戦場に舞う狂嵐の剣 ベルセリカ
接近する銀色の閃光の一撃を何とか弾く。その速さこそ、忍者には及ばないが一撃一撃の威力と二刀流からなる手数の多さが驚異の一言と言える。
正直、弾けたのは運だよな。後あからさまな直進だった為、初撃は防ぎ二撃目で咄嗟に弾く事が出来た。
「挨拶にしては過激じゃないか?」
「別に大丈夫でしょ。挨拶に軽めに撃っといたんだからさ?」
そう言いながらこっちに詰めはじめる暴剣とその暴剣の横っ面に光弾が叩き込まれる。
「なんで俺に!」
「多分、君の血筋に問題でもあるんじゃないかな?」
茶化してくるエニグマに文句でも言おうと思ったが余裕がない。横っ面に魔法食らわされた体勢で吹き飛ばされつつこちらにケリを入れてくる。威力こそ低いモノまともに食らえばこちらの体勢が崩れその隙に本命が来る。
「だー、野生児かよ」
「ふふ、君は面白い。とても弱いけど何処か、わが君を彷彿させる。そんな君を切り刻めたらさぞ快感なのだろうよ!」
独り言にちょうど被って矢鱈滅多ら物騒な言葉が聞こえてきた。言った本人は後方に下がってこっちへの攻撃の姿勢を整えているがとりあえず、父さんに似ているから攻撃されている事だけは確定した。嫌な意味で。
「エニグマ、お前はまだ余裕がありそうだから聞いておく、テレザ達が援護に来ない理由聞いていいか?」
追撃に移る過程で後方のエニグマに状況の確認をしておく、嫌な予感しかしないけど!
「忍者がこっちに来ない事から察してくれ」
「だよな」
つまり元々の標的+αと忍者は戦っているわけね。納得したよ。
確かに、銃声とそれを弾く刃の音が聞こえる。その攻防は激しくあっちからの援護は期待できそうにな
「それ! 六道流初伝・芯突が崩し、私式・両角山崩しってね」
あちらを耳で確認した程度で隙と思われたのか。スタートダッシュの技、ゼリウスさんもやっていた父さんの技の二刀流バージョンが襲い掛かってくる。
「ちっ!」
腹部と顔に目掛けて距離感も図り辛い弧の曲線突き、ご丁寧に左右どちらかに逃げてもいいように微妙に右手は若干右に左手の剣は若干左にずれていた。駆ける速度も俺以上、これを回避する術はない。エニグマも相手が早い事もあるけど俺に近すぎて光弾の当てるタイミングを掴み辛い状況だ。
なら!
剣を大地に突き立てて、楯とすることで大地に衝撃を逃がし突進付きの攻撃を防ぐ。その分次の回避行動をとれなくなるがこれしか方法は無い。
頼む剣よ、保ってくれッツ!
山崩しの際の加速と剣同士の激突、いかに砂も無く草さえも矮小にしか生えていないとはいえ衝突の際の火花と主に風で視界が塞がる。
「大丈夫か! レイ!!」
「へぇ、やるじゃん」
この一撃の結果は単純だ。左右の剣での芯突は本来の技よりも多分だが、威力が下がっている。しかしその分回避行動がとり辛く剣を楯にして防ぐしかなかった。
客観的にはマヌケなポーズにも見えるのに実際は逃げづらい業はまるで空手の山突きを彷彿させる。剣を大地に突き刺したというのもあるが、先ほどの山崩しのダメージがある程度存在し、握力が若干弱くなっている。そのせいか剣を抜くタイミングが少し遅れた。その行動見て動きを封じたと思ったのかすかさず二撃目が叩き込まれる。
「更に、更に! 六道流私式・乱れ花!」
二刀流による袈裟切りとほぼ同時タイミングの逆袈裟切りの四連撃、正直最終的にはほぼ同時に一か所を攻撃する業。
「ま、だっだー!!」
だったのが幸いしたのか、地面にさして固定化されているのだからそれを飛ぶための棒代わりとして柄を握り相手の背面までジャンプする。そして着地の反動を活かして剣を引き抜く事に成功する。何とかジャンプできたし、何とか躱し切れたがもしも違う場所が切られていたならあの回避の方法でも死んでいた。
そもそも威力からして当たってたら死ぬわってレベルじゃねーぞ
相手の背面を取ったので切り返そうとした時につい、元々自分がいた場所にも目を向けてしまう。逆袈裟切りの際に生じていたのであろう地面にある二の字はそれだけ威力があったという事の証明でありとてもではないがマトモに受けていた時の事を想像したくない。
「それ、隙だからね」
攻め手となったことによる焦り、そして攻撃箇所を確認してしまった時に出来てしまった油断をつかれる。敵が逆手に持っていた剣を背中の方に向けて俺に刺さるように配置されたのだ。
平時ならともかく斬りかかって行く最中に方向転換なども出来る筈もない。
致命傷といかずとも、ある程度の傷を負う行動スピードの速さからそれを起点に攻勢に移るつもりなのだろう。足よ、どうにか避けてくれぇえ!
