右手のみで身の丈を超える大剣をまるで小枝でも振るかのように振りかぶる。その一撃は本来なら体格も合わせて俺より弱いはずであるべきなのに、両手で迎え撃つ俺は徐々に押され始める。しかも、一応の拮抗を見せるその剣撃は余波で俺の手を焦がしてくる。直視すれば目を焼く日輪の如き金色の光は、俺の最大限の一撃ですら、その程度と否定してくるのだ。


 その一撃の熱により焼ける手は感触を、輝きは視力と言う物を奪っていく。このままでは死んでしまう。だが、それでもいい。今はそっちが上でいい。このまま耐えさえすれば!!


 空気を燃やしながら速度と威力を向上させ、迫りくる特大の炎熱を纏った炎の矢の十連発がナナセの剣に当る。一発一発が大砲の如き威力のそれは一発でさえ並みの生き物なら即死であるはずだった。なのに


  「ほー」


 それでさえ剣の威力が少々弱まったに過ぎない。だが、火気は金気を克する。その『五行』転換と聞き起きた現象から計算した技の属性になぞらえて克する属性の攻撃を当てたというのにそれでもまだ勝てないって言うのかよ。


敵は余裕綽々、俺は徐々に体の焼け、奪われていく感覚から物理的に抵抗の力を失っていく。


  これまでか


 そう思った時に、まだ失っていない聴覚から音が聞こえた。


  「ちょこっと首を右にずらして」


  「その後、剣を真下に振り下ろすと言いよ」


 その言葉に従い行動に移す。あいつら今まで何もしてないと思ったら!



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