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集いしチキュウの民

 「まぁ、どれもこれも間違いなく自分以外だって感じている苦痛なのかもしれない」


 吐き出した言葉は暗い感情と共に外に出たのか彼女のテンションも元に戻ってきた。


 それでも、努力しても改善の兆しも見えない所か別の問題が見えてくる。鋭敏すぎる感覚と自由を求める心が現実と向き合う事が出来なかったのだという。



 「そう言えば、年頃の女の子なのに同年代の異性とさえ触れ合う事なんて無かったな」


 こちらを見ながらそう言ってくる玖珂はどこか安堵の視線すら浮かべてくる。


  「だから、初めて触れ合った異性が君であって良かったと思うよ?」


 言われてこちらの方が照れ臭くなったが玖珂は変わらずにこちらを見てくる。その視線は混じりっけなしの親愛。正直俺はそれを向けられるにたる人間なのだろうか。


  「うん、そうやって自分の価値について盲信せずに相手に相応しくあろうとする姿勢は素晴らしいよ」


  「からかうな」


  「私は嘘は言わない。正直すぎるだけだよ」


 そう言いながら、まるで抱き留めてと言わんがばかりにゆっくり抱き着いてくる。無意識と意識の狭間に潜り込まれついつい抱きしめてしまう。抱き留めた身体は柔らかく、スタイルは出るべきところは出て、引っ込むべきところは引っ込んでいる。


  「ロマンチック、かな?」


  「いや、全然」


 ……本来ここでエロい感覚の一つでもあるべきなんだろうが、玖珂からする匂いは甘いのではなく先ほどのラーメンによるニンニクと図々しく要求した餃子のニラの香りがプンプンするのでムードも欠片も無い。


 ないはずなんだが、その代りその匂いも含めてエロいと言うよりもなんというか家族的な安らぎを感じてしまう自分がいる。そう、気を遣わなくてもいい親しい相手といる感覚。


  「ほほー別のは感じてるみたいだね?」


  「うっさいわ」


 認めたくなくて声をあげども、玖珂は気にせず抱き着く力を強くする。


  「何故、私が君の感情を認識しているかわかる?」


  「愛の力ーとか言うなよ」


 正直、今までの流れとかつてエニグマから聞いた情報で何となくは分かっている。だが正直、確証がないから不安と言うのもある為、あえてとぼけてみるーぅ!!


 「いてーよ、首を思いっきり噛むなよ!」


  「まぁそれも、あるけどね? 何、君も察している様に唾棄すべき超直観と自慢の『目』が魔力によって源世覚醒した事により強化されたからだよ」


 俺の訴えを無視して言葉を続ける。やはり、源世覚醒をして強化された能力らしい。元々の身体能力に魂の変革による魔力的異能の発芽、思えば不完全でもこれらは起こりうるというのは当然なのかもしれない。


  「この世界に来た時に発現した『これ』は私に希望とそれ以上の絶望を与えてくれた。今まで何と無くだった悪意が本当に『目』に見える様になったんだからね」


 囁くように、耳元でもたらされた言葉は正直どの様な感情を込められていたのかは顔も隠れていたので分からない。


  「周りの人間も酷いのなんの、私の持っていた能力が求めていた能力と違うってなったら速攻アイツら殺しにかかってきたんだよ」


 何とか命からがら南に下って行ったらしい。本来は最初っから皇都に行きたらしいが、妨害を受けていたのと、流石に服しか持っていない状態で未知の世界を逃げるにあたって冷静ではいられず、ただただ敵の居ない所を逃げるしかできなかった。そして、最終的には食べられる物も探すことができなくなり、あそこで餓えに苦しんでいたらしい。


  「半ば動物じみた生活だったよ……ぶっちゃけ今なら生水と生肉食えるよ。私」


  「それは……凄い特技だな」


  「うん、やっぱりレイ君は私とフィーリング合うねー」


 俺の感想がお気に召したらしく上機嫌になる玖珂に俺はついて行けなかった。苦し紛れの言葉の中で何とか賞賛になりそうな『本心』のみを口にしただけなんだが……何が彼女の琴線に触れたのだろう。


