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捕り物帳 食い逃げ編

 「それで? お土産はこのお肉って訳だ」


 当然と言えば当然だがあの後、俺たちは皆の元に戻った時に待っていたのは説教だった。テレザと一緒に何故、離れたとか心配したんですよ等の延々と続くかと思ったその説教を何とか止められたのはやはりお土産の効果だった。


 ここに来て飯を食っていなかった事と冷めると味を失うホカホカのお肉であった事が幸いしている。冷めると不味くなる旨を伝えた時に渋々と言った感じで近くのベンチに座りお肉を食い始めた。ふふ、雪がシンシンと降る石畳の町ではやはり、暖かいモノの誘惑には勝てなかろうて。


 「ふー、はむ、そう言えば今後の予定について教えとく、ホテルに予約したら三泊二日滞在だから」


 「えっ期限があるから先に進んだ方がいいのでは?」


 一応、二か月くらいで目的地に皇国軍が来る予定である。その事を考えたらいくら予定より早く着いたからと言っても急いだ方が良い。テレザの意見は確かに正しい。大変申し訳ないが、今まで遊ぼうと言っていた奴とは思えない意見だ。


 しかし、俺『たち』はそのエニグマの言葉に静かに聴いていた。正直、『前回の事』を思えば少々思う事がある。それはきっと玖珂もいっしょなのだろう。静かに聞いて……


  「おい、玖珂は何所だ?」


 そう思い、後ろを振り向くと玖珂がいない。何時の間にか消えている。


  「……レイ、君が探しに行って来い。僕たちは先に予約済ませておくから日が沈み始めたら合流だよ」


  「えっならそうだテレ」


  「そうですね。それではレイさんお守り、ではなくて玖珂さんのお世話お願いしますね」


  「ザー、おーい!」


 頭を抱えて言うや否や荷物をテキパキ片づけて走り去っていくエニグマとそれに追従するテレザ。お前らそんなにも玖珂の暴走は苦手かい。


 背中を見守るしかない俺はどうしようもなく途方に暮れる。居場所を告げなかったという事は、玖珂を見つけて気配を察知し案内させないと俺は合流し辛い事を意味している。


  「あいつら、嫌な手を考えやがって」


 咄嗟に考えたにしてはそこそこいい手だ。欠点があるとすれば俺があいつを見つけられるかわからない事だろう。うん、あいつらには関係ねーな。色々と悩む事があるのだが玖珂を探すしかなくなった。


 玖珂に関しては何処にいるのかは分からないが多分、遠くに入っていないだろうと思いたい。


 昼位になった青空は今も俺を祝福している。出来る限り早めに見つけて俺もこの町探索してーなぁーとりあえず荷物はいらない物はあいつらが持って行った事に感謝しながら探索を開始した。


 玖珂を探索してそこそこの時間が経過する。石畳の振る雪をキュキュと踏みしめて天を仰ぎ雪を握りしめる。儚いその存在は生の在り方について考えさせられる。


 ついでに階段が多くて疲れる。気候も含めて老人住み難いわ!


 これも大戦の名残りであり元々はデコボコした山林地を開墾した故の弊害だそうな。それでもさっきから何度階段を上り下りしただろう? こんな町の形からか足腰は強くなるらしく腰の曲がった老人は見た事がないのが唯一の利点だろうか? 早くアイツ探し出して一休みしたい。


 うん、本当にアイツいったいどこにいるんだろうね。何処にもいないんだよなぁ……散々歩き回ったが何処にもいなかった食べ物の店を重点的に回って店長にも聞いてみたのだがその様な人は見たことないと言われる。  


 「あいつ逃げようと思えば完璧に逃げられるしな……」


 そのせいか忍者もかつてはあいつを捉える事が出来なかったのだ。俺が努力したからと言って早々に捕まえられるとは思えない。


 延々と探し続けてもう完全に昼だ。いったいどこにいる…… 頭が痛い不自然なほどに。


  (アレなら貴方の後方にイルよ)


 原因判明、そして居場所も判明、後方の階段上の店にいるらしい


  「なんで昼間に話しかけられるとか、知らせる為に俺に頭痛を起こしたのか? とか、色々言いたい事があるけどサンクス」


  (どういたしま)


 途中で切れた辺り、あれが限界ぽいが話しかけられると頭痛がする辺り何か無理でもしたのだろうか。


  「それをこんな所で使う羽目になるとは」


 悲しい気持ちが少しある。が使わなければそもそもあいつを見つけられなかったことを考えれば十分利益のある行為だ無意味じゃない。


 そう信じていないと頭痛のかいが無い。そう思いながら後方に歩を進める、息を殺す必要はないただ全力で走り抜ける。どうせ気づかれてるし。


  「んっむー!!」


  「お客さん、お金! おい、取り押さえろ!!」


      「「「ヘイ!! 店長!!」」」


 何か後ろの店からドタバタと言う音と悲鳴、怒号が聞こえる。言葉になってない奴の声が聞き覚えがあるせいで理由が分かるのが辛い。


  「振り切った、逃避成功率二五パーセント、今!  未来へフライアウェイ!!」


  「成功率二五パーセントしかないならおとなしく捕まれ!」


 窓をぶち破り優美に飛び出る玖珂、背景を気にしなければその姿は映画のワンシーンとてもカッコいい情景だった。


 店内正面の四つの窓ガラスのうち俺からもっとも遠い窓ガラスをぶち破り外に出ようとしていた玖珂を『縮地が崩し・縁』で捉える。


  「なにそれずっこい。何時覚えた! そんなホーミング加速」


 ジタバタ暴れるので羽交い絞めにして何とかと抑える。ぶっつけ本番だが上手くいって良かった。


  「この技は剣の知識と最近起きた覚醒の影響で得た知識を自分で混ぜて作ってみた俺なりのアレンジだよ」


 そう知識や力ばかり他人の影響下で向上、覚えてしまう自分の戒めとして、それよりなにより男としての矜持として最低限、得た知識で自分なりの工夫をしていきたい。そうあの戦いの後に思ったが故のこの自分なりの工夫だ。


