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血の繋がり 城での出来事

 門を潜り抜けて城内の入り口で最初に見た者は偉そうにこちらを見ている玖珂の表情だった。 


  「よくぞ来た勇者たちよ我がラス、うぎゃ」


 偉そうにゲームの口上をのたまう玖珂に静かに手を振り上げて業炎を放つアルカンナさん。炎は縦に一直線に昇るがそれを察知したのか玖珂は何とか避けていた。


  「へー、アレ避けるのか」


  「すいませんもういい加減中に入りません?」


  「一人逃げた玖珂を憎いのは分かるけどもっと気にしてやれよ」


 その光景に俺たちは思い思いの言葉を口にする。一発で満足したのかアルカンナさんは避ける時に体勢を崩した玖珂の首根っこを掴んで引きずりながら城内の正面の扉に消えていく。


 「行くぞ」


 「首、苦しい」


 その言葉が玖珂の最後の言葉にならない様に俺たちは心の中で祈った。



 それから、アルカンナさんの先導の元、俺たちは会議場に集められる。会議場には黒板らしきものと机が黒板前に一つ左右に一つずつの計三つ置かれている。

 そして、椅子が各机に四つずつ黒板側に一つ多めに置かれていた。


  「……そういう事か」


 ここに連れて来られた理由が分からず少々、考えている俺達だが、ディアスは何かつぶやいていた気がする。何か知ってるのか。訪ねようとしたその時、入口の方から扉が開く音が聞こえる。


  「待たせたね。置いてかれたエニグマだよ」


 あからさまに私怨を込めてそう挨拶してきたのは一人だけ遊びに行くときはぶられてしまったエニグマである。


 よほどそれが悔しいのかこちらにやたら意地の悪い瞳でこちらを見て、恨みをぶつけてくる。俺たちはそれを乾いた笑いで対応するしかなかった。


  「あーすまない」

  「あ、ははは申し訳ありませんエニグマさん」


  「気にするな、とろくさい方が悪い」


 一部の人間を除いて。


 怒られると分かっていてもその口は閉じるという事を知らないのか玖珂はまたいらぬ事をくっちゃべり制裁を受ける。後続の人達もその光景に何も言う事がないのかぞろぞろと中に入ってくるだけである。


 「……ふっ」


 いや一人だけいい気味だと冷笑を浮かべている人もいるな。あの人本当に玖珂と相性が悪い。


 多分、これで全員なのだろうあちら九人のこちら四人の計、十三人で何か行うのだろう。すぐに黒板近く、中央に位置取りを行った、アルカンナさんの方に俺たちは向く。


  「よし、それでは会議、と言うよりは今後の予定のすり合わせを行う。皆、席に着け!」


 十三人目が来てから多分、全員が来たと一息ついた後、皆が揃ったと確認し終えたアルカンナさんは号令をかける。


  皆がすぐさま席に着いていた辺り俺たちが聞かされていないだけで元々席については決まっていたのだろう。俺たち三人はいきなり席に着き始めた皆よりもワンテンポ遅く行動する。エニグマはともかく『奴』が誰よりも早く席に着いていた事にはもう何も突っ込むまい。俺たちは空いている席に各々座り、話し合いと言う物が行われるのを待つ。


  「俺がこの位地っておかしくねぇ?」


  「「「「「「「「「……」」」」」」」」」


 九つの瞳が全部が『俺達』と同じ机側に座っている『ディアス』に注がれる。客観的にもその瞳が何が言いたいのか解ってしまうので当の本人はきついだろう。威圧感に押され縮こまってしまう。


  「ははは、よしよし」


  「Don'tMind」


  「何故、英語だ」


 とりあえず同じ席に着く俺らで慰める。


 九人はそれを見届けた後に準備をしていた。そろそろ本格的に話し合いが始まりそうだ。


 さてどの様な事が話し合われるのだろう?



 準備は終わり、皆が席に着きシグさんが仮定・黒板につらつらと文字が書いていく。書記はどうやらシグさんのようだ。俺的には対面にいるエニグマが気になる所だが黒板の文字を取り敢えず見ておく。


  「えーっと、プラティナセルマに行く際の打ち合わせ。ですか?」


  「ああそうだ。一応、謁見の間での口約束に過ぎなかったからな。ここで調整しておきたい」


   「んーなんでー」


 テレザ黒板の文字を読み込み、その言葉に合わせてアルカンナさんはここに集められた理由を説明する。玖珂が何故その様な事をする必要があるのかとでも言うように机にぐだーっ右頬を机に付けて左手を挙げ、質問するこの子本当に怖いモノ知らずだな。


  「その質問は僕が答えるよ。元々話自体は、今日調整する予定ではあったんだけど急を要する事になったんだ。今日の朝、ちょっと嫌な予感と、ついさっきとある目撃情報があってね。どうするか迷ったんだけど明日出立する事に決めたんだ」


