賭博場のデート 後編 更に遊ぼう(明日なんてないから)
なんか町ごとに店に入ってるね
今気づいたが、どうやらテレザはアイス以外にも軽食をいくつか買ってきていたようである。通りで三枚コインをあげたのにアイスがそこそこの値段のモノしかなかったわけだ。
「まぁ、そのせいで時間が掛かりましたけどね。まさか寝てるとは思わなかったですよ」
「申し訳ない」
流石にサンドイッチ等を食べて一息ついた俺は今、向かいに座っていたはずなのにベンチの隣に座らされ、くどくどとテレザから説教を受けている。分からなくもないのでおとなしく説教を受け入れよう。
「昨日は眠れなくてな」
「そう言えば昨日、皇帝様と何があったんですか?」
「俺が聞きたいものもあるけど簡単に説明するとな……」
説教も終わり、二階の散策を再開させた。その過程で、何故居眠りしてたのか理由について聞かれたので説明した。
昨日、アルカンナさんとの間にあった事を簡易的に説明した。流石に個人的な問題などもあった為、大分ぼかしたが、自身の出自に悩んでいた事、未来への展望について聞いて来たことについて話した。
「皇帝でもそんな事に悩むこともあるんですね」
「皇帝だからこそだろうな」
どうしても悩んでしまうのだろう。引かれたレールか、正しくはそうではないが、魔王の血を引くが故に魔王になったという意味ではレールの上を走っているものだろう。本人の手前や、そして実際の成果や培った絆から違うとは言ったがこの部分のみを客観的に聞いただけでは本当に自由が無いように思える。
「家族がいれば、そんな事も起こるんですね」
「うん、なんか言ったか?」
「いえ、なんでもありません」
何か言いたそうだったので聞き返したのだが言葉に詰まらせて否定してきた。
俯き目蓋を塞ぐその姿や、今までの言動からどうやったって何でもない訳ないのだが、話したくないのなら仕方ない、無理やり聞くのは酷だろう。
先ほどの会話の影響か、テレザの足取りは重くなる。だが、横顔から悩んでいるというよりかは気にしているという感じだ。
そのテレザの反応にホッと胸をなでおろす。流石に、気落ちはそれほど無いようだ。なら精一杯ここで楽しんで晴らしてやるとしよう。テレザの胸にある悩みは聞けるときに聞けばいいさ。
頭を悩ませて考えていた事を振り切れば、足取りは軽くなるものだ。
「そうか、なら気にせず散策を続けようぜ」
「……うん、そうですね。楽しみましょう!」
顔をあげ、こちらをほほ笑むテレザ。そうだ、今は全て忘れて楽しもう。刹那であろうと、気を許せる友と確かにここにある幸福に身を委ねる事も大切なはずだ。
今はただ、全ての因縁を忘れよう。
それから近くから順に二階の店を見て回った。アイス屋から順に服屋などを見て回った。
「この皮ジャン良いなー、金があるのに買えないのが口惜しい」
「仕方ないですけど、邪魔ですからねこれから行く所には取り敢えずとっとと目的のモノ買いましょう」
良いものも沢山あったがあったが故に悲しくもなってきた。これから帰るし、異世界だからまたはこれないんだよ。目的のものである替えの下着は買えたが今度は別の意味で足取りが重くなってきた。
「見てるだけでも十分良かったじゃないですか」
「んーま、そうなんだが」
チキュウでは文明が発達してる分あそこまで自分らしく皮の服を作るという事は出来ないのではないだろうか、正しくは作成機器の発展具合からどうしても生じる手製感の消失が元社会のモノには起こっている。用は元の世界では見栄えを気にしすぎていて丁寧な物しか売られていないのだ。
それに対してあの皮ジャンなどの服はなんというか本当に手ずから自由に作ったが故の個性を感じる。確かに均整がとれていない部分もあるがそれが商品の味となっているのだ。雑だが、心を込めた雑だからとても良いものに見えるというべきか。その分値段かなり高かったけど。
「文明が発達している事は良い事ばかりではない、か」
「どうしました?」
「父さんが言ってた事思い出したんだよ。優れている事がそのまま全てに勝るものではないって話」
劣っている事はただ、劣っているだけではない。勇敢である事で死んでしまう事があるように、臆病であるならば危機を脱せられたことがあるように、必ず優れている事がより良い結果を起こすとは限らない。