 「しかも、呼ばれた世界は未知の世界で、知識と言えばこの世界のある程度の地理と言葉と文字そしてマッチョな老神様に何言か、言われただけだった」


  「おい? 神様って誰だよ」


 今まで黙って聞いていたが流石に聞き捨てならない事を言い出した玖珂に思わず話を止める。


  「この次元世界の創造神。名をノイ・ヴェート。外の世界に住まうものよかの地に行けたならば、いずれ出会ってしまうかもしれない『意を違えた古き友』より別たれし『幼き理想』の炎を止めよ。さすれば願いを叶えよう」


 つらつらと言われたであろう言葉を復唱している。何の感情もこもっていないのが少々不気味に感じるが。


 「って言われた。ぶっちゃけかなり不親切だったけどどうやらそれしか伝えられなかったっぽいねー今考えると」


 天を眺めポツリとつぶやく玖珂は言い知れない目をしていた。それは説明不足から生じる不信感と何故、伝えられなかったのかと言う不安。それを強く感じているらしい。だからかもしれない。俺は不器用だけれども言葉にする。


  「神様に願い事託されて異世界に転移しましたーとか主人公みたいじゃないか」


 彼女の不安を紛らわせられるかは分からない。だが、それでも彼女の目がとても不安に見えたから、俺は素直に羨ましいと思った所を口にする。


 その言葉に、玖珂はこちらを見ながら何故か微笑みながら、笑い始めた。仕舞には指を指しながら腹を抱える。その内、雪で覆われた地面を転げまわりそうですらある。


  「い」


  「ありがと。本当に君は心地よい。嘘は言わない、相手の気持ちを考えている」


 いい加減にしろ。と言いかけたがその言葉は潰される。


 察する力は弱いけどと一言多いがこちらを見て微笑む。


 何時だって悲劇は唐突に現れる。いや、本来ベルセリカがこの付近の森に現れた時点で思うべきだった。その後悔を近い未来、『三人は』思う事となる。この時までは三人の誰しも今日があんな事になるなんて思っても見なかったんだ。


 強いプレッシャーを俺達二人を襲う。空間が軋みをあげているかのように歪む。だが、それさえこの現象の本質を理解すれば児戯などではないか、余波に過ぎないと思い知らされる。


 なぜなら


 そもそも、その空間の歪みとプレッシャーが今、俺たち周辺にしか起こっていないというのが可笑しい。


  「大丈夫ッツガ!!」


  「レイ君こそ大丈夫か! なに、この気配!」


 胸の上から押さえようとした心臓の鼓動が異常なほどに回転率を上げる。呼吸こそ出来るモノの尋常ではないプレッシャーが俺達を襲う。いや、俺に限って言えばそれ以外にも心臓を抑圧している物がある。


 これはあの時、城で感じたものと一緒!


  「フム、立っていられるだけ及第点かな?」


  「この寒さ、老体には堪えますな」


  「いや、せんせーの場合、適温に保たれた部屋に引きこもってるからでは……」


 重っ苦しいプレッシャーの中で、のほほんとこちらに何か特徴的な三人組が来た。


 ヨレヨレの白衣を付けたいかにもデスクワークですという体格の赤銅肌の銀髪の老人、長い金髪に白い肌のモノクルをかけた二十代くらいの見た目の女性、それに身の丈に合わない大剣を背負い、特徴的な文様の描かれた白いローブを纏った小学生くらいの男の子。


 それらは見た目だけでは明らかに戦闘をするものとは思えない。正直祖父と母と一緒に雪国にピクニックに来たと言った方が正しい雰囲気ですらある。


 ただそれさえも少年から放たれるプレッシャーとある特徴に目を向けなければの話だが。


  「レイ君。彼を見て色々聞きたい事があるんだけどいいかな?」


  「ああ、俺も大分疑問があるよ」


 何とか俺たちは竦む足に喝を入れて、正面の三人組に目を向ける。玖珂の言いたい事があるのは分かる俺も疑問に思ってるからな。


  「アレ? 陛下、あの少年……」


  「ほほほ、面白そうですな」


  「まーだろうね」


 相手もまた、髪をいじりながらこちらの姿に驚いている。まぁそうだろうよ。こんな『透明感のある紅い髪』なんてそうそうありえないしな。

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