踏みしめた左足に力を込めて回転する。これで何とか躱せるはずッ!
何とか敵を中心にして弧を描きながら相手の左側に着地する。相手の左手はまだ動かし辛いはず。反動を活かし、握った剣で横なぎにする。これで、最後!
「残念だけど、これで終わりかな!」
ある程度体勢を立て直していたのか中腰になりながら蹴りが俺の腹部に入る。完全に体勢を崩してしまった俺に、今度こそ左腕の剣が襲い掛かる。技術などいらない最速の縦斬。俺の命はここで終わるのかな?
「君がね!」
その言葉と同時に視界が光で塞がり、光弾がこちらに降り注ぐ。俺がちょうど地面を背にしている所だから正面から光が降り注いで来たのは驚くというレベルではない。
が、相手も予想外だったのか、左によろける様に回転しながらなんとか頭部への被弾を躱す。
あれほど勢いの乗った縦斬の中でよろけながらでも左に回避できた辺り恐ろしい運動性能だと言える。がそれでも間違いなく相手の体勢は崩れているはずだ。今度こそ追撃をする!
「色々と危険だったけどありがとう」
「そんな事より、早めに攻撃しよう」
正面にいるエニグマにお礼を言いながら、斜め左で体勢を崩している敵に向かって斬りつける卑怯ではあるがいちいち手段を選んでいられるほど実力も無い。
「後ろからとはね」
膝で立った状態で体勢を整えながらこちらの剣戟をガードする敵。あの状態でここまで攻撃を裁けるのかよ。不意打ち、体勢崩し、強襲、どれをとっても圧倒的な野生の勘と体幹で避けられあるいは防がれてしまう。それでいて相手の方が身体能力も上だ。これだから戦争経験者って奴は!
