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因縁の源

  「一体てめーは何モノだ!」


 ついつい声を荒げてしまう。


そうでもしなくてはこの空気に、少年の放つ重圧に呑まれてしまうからだ。そんな俺たちをしり目に少年はまぁまぁという柔和な笑みを浮かべる。先ほどまでとは打って変わった突然の豹変、その瞬間に重圧すらも軽くなった気がする。


  「色々試してみて分かった。君も気づいているんだろうけどあえて言おう。やぁ初めまして」


 その言葉にあまり想像したくはないある事が脳裏に浮かぶ。あまり言いたくはないが、ないが、もしかして


 その間に雪を踏みしめながらかける音と空を飛行し近づく音が聞こえる。俺たちの異変に気付いたのかエニグマが現れる。テレザはまだ後方にいる辺り、本当に急いできたようだ。


  「ほう、これはこれは報告にあったが本当に懐かしい顔じゃな」


 老人は急に現れたエニグマにさして驚きもせず懐かしそうに言葉をかける。


  「僕もそれには本当に驚いているよゼスト。そして……」


 老人に返事をした後にこの雪の中でもきちんと目立つ紅い髪の少年に目を向ける。いや、仮に彼が目立たない存在であろうともエニグマは彼を見つけていたかもしれない。目にはそう言い知れない気迫がある。


  「ああ、久しぶりと言えばいいのだろう? お互いに変わらないけどね」


 自嘲するように言う少年。エニグマと彼の見た目だけで言えば、歳の離れた友人に久しぶりに会いに来たようにしか見えない。もしかしたら少年当人はそのつもりなのかもしれないが、エニグマにとっては予想していなかったものを見る様な目で彼を見つめている。今にも親愛の情で触れ合いたいけどそれができない。そもそも何故居るのかが分からないその様な困惑が確かに存在した。


  「本当にそうだね。聞いていた話と全く違う容姿で僕はびっくりしている所だよ」


  「言うな、これも呪いの様なものだ。君も知っているだろう」


 今は二人だけの舞台であるかのように彼ら二人しか話していない。情報が出揃ってないし、テレザが来ていないので時間稼ぎをしておきたい俺達そして少年の意思を尊重している相手側との意見の合致があるからだろう。それ以上にあいつ等の会話が他人が話し合いに割り込むことを嫌う性質がある事も理由の一つであるからかもしれない。


  「ああ、そうだったね本当に、君たちはそう言う存在だった」


 しんみりとエニグマは赤髪の少年に対して何かを思う所があるのか口にする。そして次の瞬間、多分俺達が最も知りたかったであろう事を口にする。それは


  「だからまた会えたともいえるね『ナナセ』」


 予想通り、何故縮んでいるのかは知らないけれどもそいつは俺も感じていた。      紅毛の少年の正体はやはり父さんだった。


  「お前やっぱりと」


  「そうだよ。我が息子よ!」


  「へ」


  「ぬぉ」


  「あれー?」


  「ああやっぱり」


  「こうなるのも必然かもしれんのー」


 食い気味に言葉を被せられたのも驚きだが、いきなりこちらに向かって抱き着いて来たのも驚きで、先ほどまでのシリアスの空気はなんだったのかと俺達(若い奴のみ)の間に流れる。


