side アヴェンジャー
「テレザ、アイツを上手く追い込む、設置型の魔法とかできる?」
「でき、ますけど、捉えきる事が出来ますか?」
「出来なきゃやられる程度に相性が余りよろしくないね。このコンビだと」
レイ達が一進一退の攻防を演じている時、こちらもまた、一進一退の攻防を演じていた。もう一人の敵、ベルセリカと違い、手品が完全に割れている相手である事、一度完全に退けた相手である事が災いして少女たちは分断された時でも警戒しながらも直ぐにあちらを助けに行くつもりだった。だがしかし、
「ふん、お前の能力と私は相性が悪いがお前自身と相性が悪い訳ではないではない!」
「今日は何時になく饒舌だっね!」
言葉の言い終わるか否かと言うタイミングで忍者は玖珂の目の前にきた。
地を蹴る音に不意の悪寒を感じ気配のブレを感知した玖珂は次に行くと感じる地点に銃弾を放つ右手の銃による『二発』の弾丸が忍者を襲う。
「ハッ」
「まだです!」
掛け声とともに切り払われる銃弾。そして忍者位置に発生した魔方陣より炎の柱を難なく躱される。
「この技は……忌々しい」
直径十メートル高さは高層ビルに匹敵する大魔法の一つ『炎の柱』確かに大魔法の中でも初心者用という程度に使いやすい業だがそれでもこうも簡単に避けられるとは思いもしなかった。
難なく躱した大きな炎柱を睨みながら、吐き捨てる様に忍者は言う。彼にとっては仲間の大部分を奪った技だ到底許せるものでもない。
客観的に見て、その忍者の行動は明らかに隙だ。それで彼女たちは攻撃に移れない。テレザは大魔法を使った硬直があるというのもある。
そして何より、攻撃の起点となっている玖珂はその『勘』で分かりきっているのだ。自分一人だけでは攻撃しても必ず躱される。今はテレザと一緒に攻撃しなければ当たる可能性すら0なのだという事を。
「やっぱり、私たちでは相性が悪い。攻撃が線になりがちなテレザに銃撃であるが故に点になりがちな私じゃあ……」
「銃弾とほぼ同速かそれ以上に高速で動く忍者さんはキツイですか」
そして円状の左右に視辛いように分断されるている為、無作為の攻撃が撃ち辛いと来ている。
「打撃武器かナイフ辺りも買っとけばよかった」
玖珂はポツリとそう呟く、元々相応に力があり、特殊な武器でもあるレイの二刀流と違い玖珂の場合はそう言うかさばる武器を持つとデッドウェイトに成りやすい。
それでも遠距離だけでは心もとないのに買わなかった理由は正直扱ったことないのと、重いのを持っていきたくはなかったので買った方がいいと分かっていても買おうとはしなかった。
流石にナイフ程度では逆に返り討ちに合っていた可能性の方が高いが現在隙があるのにも関わらず攻めあぐねている現状を鑑みて、買っておかなかったことを後悔している。
「次行ける?」
玖珂はそう隣にいるテレザに問いかける。かつての戦闘から計算して発動した呪文による反動は無くなり自由に呪文を使えるようになっているタイミングだと彼女は考えたからだ。
「はい! ユミさん、行けると思います!」
手をぐっぱーして調子を確認し、ガッツポーズして行ける事を玖珂に伝える。呪文を唱えられるようになってこれで何とか勝算がゼロではなくなったと二人とも考えるようになった。
「フム、準備は終わったか……」
忍者は、炎柱が掻き消えた後に、テレザ達の所を見ながら聞こえる様に言葉を発した。
「やっぱりこちらを待ってたんだね。どうして?」
「忌々しい魔族に、無理やり案内されたのだ。こうなってしまっては……今は、己の心にも従って行動させてもらう!」
「そんなに仲悪そうなら、潰し合ってくれてれば良かったのに」
レイ達に、仲間を殺されたというのもそうだが、その時の怪我が回復した途端、ベルセリカとは出会ってすぐに戦闘となり敗北した。その後は、犬猫のように扱使われ、任務の継続が困難となってしまった上に、訳の分からない空間に監禁されたのだ。
忍者にとっては口には出さないもののこの状況は果てしなく不本意な状況である。であるが故についつい感情的になりがちであり、倒せると確信できる状況下でついつい油断をしてしまいがちになっている。