この世界で最も強い武器を持つ戦士と長い時を生きるベテランの戦士、この二人がかりで戦っているというのにこちらの方が圧倒的に不利な辺りに本当に相手が桁違いな実力者だと感じる。
しかし、何よりも恐ろしいのは仲間と分断されてあちらの行動が分からない事だ。それにより集中力を乱される。あいつらは
「集中を乱すな!」
「遅い!」
「ウソだろ! 膝立ちの状態から!?」
分断されていた仲間をつい確認しようとしてしまい鍔迫り合いの状況から足払いをされる。なんとか耐えて、鍔迫り合いの状況こそ変わらなかったものの体勢は崩れて相手に前のめりの状態となり満足に剣に力が籠められない。
「なん、とかッ!」
「転ばなかったのは賞賛してあげるけど、どのくらいもつのかなぁ?」
そう言ってじりじりと、立ち上がろうと相手は右手と足に力を込めていく。この状態でもキツイって言うのに最低限右腕に持った剣を振り回せるようになったらこっちの足が持っていかれる。このままじゃ
「それは僕の第二撃が整うまでだろうね?」
そう言って斜め上のエニグマはこちらにに向かって光弾の雨を降らせて来た。流石に敵もそれに反応したのか後ろをちらりと確認した。当然、その好機を見逃す訳も無く。
右足を小振りにだけど最大の威力で放てるように足に力を入れる。流石に体勢が崩れ注意も乱れた状態で相手も避ける手段はなかったのかもしれない。何とか体勢を崩してくれたのでそのまま相手の右の剣を踏むように足に力を入れる。
「ちっ邪魔だぁ!」
相手は剣にかかった体重を払いのける。流石に防がれるとは思っていたけど吹き飛ばされるとは思っても見なかった。これほどまで力だと流石に遠くまで飛ぶ。
まぁ、それでいいんだけどな
「かかった!」
「そうか、ナイス!」
俺はその反動で遠くまで飛ぶことに成功し、相手は俺を払う事に力を入れ過ぎて更に体勢を崩す。空気を切り裂き飛ぶ光弾に何とか回避を成功する。
「頼むやっててくれ!」
光弾の雨に焼かれた大地、近づいてくるエニグマに紙っきれを投げ飛ばし、退ける。
倒したか、倒してないのか?
残光の残る今この状態ではどちらかすら確認する事が出来ずにいる。一発だけではすぐ散る光もこうも連打されては直視すると目が焼けるのではないかと錯覚させる。
相手の打倒が確認されていない状況では大きな音は立てられない。味方の援護もし辛い。なのに残光のせいで状況を直視も出来ない。意外とめんどくさい状況だ。
だがそれもそんなには長くは続かない。何秒かの時が流れてヒカリが止み始める。所に、高速で迫る人影が俺に接近する。
嘘だろ!? 光の中心にいたんだ。例え五体無事だったとしても目がマトモに機能している訳がない!
しかし、そんな疑問も知るかと言わんがばかりに背後の残光に照らされた銀髪がこちらに剣を向けて襲い掛かってくる。
剣が混じり合う。二刀流の技術も精彩が無く、こちらの位置を察知するのにも少し遅いような感じもするので流石に目はいまいち利いていない様にも思う。
しかし、それを補うが如き獣性は攻撃に苛烈さを増し、一撃、二撃、二刀流ゆえの手数の多さ、それを支える身体能力によって防戦一方となる。
「この感覚そこかぁああ!」
犬歯をむきだしにふるう剣は大気を切り裂く。普通、目が見えなくなっているというのならもっと攻撃を慎重に行うか闇雲に振るうはずなのにそのどちらでもない。
力強く一発でも当たればいいとでも言うように大振りで確かに一発ずつ当ててくる。一刀であれば容易に捌ける筈のそれも攻撃の後に追う様に攻撃されれば防ぐのさえきつくなる。
「ふ、はー!!」
「エニグマ! 援護できるか?」
「無茶言うな接近しすぎだ。多分、君に当る」
「補助、補助!」
「隙を見てかけてる! 集中しすぎて気づいていないだけだ」
いつも通り、光弾が俺にもあたるというか当たり前だが接近戦同士の所に遠距離攻撃はよほど精密に攻撃できないと連携を取るのが難しい。その為、補助だけであろうとこちらの援護をしてくれているエニグマには頭が上がらない。戦闘中だからその事を言える余裕などないが。
右、左とある程度の速度を維持しながら強い攻撃が続く。こちら手もそろそろ痺れてきそうだ。
「ッつーのによ!」
「身体が暖まってきたな!! 少年?」
というのに相手はエンジンがかかってきたのか攻撃は逆に熾烈さを増すばかりだ。
この分だとあっちは連携こそ取りやすいモノのこっち以上に高速で動く敵だ。相手にあっちはどの様に対処しているか不安になる。
ずーっと思ってたけど皆二つ名の方が浸透しすぎる&名前を名乗らないから敵が名無しのままストーリーが進む。 わざわざ名乗るタイプじゃないし決闘でもないから敵の名前知らなくても仕方ないけどキツイね