  「おい、おーい!!」


  「いやー私は君の様な立派な息子を持てるのだと思ったら悪くない人生だったのかなって思ってね」


 抱き着いて来たのが離れたのかと思ったら今度は喜色満面の笑みでポンポンと背中を叩きながらなんか色々突っ込みたいような言葉を口にする。


  「そもそもどうしてここにいるんだい。もう一人の私がいない辺り君を作った後、戦死でもしまったのかな」


  「あのー陛下良くそんな事言えますね?」


  「ナナセの死生観は自身が『こんな事』になってたりで曖昧な所あるからね」


 呑気な子供の父さんとは対照的に言葉こそいつも通りだが警戒を崩さないエニグマ少しシュールだ。


  「現在のアンタに関しては黙秘でいいか?」


 流石にいくら父さん自身の事とはいえ、正直教えるのも色々ありそうなので黙秘する。その言葉に、やれやれとでも言いたげな表情で返されもしたが、まぁそれも当然だろう。


  「自分の事を知るのにも実の息子から警戒される始末か……人生ってままならないね」


  「特殊な状況ですからのー」


  「だね、まぁいいや。所で我が息子よ名前一応知ってるけど聞かせてくれよ? それならいいだろう」


 ? 何か特殊な前置きだったような気もするが別にそれぐらいなら教えていいだろう。一応真名対策として発音の仕方を変えて伝える。


  「レイだけど?」


  「フム、伝達率は大丈夫か……」


  「みたいですねー、名乗らせてばかりもアレですし、私の名前も伝えておきます。こちらの先生の助手をしておりますトーアです」


  何かつぶやく父さんと女性。先ほど自己紹介が正しければ老人の弟子のトーアさんが俺の名前を聞いて何事か話し合う。


  「来た」


  「所で、君たちは何しに来たんだい?」


 先ほどから黙ってテレザの位置を探り、こちらだけ聞こえる様にテレザがある所定位置に着いた事を教える玖珂の合図でエニグマは話を本題に入らせる。


 これで有事の際にある程度有利に事が進める状態だ。そう、この時は安堵していた。


  「ん、ああベルセリカが君たちにやられたじゃない? だから流石に捨て置くわけにもいかなくなったからちょっと様子を見に来たんだ」


  「やっぱり、知ってたんだ」


 役割を果たした玖珂が気になる事でもあったのか話に割り込んでくる。父さんを睨むそれは何処か恐怖が入り混じっているような気もするのは気のせいだろうか。


  「まぁ、『目』においては『蒼穹の天眼』を持つ、君には負けるけど僕も自信があるからね」


  「そう」


 玖珂の目の事はどうやら本人以上に知っているらしい。『目』を触りながら新しく得た自分の能力の名前について考える。


  「様子見だけで終わるのなら帰って欲しい気もするんだけど? ナナセ」


  「久しぶりに会った親友に対しての扱い軽いな!! うーん、ここで確認しておかなくてはならない事は他にも何点かあってねー」


 腕を組みながら困った困ったという様に話す父さんは何処か調子が外れたそれは強者の余裕であり、ただそれだけで警戒に値した。


  「まぁなんてことは無いよ。ねぇレイ、エニグマ一つ聞きたい事がある。ああ、当然お友達の方もね?」


 そう言って父さんは俺、エニグマ、玖珂そして隠れている筈のテレザの方角であろう所に目を向けて改めて俺の方向に向き合い今までと違った雰囲気で話す。それは低く強い意志のこもった言葉だった。


  「この世界を浄化する為にワレに協力しろ」


 その言葉はまるで質量を持っていた。ともすれば服従してしまいそうになる威圧感。先ほどまでとは違い何処からその低音出してるのかと聞きたくなる。大人の方の父さんと同じ、耳に馴染んでいたはずの懐かしい音程で余りにも相応しくない言葉を投げかけられる。


  「理由、聞かせて」


 エニグマはかつて聞いた事があり耐性が出来ているのかさしたる変化は見えずに、理由について問いかける。いや、何処か憤りと嘆きを感じるのは気のせいだろうか。


  「そうさな。この世界は争いが多いそう思はないか?」


  「良くは知らないだけど友達テレザから聞いた話だと今は安定期に向かっているハズ」


 父さんの言葉に割り込む玖珂それには強い意志が込められている。のだが、玖珂の言葉に父さんはまるでお前が言うかとでも言いたげに目を向けている。


  「安定、安定が真になされているなら何故、君がこの世界に来たんだろうな?」


  「く!」


 その言葉に図星でも突かれたかのように玖珂が押し黙る。確かに玖珂の存在そのもがこの世界が安定していない事を意味している。


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