そう昔、父さんに聞かされた事がある。その時の父の顔はとても苦々しい顔をしていたような気がする。テレザに俺が父さんから聞かされていた事を説明すると、どこか神妙な面持ちに一時的になっていたが気にせず歩き出していた。
「そうですか、面白い事をきかせて頂いたと思います。さぁ変えた下着も袋に包んで頂きましたし、次に行きましょう!」
テレザは何かをごまかすように俺の手を引っ張り服屋を後にする。そのような事もあり散策を再開する。用事のない店は基本店の中を見て回るのに止めているが、気に入った店は立ち入って商品を眺めていた。アクセサリーショップなんかは魔術のかかった品もあり、長時間いた気がする。
「レイさん、レイさんこれなんかどうです?」
「青色の指輪か。なんか珍しいし綺麗だよな」
等や
「次はこれなんかどうです」
「カフスか、イヤリングと違って耳に穴をあけなくていいのがいいよな。月を文様として入れてるのがブロンドの髪に合っていいと思うぞ」
事あるごとにテレザが感想を求めてくるのが微笑ましかったというのが一番記憶に残っている。そんなこんなで、二階の散策店巡りはまだまだ続く。
続きましては武器屋だった。賭博場の武器屋というと何故か最強の物が置かれているような気がするのはゲーム好きだからだろうか?
「そろそろ旅も終わりそうですけど、だからこそ見ておく必要ありますよね」
「何か、まだまだ続きそうな気がするんだよな。主に忍者のせいで」
珍しく一緒に武器を漁りながら雑談をする。この武器がいいんじゃないか、あの武器なんかはどうだ? とも二人で話し合う。
「ああ、忍者さんは確かにまだ色々ありそうな雰囲気だしてましたから確かにありそうですね。あっこの大剣なんてどうです?」
「倒しきれなかったのはきついよな。後、その剣だと重過ぎて取り回し辛いんだよ。ただでさえ腰に剣を携えてなくちゃならないからそこそこは軽くないといけないんだ」
大体の武器は手で持って取り回してみれば武器の性能について何となく分かる。しかし、実際の戦場ではどの様な性能や威力なのかは本当に大体しかわからない。
「エリーゼさんのステータス見るカードここで使えたらなぁ……」
「レイさん、師匠のアレは本当に大発明ですから一般にはまだ流通させづらいんですよ。諦めてください」
独り言のつもりだったが聞こえていたらしい。テレザはこちらを見ながら、あのカードについて呟いた。あのカード一応試作品の先行生産型が流通してるのみであり一般にはまだ流通されてないらしい。
それが本当なら皇城には数点あるかもしれないがこの程度の事には使わせてもらえないだろう。そもそも、意識のない物質にはあのカードは使えないらしいけど。
「儘ならないなー」
「仕方ないと思いますが、もういいんですか?」
「良いモノは結構あったけど手に馴染むものがないからいいや。テレザの武器を見に行こう」
剣が置かれているコーナーを一瞥して俺は杖が置かれている場所にテレザと一緒に行く。しかし、総合的に見てあの店で買った剣を上回る商品にはまだ見受けられないな。皇都でならあると思ったのだが……
結構いいモノなんだなアレ、他の物と見比べて改めてそう思う。
「私の付き合いをしてくれるのは嬉しいですけど本当に良かったのですか? 結構いい切れ味の物とかあったと思いますけど」
「切れ味や硬度なんかただ剣として見比べるなら上回るものが多いけど、俺が使う剣で考えたら合わなかったんだよ。あ、これいいんじゃないか?」
衣服なんかと一緒で当然、剣等の武器にも適性の大きさなどがある。そして大体の武器はサイズ別の同性能、同デザインの武器など置かれていないのだから自分に見合った武器を武器屋で見つけることは本当に困難だ。それを思えばテレザの新しい魔導師の杖が見つかったことは運が良かったと言える。
「あー確かにそうですね。思いの外早く見つかりましたしついでにエニグマさんの言ってた『カード』見に行きません?」
「『カード』って俺達で探せるのか?」
「アレ本当に珍しいもののハズですから見ればわかりますよ? 師匠からも一応教わってますし、触れた事はありませんけど」
どうやら本当に探すのが難しいモノらしい。今、思ったんだけどそれ見つかったら買えんのか?
