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霧の中仕組まれた対等な決戦

  「とまぁ、昨日アルカから第三勢力、あるいは親衛隊達の野望の一部が適っている可能性が示唆された。これらを念頭に置いて今後の旅と目撃された奴らの追撃をしよう」


 あれから早朝、周囲に霧のかかる道を歩く道程で、幾ばくかの話し合いの断片を思い出しながら歩く。俺たちは、皇都を抜けて、自治を任されている国家プラティナセルマに向かっている所である。


  「大分、端折ってるっぽいけどそんな感じだったんだ。昨日の話し合い」


  「ユミ? 前半の話には君もいただろう?」


 何時もの通り呑気な事を口にする玖珂と何時もとは違い余裕のない口調で玖珂に接するエニグマ昨日の話にも出て来た暴剣の事をそれほど気にしているという事だろう。


 粗にして野であり暴の化身。純粋な実力に於いてトップクラスの実力者であると聞く。彼女は積極的に他者を巻き込んだ戦いこそ望む性格ではあるものの偶然居合わせた者たちに対する配慮はこれっぽっちも無い。

 女性らしさ所か男性の中に混ぜてさえ野蛮な部分がありそれが人命に影響を与える部分だという。街中で戦えば多くの死者を出す為見つかる前に出て行かなければならない。


  「もう一度言う、あいつの行動速度と気配探知は桁外れだ気をつけてくれ」


  「本当に半径一キロ全てが認識範囲なの?」


  「ああ、流石に街中とかでは精度が落ちるけどね。レイ、君の父さんなんか良く彼女が陣地に帰参する度に何所にいても襲いかかられていたよ」


 玖珂の珍しくマトモな質問にエニグマが細心の注意を払えと身振り手振りも交えて答える。よほど煩わしかった相手だったのだろう思い出すたびに苦虫を噛み潰したような顔をしてくる。後、また新情報っておい。


  「うん、同じ軍の味方だったんだよな?」 


  「あいつがそもそも親衛隊に入った理由が、ナナセの戦い方に魅せられてあいつと戦いたいと思ったからだよ……」


 アレ、親衛隊作った目的の一番の理由って確か父さんの味方を作って命を守って貰う為じゃなかったけ? 

 なおさら分からなくなった。多分これ更につっこむともっと疑問が出てくるタイプだと思うんだが……なるほど誰もが苦虫噛み潰す訳だよ暴剣か、名前通りだなー


  「色々な人がいたんですね。親衛隊って」


  「本当にな。所でエニグマ目的地って何処だよ?」


 徒歩で結構進んでから思ったことだが次はどこに行くんだろうか? そう思いエニグマに尋ねる。


 皇都から直接、目的の国に行くには長期間掛かる上に森やら山やらを進む必要がある。しかも何処かには、今、話しに出ていた厄介な人と目撃情報では忍者に狙われる可能性があるのだ。それに関しては、聞く必要がいっぱいある。


 先頭を歩いていたエニグマは俺の言葉にため息をつきながら振り返る。テレザも俺もその行動に疑問も抱いたが俺は一瞬イラっとも来た。


 急にため息もつかれた為なのだがどうもエニグマの様子がおかしい。さっきから首を動かさない様に周囲を確認している。そして何より可笑しいのは今思えば俺のすぐ近くの前にいる玖珂だ。さっきからまともなこと言ってた上に今は静かだ。


  「ああ、そうかテレザ、警戒って言う必要は無さそうだな」


  「ええ、ここ多分さっきまでいた所と違います。魔力の流れを組み換えて地形とは違う異相の空間を歩かされていますね……」


 俺は周囲の違和感からテレザの方を向く、すると既に警戒をしていた。情けない話だがどうやら俺が最後だったらしい。なんて言ってる場合でもないテレザの顔が青ざめている。


  「ん、ねぇエニグマ? 忍者はともかく暴剣って人こんな魔法使えるの? 私この世界魔術一切知らないんだけどこの魔術、大分高位、いやそんなレベルじゃないっぽいよね?」


  「……コレ、世界を創造してその世界と元の世界に二重に私達を存在させてる。私たちの拉致って言うしょぼい事に使われているけど人が再現するなら国家レベルの人員でも足りないというか主神級の奇跡の行使だよ……」


 玖珂も冷静に周囲を確認しているし、エニグマも珍しく動きこそ少ないが落ち着きがない。腰に佩いてあるアルヴァも警戒しているかのように脈動している。ただ、どうしてだろうか、こんなにも皆が冷静でない状況で俺だけがいつも以上に落ち着いている。というか、この空間内では何かに見守られている感覚すら認識できる。この状況どこかで似たような事があったような?