つまり、アイツもアレできちんと人間で感情のある奴なのだろうと玖珂は忍者の言葉と行動から察した。覆面で顔が分からないが目は何処と無く怒りを等を含む感情を宿し行動もある程度の遊びが混じるようになっている。
「それでも根本的な部分では油断も遊びも無いのは流石と言うべきか」
玖珂は自分に向かってくる忍者を何とか自慢の『目』と『勘』で躱しながら攻撃を当てていく。あちらの動きを全て認識し、こちらの動きに合わせて攻撃しているというのに全然有効打にならない。
「ねえ、テレザ?」
「なんですか、ユミさん!」
ナイフで攻めてくるので何とか躱して銃を撃つ。リロードの隙を魔法で援護してもらい相手を死線まで越えさせない。『何故か』忍者の装備が貧弱になっている事もあり決して負けの決まった戦いでもなく、
「一応倒す手段あるけど聞く?」
「何ですか?」
このままではジリ貧になる。多分忍者の戦法もその辺りなんだろう。忍者の行動は感情が籠っているせいで誤認しがちだがある一定の行動理論がある。その隙を付ければ。そう、忍者の行動は一定の区画まで踏み込む、退けられる罵倒するである。今までこっちの出方を見守っていたのも不用意な行動する事で合流してしまう可能性を防ぎ、こちらの体力や銃弾の消費を待って攻めているのだろう。
それを促すための行動が明らかに感情に基づいて行われているだけで故にパターンの最中にいい感じに妨害してやればあるいは……
今現在、煽りフェイズであるはずなので不用意に合流しようとしなければ、だが少し余裕があるので作戦会議。
「何とか後方に誘導するのでこちらが合図したら薙ぎ払う系の魔法を忍者に当てて欲しい」
「へ、多分外れると思いますよ?」
テレザの魔法には一応あるし、有効ではある。試そうと思ったが明らかに早い忍者の動きとジャンプ力に隙が出来てからではないと反動の事もあり試す事すらしていなかった。
「それでいい。できる?」
「ええ、できます」
玖珂がここまで言うには何かあるそう思ったテレザは二の句は継がずに返事をした。こちらも消耗を待つ忍者の行動を凌駕するには玖珂の策に欠けるしかないと思ったからだ。合図を玖珂に教えて貰ったテレザは手を握り、前方の忍者に向き直る。予想があってれば次は攻撃フェイズ。どうにかこちらの策が通じるか
「受け取れ!」
予定通り、忍者はこちらに攻撃してきた。左腕の短刀による横薙ぎによる攻撃を『攻撃前に』察知していた玖珂はそれを首を曲げただけで躱し、左の銃弾を浴びせる。
「それも忌々しい……」
それはまるで蜃気楼のように銃弾を回避する。直進と少々左に曲がっているダブルバレルは本来なら命中させ辛い代わりに回避も不可能な物のはずなのに零距離射撃ですら流石に剣で弾かれなかったものの横っ飛びで回避された。
「ち、これでもまだ当たらないなんて!」
「俺のスピードと目は誰にも負けぬように鍛えてある『目』に関してはお前の方が優れているようだがな」
「射撃は昔っからの趣味でね。目は、現代大和人でもいい方だと自覚くしている!」
高速の銃撃とそれを回避する忍者一進一退の攻防だがリボルバー式の欠点かどうしても十二連装填式リボルバーでも六回で弾切れ再装填となる。全弾再装填に半秒実際の戦闘でそれは長いのか短いのかは玖珂には分からないだろう。しかし、速度こそ誇りとする忍者にとっては十分付け入る隙である。その時間を当然、忍者は見逃すわけがない
だからこそ、忍者の『前を』通り抜ける。
紙一重の邂逅は忍者にとって思いもがけない物だった。
人間とはどれだけ鍛えても恐怖心は拭えぬもの。事実この戦いの時だって彼女らは攻めるべき好機に足を竦ませていた。
演技ではないその行動をこの戦いで何度も見てきた忍者にとって、銃に弾を込めるというものは完全な隙。その状態でこちらに向かってくるのは完全に予想外だったので驚き、相手と自分の速度の関係もあって攻撃が遅れる。
「まさか……私の速度を利用されるとは、な」
しかし、それでも前方には魔法使いがいる後ろには標的がいる為こちらに対して大規模の攻撃はできない。それは忍者にとっては相手の攻撃が一切当たらずになぶり殺せるという事を意味する。後ろからの挟撃も考えたがそれでも微細な音から探知可能だ。
お前たちは我らの身体能力を侮った!