  「奇妙な情報?」


 エニグマの言葉に引っかかり俺は聞き返す。気がかりな事とはなんだろうか? 意味深な顔で口にするエニグマの言葉に皆、耳を傾ける。何故か動かなくなった玖珂には少し奇妙な物を感じるが気にしている場合ではない。何故なら俺たちが思っていたよりかは難しい状況になっているようである。


  「ついさっき、全身黒尽くめの覆面男と黒いレオタード姿にローブのような姿の女性を見た者がいるそうだ」


  「目立つ奴だね。そんな事よりレオタードとか『ここ』にあるんだ?」


  「まぁ、似たような競技はあったし、チキュウから人も来てるしね」


 余り、知らない将軍である仮称・カイゼル顎鬚さんが答えてくれた。言葉に素早く茶々を入れ始める玖珂。

 だが、なんだろうか? 何か玖珂の様子がおかしいと言うかリアクションが何か変だったような。


  「話を脱線させるな。黒尽くめの男に僕達は身に覚えがあるだろう?」


 忍者、か。それと一緒にいる女性は普通に考えれば援軍なのだろうが少し可笑しいな。


  「多分だが、きっと叔父上に関わる部隊の奴の可能性がある。目撃情報を詳しくしたモノに覚えがある者がいた」


 父さん関連か、ゼリウスさんが引いてくれたから当分来ないかと思っていたけど、予想よりも早く来たんだな……


  「うん、暴剣タイラントブレイドと呼ばれていた女と特徴が一致する。こいつがかなり、厄介な性格をしていてね」


 暴剣、名前はちょっと独特だが、説明を聞くと本当にヤバそうな人間だった。めんどくさそうに頭を掻きながらエニグマ達、彼女の知己組が説明するのも分かる。

 だからこそ何故、ここ周辺にアイツラをおびき出して皇軍と共に叩かないのだろうか? その方が効率もいいはずなのに……


 会議は終わり、今宵も更ける。聞いた話は納得し辛い部分も多く存在するが理由は分かったので飲み込むより仕方ない。


 確かに、一応皇都にいるのはばれていない。繋がりもばれていないのだからもしもの保険としておく必要がある。何処に伏兵がいるかも分からない状態で敵にわざわざ後ろ盾のいる状態で接触しどちらも完全に根元から断つ機会を失うのは惜しいという事だろう。


 正直、こちらの身の安全とか気になる事はいっぱいあるけど博打を討つ余裕がある時に打つというのも有用な作戦なのかもしれない。


 ただ、そのような物より現在、重要なのは……


  「またか、またこの部屋か……」


  「人の部屋でショックを受けるのは感心しないな?」


 現在、私は皇帝のお部屋に訪問しております。またか


 ここに連れて来られた経緯は多分、食事を終え会議の事を考えボーっとしていた時に手を引っ張られてここに招かれたんだろうな。引っ張っていた声がエニグマの声だったから気づかなかったけど……あの後、転移してやがったなきっと。


  「いいではないか。明日で離ればなれだ。もう少しお前と話させてくれ」


 その言葉に何も言えなくなる。どこか悲しげに見える微笑みは俺との少しばかりの会話さえ楽しんでいてくれる証明なのだろう。悲しむのも微笑むのも、その相手に好意を抱いたから起こることだ。俺はそれに報いるべきなのだろう。


 悩む、必要はないのかもしれないがそれだけ執着されているという事はそれだけで嬉しいものもある。必要とされるという事は自分の価値を認識するという事で胸に来るものがある。


  「分かりました。それに呼んだ理由ただ、遊びたいだけではないですものね」


 俺の言葉にはっとした顔でこちらを眺めてくるアルカンナさん。どうやら図星のようだが、なんだろう? 徐々に怒ったような顔でこちらを睨んでいるように感じる。なんか近づいてきた!


  「お前はもう少しムードとか相手の心情を察するだけでなく汲むという事を覚えるべきだな」


  そう言い終わるとアルカンナさんはおもむろに後ろに回り込み頭をぐりぐりしてきた。痛い。


  「まぁ、そうだ。レイも感じないか? 胸を締め付けられるような共感と圧力を」


  「ああ、多分アルカンナさん以上に感じていると思うだけどこれって?」


 それは、感じて無い訳ではない。アルカンナさんの時、以上に感じている。今までとは違い確かな鼓動を、ギャンブルの時気分が悪くなって意識を消失させたのは疲労が理由ばかりではない。日に強くなる強制的に知覚させられる何モノかがあるからだ。といってもそれを理解できたのはアルカンナさんと出会った時からなのだが。


  「この疼きと似た感覚は多分どこかで大魔王の血筋われらに連なる者がいるという事なのかもしれない。気をつけろよ」


 ただでさえ敵が多くて辟易していた所に更に増える課題。さて明日はどうなるのだろうか?

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