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覚醒 奥底へ

 後方から圧倒的な高温が体を襲う。熱の発生源はこちらの近くでしかないはずなのに身体の露出している部分がまるで焼ける様に痛い。


  「一体どのような魔術使ったんだよ!?」


 大きい異音が鳴り出したかと思えばこの高温だ。どの様な状況になっているのだろう。発生源分かりきっているのだが……


  「とりあえず、好機を生かすべきだと僕は考えるんだが!!」


  「確かにな!アイツラ二人が戻ってくるかもしれないし早めにも倒していてやるか」


 エニグマの言葉に俺は頷く。大きな異音と共に現れた高温の熱波の二つは俺たちに思いもよらない好機を与えてくれた。


  「どこだぁあ!!」


 そう、目の潰れていた敵の感覚と聴覚そして、嗅覚に少なくない影響を与えてくれたのだ。肌の触覚は高温で判別のし難くなっているせいで剣の握りも甘くなっている。嗅覚もこの嫌な臭いのせいでこちらの匂いも解り辛いだろう。目が潰れた事によって強化されていた聴覚も爆音で聞きがたくなったというのもよい。


 今、こちらの位置を敵が完全には分からずにいる。そのお蔭かある程度距離を取ればこうやって作戦をする余裕すら生まれている。それでも剣を振る時はこちらに剣が当たる範囲内なので油断はできないが。


  「ベルセリカの奴とうとう本性を現して荒れて来たなぁ……」


  「あの人の名前初めて聞いたよ」


  雑談をしながら見極める。油断をすればカウンターを食らう程度には彼女の攻撃センスは恐ろしい。


  「時間をかければ相手は有利になって行くよな」


 当然だが、純性の魔族は傷の治りも早くなる。後、数分も時間をかければ大体の傷は無くなるかもしれない。まぁどうやら……


  「こちらもですよね」


  「お股ー」


 足音が聞こえ、振り向くとテレザと玖珂が左くらいから出て来た玖珂は土匂いと髪先がチリチリ焦げた状態で、腹部に二発の焦げた跡があるのは気になる。よほど激しい戦闘だったのだろう。


  「玖珂はともかく、テレザ良く来てくれた」


  「兎も角とはなにさ! 私の大活躍でさっきの戦いは幕を下ろしたというのに!!」


 俺の言葉に反応したのか、こちらにわざわざ近づいて来てやたらうるさく自己主張し始めた玖珂。ポカポカ殴られるのは煩わしいというレベルではない。


  「ねぇテレザ本当?」


  「残念ながら、本当です」


 疑問に思い問いかけるエニグマに顔を伏せながら答えるテレザ。それには明らかにそれだけではない無いものが詰まっていた。


  「へー、余裕じゃないか!?」


 当然と言えば当然だがあの程度で耳などは完全に潰れている筈もなく、ある程度聴覚を取り戻したのかこちらの言葉に反応し始める。こちらは四人揃った事を考えれば動揺しても可笑しくないはずなのに何故か顔には余裕の色を浮かべている。


  「何かありそう」


  「ああ、戦闘狂だからこの状況にワクワクしている。って訳でもなさそうだね」


  「ああ、いや。そろそろ」


 不敵な笑みと共に剣を構え始める敵に俺たちは警戒する。

 

  「遊ぶ必要も無さそうだなー」


 空気の澱みを感じる。淡々と話す言葉に不気味な物を感じる。俺たちはその不気味さに最速の攻撃を開始する。


  「と思ってね!!」


 一撃目を回避し、一瞬で炭素と化してる『何か』に近づき切り捨てる。


  「命、約束通り頂くわ」


  『もういい、仲間の元に行く。果たせよ約束を』


  「ええ……」


 その瞬間、何かしらの思いを炭と交わしたような気がする。もしかしてアレって


 確認するように後方を見る。テレザと玖珂は言い知れない表情で追撃している。


 『彼』の変わり果てた姿の命を奪った時、ベルセリカの左手の剣から何処かで見ただけれどもそれとはまったく違う禍々しい力場が展開される。

 本来なら俺たちがそれを止めるなら最大限の攻撃をするべきであった。事実、最速の攻撃は全て弾かれる。それでも俺たちがしなかったのは分かりきっていたからだ、この障壁を敗れるだけの威力の攻撃をすれば準備の終わった敵の攻撃に叩かれるだけだと。故にせめて煙幕と牽制として攻撃したわけだが当然、弾かれた。

              接続アクセス!!


