食事時と力の関係
食卓に着き、シチューのような食事とパンにありつく。流石に急に来た為、これくらいしか用意できなかったらしい。
テーブルは木製、流石にこの場所は周りの物も程よく除けられており、四人きちんと背もたれの着いた丸い椅子に座れた。場所は入り口付近、左に俺、横にエニグマ。エニグマと向かい合ってエリーゼさん、俺の正面にテレザである。食器は木製の物を使用しており、どこか暖かさを感じさせるものである。テーブルクロスが
少ない時間と食材の中でこの料理を作った理由は、どのような料理が好きかはわからなかった為、身内なら特に好みも変わらないかもと考え、父さんが好みでありレシピを教えて貰っていたシチューを振る舞うことに決めたらしい。
どうやらこれは、エリーゼさんから聞いた話から推測して、食べやすいもので尚且つ、かつて父さんがこの世界で再現して家族に食べさせていたものであった為、レシピを弟子に渡したらしい。ただ、彼女なりのアレンジが入っているらしいとの事。
特にこの料理なら、栄養価も高いので、今まで碌な料理を食べてなかったとしても、これなら体に欠けた栄養を得られるかもしれない事も考慮されている。
こういうところはどうやらエリーゼさんは気が回るらしい、レシピを弟子に渡して調理を丸投げしている事は触れないであげるのが吉だろう。
とても暖かくて、程よい喉ごしのシチューに舌鼓を打った。俺自身、シチューはサラサラよりも箸で飲むことも可能程度には粘度のある方が好きであり、今回だされたシチューその粘度にを保ち、パンに合わせるのも良しな代物だった。
パンをつけると絡みつき味が染みるシチューは乳製品のほのかな甘みと、具としてはいる様々な野菜の甘みが溶け合い、協力し合っている。熱々なのも木製のスプーンですくったり、パンに絡めることで程よい温度になるように調節されていた。
「作り手の真心が伝わってくるようである」
「あ、ありがとうございます」
どうやら声に出ていたらしくテレザが顔を真っ赤にしてスプーンで救いながらシチューをちょびちょび飲んでいた。
これが、後の不幸につながることを僕たちは誰も知らなかった。加害者以外。
とりあえず、食事通して多くの事を話し合った気がする。まずは、一番聞かれたことはやはり父さんなどの事だろうか。
ここに来る途中でもこの世界で生き抜くための知識などを詰め込むために、エニグマにもあまり話せる機会のなかった父さんの話題はテレザ以外の人にとっては共通の知人であった為、テレザには大変申し訳ないが盛り上がった。
ただ、テレザも父さんについては教わっていたようで、そこまで話について行けないというわけでもなかったようである。
ただ、常に言われる父さん死亡説については何故か避けられていたような気がする。そして何故、父さんのここでの身内が何故大体死んでいるのかも避けられていた気がする。何があるのだろうか……
とりあえず、父さんが生きている事や俺が三男であること等子沢山であること、現在の趣味が物づくりと秘湯めぐりであることを明かした。
そこはあまり変わってないらしく昔っから色んな所に行っていろんな物を作るような未知を求める性格だったらしい。ただ、父さんの話から少し雲行きが怪しくなり始めた。
「そういえば、ここから旅をするのよね? 黎の実力ってどのくらいなの?」
そうエリーゼさんが自分の食事の方がある程度着いた時に言って来たのだった。
父さんは子供の頃から強く魔術や魔法に関してなら、地球からこの世界に来る過程での源世覚醒(召喚されたこと等で血のルーツを覚醒させることをそういうらしい。)その辺は恐ろしく強かったらしい。
タメをはれる事が出来たのはエリートの中でも鍛え抜かれたものくらいで、圧倒できたのは最高幹部位だったという。
ついでの話だが、源世覚醒は地球人が行いやすく、恩恵を受けやすいだけで別にこの世界の人間が行うことも不可能ではないらしい。
とはいえ父さんは、実戦経験が少なかったため一般兵でも鍛えた者なら運よく勝つこともできたので良く下級兵とも訓練していたらしい。
下級兵の戦い方や訓練方法から自分の強さに対して飛ばしてしまった物を理解し、下級兵は格上とどう戦うのかを勝つことも不可能ではない父さんから学んだという。
そんな強さの父さんから生まれた俺だ。源世覚醒していないとはいえ、どれだけ強いのか気になるのだろう。
それに対してエニグマと俺は言葉に詰まった。正直にいうと、一応鍛えていたので大したことのない野盗位なら俺でも二人くらいは同時に圧倒できる。ただ、三人になると互角、四、五人だと目も当てられない。
つまりは一般人より上程度なのである。良く父さんこの世界に俺送り込めたなと思う。エニグマの話では下級の魔物(魔族の動物版との事)程度ならば倒せる実力であり無理をしなければ生活はできるとの事、なんというか普通だな。
「ほー、言いたくないんだ良いよアンタらその気ならテレザあれ持ってきなさい」
机に肘着いたまま頬杖ついてこちらに言ってくるエリーゼさん。自分の家だから仕方ない部分あるけど、もう少し何とかならなかったのだろうか?
「ししょー、あれ使うのですか?」
急に話題を振られたテレザがシチューのついたパンを噛み、飲み込んだ後に、嫌そうな顔をして右にいる師のエリーゼに聞き返した。あれってなんだろうか?
「そうだよ、持ってきなさい」
「あれ、誇り被ってるから食事中に持ってきたくないのに……」
テレザがぶつぶついいながら椅子から立ち、部屋の奥に引っ込んでいった。俺はそんなテレザを見て、親しい人にはああいう顔も見せるんだなと思いそのまま見送った。
テレザの背中は師には逆らえぬと、どこか煤けていた気がするが気のせいだろう。
「アレって何さ? エリーゼ」
「最近の騎士連中や冒険者ギルドとかで流行ってる奴よ! まぁ見てなさい」
食事し終えたのか満腹といった表情で椅子に腰を落ち着けているエニグマがそうエリーゼに尋ねる。
エリーゼはエニグマに待っていろといいテレザの帰りをみんなで待つことになる。改めて、一人だけ食事が終わりきっていないテレザに行かせたのは流石にかわいそうだったのではと俺は思った。
師匠と弟子の力関係はどれほど生活を依存してようが師匠の方が強い
悲しいなぁ