  「そーなんだ。流し素麺を卒業したいとレイ君は思ったわけですな」


  「誰が流し素麺だ! 誰が!!」


  「だって流し素麺じゃん 状況に他者の言葉に、流されてこの世界に来て、今だってあの国に行くんでしょ? 何、恥じることは無い! 君は今それを少ーし卒業したのだから!!」


 意味深な表情をこちらに向けたかと思うとその後こちらに指を向けて意味不明な事を口走る。言い方が解り辛いが言いたい事は分かってしまう。気にしてる事を突かれついつい反論してしまう。


  「お前だって、他人の強制でこの世界に送られたのは一緒だろうが!」


 その瞬間空気が変わった気がした。ついつい触れてはならない事に触れてしまったのか? と咄嗟に思ったがどうも玖珂の表情を伺うと違うように見える。これはどちらかと言うと、奇妙な者見るような目と……自嘲? その様な表情がない交ぜとなって俺の瞳に映される。


  「そうか、レイ君はこの世界に来る正式な方法で来てないんだったね? それじゃあその勘違いも仕方ないのかな?」


 この頃なんだろうか、こいつらしくない雰囲気が強くなっている気がする。


  「おい、k」


  「ようやく、出て来れた。おい食い逃げ犯そこで待ってろ」


 玖珂と俺の間に何処か空しい静寂が流れ出そうとしていた時に、それを破るかのように怒号が響き渡る。声の方向を振り向くとそこには傷だらけの男性達が複数名存在していた。


忘れていたがコイツ店の中で何かやらかしていたんだったな。それを確認した玖珂はぎょっとなって逃げようとする。


  「……うわ、やっべーあばよーおっちゃーん、レイー放して?」 


  「ここで放す、理由がねーだろ」


 当然だが放す理由もあるはずなく玖珂は御縄に着く事となった。聞いた話によると店を食べ歩いていた玖珂がこの店で飯を食っていた。俺が近づいてきたことに気づきついつい料金を払わず逃走。その後、店員に追われる過程で物に躓く、自分は回避したものの店員は追っているので盛大にこける。物にぶつかる。終末的な店内、居心地悪くなり窓からTakeoffという訳だ。


  「よし、全然疑問に思ってなかったけどお前が悪い」


  「勘弁してくでせぇ、お役人さまぁ」


 意味の解らない寸劇をし始めたので店員に突出し、誠意を込めて頭を下げ、謝罪をする。


  「すまない俺の仲間がどうしようもない事をした」


  「あーいや俺達にもこの店の惨状には責任あるからなぁ……」


  「「「そうっすね、店長!」」」


 どうやらとてもいい人達らしい事は分かった。どうにか謝罪と賠償金を支払い手打ちにしてもらう。後片付けも手伝った。そこまで時間が経過しなかったのは幸福と言えるだろう。ただ、何かその際、玖珂が渋々と言った感じだったのは酷く疑問に残るがアイツの財布から出させる。


  「おう、それじゃあな坊主、嬢ちゃんこれはおまけだ おい! 野郎どもあれ持って来い」


  「オス! 店長!!」


 店長が大きな声でそう言うと綺麗になった店の奥からとても豪勢な食べ物が現れる。


  「をー 豪勢なラーメン!!」


  「えっこの様なもの頂いて良いんですか?」


 正直玖珂が荒らしたのだから囲まれて殴られても文句は言えないそれなのにこんなものを用意して頂けるとは。


  「応よ、多く包んでもらったし、こっちだって悪かったんだしよ! なぁ、てめーら」


  「うっす、店長!」


  「そんなこ……いえ、ありがとうございます」


 ここで謝るのは無粋と思い美味しくいただく。濃厚なスープがメンまで染み込んでとても良い料理だった。


  「美味しかったな」


  「他の人達、基本店長しか言ってないよね」


 他にもらった御握りをパクつきながら玖珂はポツリと言ってはならない事を口走る。必死にスルーしてた事をわざわざ言われるのは酷く業腹だが、あれは本当になんだったのだろうか。


  「言うな、あの中に綺麗な男女もいた事の方が俺には驚きだ」


  「モデルで食っていけそうな奴らだった」


 なんであの店で働いて居るのかわからないほどに美形だった人も複数いた。まぁ半分以上はマッチョな男性だったがあの人達もガテン系の仕事の方がいいんじゃないだろうか?


 俺たちはそんな失礼な事を事を話しながら何処か目的地を決めずに歩み始めた。

事情があって再アップ


捕り物帳は余裕があれば別のモノもあげられるだろう

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