俺のその感情はどうやら顔に出ているようでテレザはその内心に被せる様に俺に言ってきた。
「まぁ、やってみましょうよ。あったら多分これから先楽になりますよ!」
「やってみるか」
俺はテレザに手を引かれそのカードとやらを探し出す。本当にあるのだろうか?
結論、あった。本当に珍しいモノらしくそれ故に店員に尋ねただけで見つかった、探す必要などなかったのだ。これには俺も苦笑いでテレザを見てしまった。
当のテレザも店員がこれかな? と言ってきた段階で目を背けていた。その時はつい、
「おーいこっち見ようぜ」
と言ってしまった。反省してる。
流石に全力とは言わないがそこそこやる気を出して探してみようという言葉を言ったのだ。こんなにも早く見つかると拍子抜けと言うレベルでは無い。どうにもままならない。
「あったんだからいいんですよ! なんですか店の倉庫の奥にあったんですから私が言い出さなかったら見つからなかったんですよ!」
「それに関しては確かにその通りだ。だから落ち着け」
俺たちはただ今、多分三時頃ある程度の買い物を終えカフェっぽい所で食事をとっている。漆の如き色の木製のテーブルに椅子はとても雰囲気がよく落ち着いて話すのには絶好の雰囲気だった。賭博場も盛り上がりを再開している時間である為客が俺たちを覗いて数人しかいないのも今はベストと言える。
のだがだからこそ興奮しているテレザは良く目立つ。いい加減目立つのもめんどくさいし、テレザもこの様な事で目立ちたくもないだろうから落ち着かせる。
「ですけど、ですけどー」
「ああーよしよし。次はテレザの行きたいとこ付き合ってやるから」
「本当ですか!」
「ああ、本当だ。どこ行きたい?」
俺の言葉にテレザは途端に態度を変えて嬉々と考え出す。食事を取った後だから流石に落ち着いてきたか。
鼻歌を歌いながら嬉々として考える。だが、皆忘れていたのだ自分たちが元々『誰』に連れられてここに来ていたのか。そもそもどの様な条件下でここに来ていたのかを……
「あーデート中の所申し訳ないがタイムアップだすまないがそろそろ帰らないとキツイ」
そこにはいつの間にか玖珂の首根っこ掴んで、店まで現れたディアスの姿があった。というか玖珂、なんで何も反応無いんだ?
どの様な物にも当然終わりは訪れるものである。「俺たちはこの時、初めて思い出したのだ。そう言えばここでの遊びの終了時間を聞いていない。と」
「レイ、途中から声に出てるぞ」
「あーすまないついねディアス。後、テレザー落ち着いて」
ふーふーとディアスを睨むテレザが何故ここまでディアスに敵意を抱くのかは解り辛いがまぁー次、別の所に行こうかと考えていたのにその瞬間に帰宅宣言されれば流石にこうなるのかねー
まぁ、でもある程度は満足した場合によっては明日以降だって来れるだろう。そう思いながら俺たちは帰路につく玖珂が意識がないので徒歩で帰る事となった。コインを現金に換えて借りた分はディアスに返す。
当初、ディアスはいらないと言ったが流石に借りたままでもいられない。押しつける様にお金を返し俺たちは男性陣で玖珂を交代で背負い家路をを急ぐ。
「夜までに帰る予定だったが結構いい時に出てこれたな」
「それ先に説明してくれ。だが、この風景でチャラにしてあげるよ」
「ちょっと機嫌悪かったですけど、これは良いものですね」
賭博場を出るまで帰る時は不機嫌だったテレザも賭博場を出てからの夕焼けには心躍るものがあったようだ。流石に終わり悪ければ今まで培った物も色あせてしまう。
これで帳消しとまでは行かないもののいい経験が出来たと思ってもらいたいものである。
または来れないかもしれないんだから。
こいつら今思ったら結構な過密スケジュールで行動してるのな
逃走もしてるし追ってもいるから仕方ないけど