彼は、心の中でほくそ笑んだ。彼女たちが聞こえていないと思っていた小声での作戦会議。忍者である彼はきちんと聞こえていた。作戦通りに行動し誘導する。もしもの可能性を減らす為に攻撃しなかったのだ。
相手の思惑を超えた行動に対して驚きこそしたものの予定は変わらない。相手は彼を後方に下がらせることで味方に当てない様に広範囲攻撃をするという作戦も肝心の標的が後ろでは使えまい。
そう彼は心の中で笑いながら彼は方向を転換しテレザに向かう。この間、約一秒、『テレザにとっては』予想外の状況であり、一瞬の諦念が身に過ぎる。ここで死ぬその諦念が黒いの刃がその身に迫る。反撃をしようにも前方にユミがいて尚且つ広範囲の攻撃をしようと呪文を唱えている最中だ。小規模の攻撃すら取れない。
「やられる!」 「やれる!!」
対面した二人が互いに思いが交錯する時、今まさにその時、鼓膜を大きく揺らす音を響かせて、大地に空砲が響き渡る。それは事前に取り決めていた合図。本来なら後方に忍者を誘導した時にするはずの合図であり、現在の状況では二人どころか確実に合図を出した玖珂に当ってしまう。
それでも、合図を出したら発動しろと言われたのと、忍者が迫っているのもあって、その合図に従う。
「な、後ろにいるのに合図だと!!」
「知りませんよ! 『メギド・ランスヴァージョンB!!』」
手を構えてその手からフレイムランスを薙ぎ払う様に振り回す。それはまるで特大の炎の槍を手に持って振り回す。直径三十メートルの長大な炎の槍は周囲を無条件に焼き尽くす。
焼滅、正にその言葉が似あう一撃必殺の技
「まさか、味方ごと焼き切るだと……!!」
魔法こそフレイムランスのバリエーションだが、威力、射程共に桁違いであり確かにこの攻撃を放てば周囲の被害が出ると言ったのも納得の大魔法である。本来なら当然、真正面にいた玖珂など生きている訳がない。
胸に切ないものがある。本来なら敵を倒したので回復が終了次第すぐに援護に向かわなければならない。なのに胸を締め付け呼吸ができない。色々な所に後悔と言う名の大きなものが詰まったようだ。顔が冷たい視界がぼやける。
「ごめ、えっぐ、ごっめんなさい! 私の……私のせいで!!」
尊い犠牲だった。今はただ、その事に浸らせてほしい。人の焦げる嫌な臭いが鼻に刺さる。それさえも、自分を攻めたてているように感じるのは決して気のせいではないはずだ。手が震え顔に当てる事すらできずにいる。一度でも座れば立ち上がれないだろう。
「見守っていてくださいねユミさん!!」
だからこそ、今彼女は全身に喝を入れて前を向く。大魔法を使った反動はそろそろ無くなってきた。玖珂の分まで頑張ろう力強くガッツポーズを決めて顔をふく色々な液体を払ってかつて玖珂がいた場所に目を向ける。大地に合図を出したせいなのか大きく、深くえぐれた地面とそこに存在して然るべき抉り出ているはずの土は焼失している。
「今は安らかに眠っていてください。ユミさん」
文字通り墓穴になってしまったであろう地面の穴に手向けの言葉を贈る。地面を見ていると視界が歪むそのせいか地面の色とは違うものが見える気がする。
「鼓膜と手が痛かった。痛かった!! ようやく耳が治ってきたな。……え、寝てていいの。じゃ、ヨロシク!!」
テレザにとって幻聴であって欲しい声が聞こえる。死んでいたのが錯覚だと分かり、生きていてくれたのは嬉しいのだが、それが分かった瞬間の玖珂のセリフと行動は、あまりにも雰囲気をぶち壊しにしてくれる。
何時も余裕そうにしているのに左手が震えて、耳辺りから血が流れている為、本当に命を懸けて行動してくれたのは分かる。きっと今まで回復に努めていたか気絶でもしていたのだろう。
だが、それでも玖珂のその行動は彼女テレザにあの時本当に当たっとけばよかったかもなぁと思わせるのに十分だった。御座引いてもう寝てるし。
とりあえずテレザは手をかざし玖珂にヒーリングをかける。そして『火球』を二発ほど食らわせて、レイ達の援護に向かう。
その影で人の形を保っていない物体が彼女たちを見守っている事も気づかずに……
接射よりも零距離射撃が近いので零距離射撃で