  「警戒してても始まらないしとりあえず進まないか?」


  「レ、レイさん! な何、落ち着いているんですか! 私達いつの間にか敵からの攻撃受けているんですよ!」


  「この攻撃に敵意は無いというのは私にも分かるけどだからと言って警戒はすべきだと私は考える」


 俺の言葉に女性陣は総スカンをくれた。どいつもこいつも必要以上に警戒してる気がするけどその理由も分かる。世界を創れる奴からの不意打ちだ。『世界を創る』、気づかぬうちの不意打ち、どちらか一つでもだけど恐慌に陥るべき非常事態だ。だが俺にとってはこの空間『自体』はどうも警戒する必要はないと考えている。理由については似たようなものをどこかで感じた事があるからなんだが何処でだっけ? とりあえずその事を説明するとテレザと玖珂呆れていた。


  「……玖珂が珍しくマトモなこと言っているのに大変恐縮だけどレイのいう事は一理あるのかもしれない。この空間『自体』には悪意を感じられない。君たちもそれは分かるだろう?」


 俺の言葉に何か理解できるものを感じたのかエニグマは皆にもこの空間自体には悪意がない所か多分、俺たちに有利な状況下である事を伝える。その言葉に納得はしきれていないが否定する程ではないと思ったのか話し合いで一応目的地の方角に十分警戒した状況で進むという意見で一致した。


 皆が現在の状況下で落ち着きを失っている。その中で呑気な俺だがどうしてか周囲の警戒だけは怠れない意味の解らない精神状況に陥いっている。多分、警戒を促している『原因』から俺たちを守る為にこの結界が張られたのかもしれない。


 「……助かるけど……これだと予定と狂うね……」


 森に囲まれた一直線の道、明らかに誘導されている。が、森に入れば力が弱まり最終的にこの一本道に戻された。その為、この道を歩くしかない。試しに一度だけ、玖珂が行って見てからの感想だそうだ。

 珍しく率先して自分から『勝手に』行動してきた。


  「ちょっと気になるから森の中、走ってくる」


  「おい、玖珂! 分かるけどやめ」


 静止も届かず、走り抜ける。呼び止めようとしても無駄だった。


  「聞かなぁあー  っぶ」


 戦闘能力の未だ分からない玖珂を、斥候させるのは不安だったのだが宣言したと同時に走り出したのでどうにもならない。


  「ずばぁっ! 痛い、後ろからなんか当たった。って、玖珂どうしたよ! 何時の間に後ろにいるんだよ?」


 のだが、背中に何かがぶつかってきた!!


 急いで追おうと思い玖珂の真後ろ位に立ってしまったのが運のツキなのだろう。突き飛ばされてあえなく座布団になる羽目に。


  「おお、疲れている所にいい感じのふかふかのマットが!!」


  「退けなきゃお前はたきぎになるよ?」


 人の身体をマットレスにして寝転び始めた玖珂に魔力を火気に変換し抗議する。ヴァ―ニングラーブとか言いながらこそこそと退き始めた。流石に人間薪は玖珂も嫌いらしい。


  「レイさん。戦力減りますよ?」


 その俺達のやり取りに何か微妙にクールに返すテレザ。にやけ笑いながら見守るエニグマにめんどくさいモノを感じながら、っととと進める為に、話を本題に戻そうと思う。


 その後中の情報を玖珂から確認。玖珂曰く、俺たちにとっては一瞬なのに玖珂にとっては二百メートルくらい走った気がするという事なので時間も微妙にねじれているらしい。


  「統合すると空間及び、時間も調節されているという事かこの森……」


  「改めて恐ろしい森ですよねここ。しかも自然、本来あるべき空間と馴染むように創られている」


 内の解析班が後方で玖珂のもたらした情報からこの森の理屈について話し合っている。他の部分は分からんから聞き取れなかったがなんとなく分かる部分もある。簡単に言うとアレだ人工物が自然にまぎれる様に作られているという事なのだろう。それくらいしかわからない。



 ついでに先ほどから静かな玖珂は俺の背でぐったりしている。結構体力を奪われたらしく後、十分は背中で寝させてほしいという。


十分程度で回復できるのかという疑問もあるがいつの間にか背中に回られ寝られていた。降ろす訳にも行かない為、背負い続ける。


後ろのテレザの視線が痛い気もするのはなんでだろう。


なんだかんだで行動の決定権があるエニグマさん(見た目最年少、実年齢最年長)

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