  「霊器機関レイスユニット起動、ソウルエンゲージ接続!!」



  「そういえばお前も魂蔵兵器を持っていたな。見せてこれがお前と違う。|魂蔵兵器(リインカーネーション・アーカイブスウェポン)の真の使い方だ!!」


 その魂の循環と脈動はかつて自分自身も体感した感覚そのものだ。客観的に見るのは初めてだがあんな風になっていたのか。


 黒い魔力の本流が目に肉体に、身体の損傷した部分に補う様に巡っている。だがそれ以上に『なにか』が俺と根本的に違う気がする。


  「ねぇ、『アレ』何かヤバい」


  「あれはレイさんと同じ……」


  「一緒にするな。これがこの武器の運用の完成系。完全なる魂の共鳴だ! 冥王の左手タナトス・アポトーシスよ。我が魂と共に彼の者を貫け!」


 刹那、まさしくその言葉の通りだった。


     銀の閃光が大地を焼き、空を切り裂く。


       耳が音を認識する『前に』俺たちの身体はボロボロになった。


 音を置き去りにした一撃は、ただの『一撃で』俺達全員は瀕死の重傷となる。周囲を確認してもまともな姿をしたものは今まさに敵対していたもの以外誰もいない。


 一応、行動に支障が出る欠損こそないものの動かせるかと言われれば無理であるとしか言えない状況だ。


 皆がマトモに動けない。


 見えない、感じない、聞こえない攻撃は、玖珂でさえまともに反応する事が出来なかった。 

  

 身体能力の向上があるとは自分の感覚で分かってはいたがそれが他人が行うとなると思うものがある。しかも、最初っから自分よりも身体能力が上の相手が使うと改めて実感させられる。


 足を引きずり、なんとか立とうと試みる。嫌な音を奏でる足を無視しながらも敵を睨みつける。


 「いい感じね。順調に機能している」


 剣の方を見ながらこちらを眺めるベルセリカ。口調も女性口調になっている辺り余裕を取り戻しているのだろう。戦闘中は基本荒い口調だったし。


 ゆっくりとこちらを近づく、先ほど地面を吹き飛ばし草が剥がされたこの空間でコツコツと言う足音はまるでこちらの命を削るためのカウントダウンのように聞こえる。


  「俺は……まだ動ける。来い!!」


 剣を掲げる手は重く、剣はぶれている。


  「ふふ、また後でな」


 それでも覚悟して相手に向き合うが俺の横を通り過ぎるベルセリカ。その目はこちらを見ておらず何かしらの覚悟を秘めた目であった。


 ゆっくり進んで俺の後方で音が止む。何とか後ろを振り返り、確認する。その場には玖珂がいた。身体を九の字に曲げて横たわっている玖珂。目だけでもとベルセリカを睨んでいる姿はいつもと違いどこか痛々しい。


  「あの炭素と何か約束でもした?」


  「ああ、アイツがどう思っていたのかは知らないけど私は仲間だと思っていたよ」


 どの様な状況でも玖珂は力強く相手を見て行動する。逃げ切れないと分かっていても挑発だけは忘れていないその姿勢は今では立派だと思う。


 だけど、それではお前……


 身体ようごけと身体に命令する。良く周りを見ていればエニグマもテレザもそうだ。


 ゆっくりとだが確実に振り下ろされそうな剣を前に玖珂は何時もよりも強気にベルセリカを睨む。


 テレザは広域の回復魔法をかけようとしている。それをも一瞥しながら気にせず剣を振り下ろす。


  「確かに動けないならそれも良い選択だ」


 だが、遅い。そう言う様に剣を振り下ろす。気力を振り絞り玖珂の元に駆ける。健常の状態でさえ間に合うはずもないと分かっていてもそれでも仲間を切り捨てる事は出来ない。


  「頼む・アルヴァ!! 力を貸してくれ!」


 本来は秘匿すべき情報をつい叫ぶ。自分の死以上に仲間の死が辛いのか、逸る物をせき止めてでも、本当にそう思っていたんだ。その一言まで


  「消し飛べ」


 その瞬間、爆発音と共に周囲が消し飛ぶ。


 肉片が散らかり雨となって降り注ぐ


  「生臭いわね」


 仲間を殺した奴は嫌そうな顔でそう言ってまるで仲間だったものを生ごみの様に拭い去る。


  「う、そ」


 回復呪文も唱えるのも忘れ、唖然とするテレザ


  そして俺は、


            接続アクセス


  『求めよ、そして勝利によって、祝い祭るがいい この我を!!』


 謎の声の元、力を得た

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