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賭博場のデート 中編

 コインもたんまり手に入ったのでわざわざギャンブルを続行するのもアレである。ここいらでギャンブル以外もちょっと見ておきたい。これは別の台に遊びにいった時に無用な注目を避ける為でもあるし、付き合ってもらったテレザに対する恩返しだ。


 女の子だし研究者だからこういう場所での商品とか気になるだろう。そう思ったので横で休憩していたテレザにどこか商品見に行かないか? と、誘ってみるかね?


  「なぁ、テレザ?」


  「なんですか?」


  「ん、いや、どうせだ。商品見て回らねーか」


 コインで確か何点か買い物が出来る様になったはずだ。それにどうせこんなに店があるのだ。見て回るのも悪くない。


 周囲を確認する。一階には食事などの賭博中に使うもの、食べるものが置かれている。二階の方には確か衣服や何かしらの道具、お土産等のモノが置かれているようだ。他にも軽食などではない本格的な食事もとれるみたいだな。


  「いいんですか?」


  「いいだろう別に、金ならいっぱいある。これが終われば、とうとう目的地まですぐそこだ。楽しんだって罰は当たらんさ」


 少々心配そうにこちらを見るテレザに俺は答える。それに今は昼位だそろそろ休憩を挟んだ方がいいだろう。


  「そうですかね?」


  「そうですよ?」


 似たようにへたれた俺だけど、客観的に見たらきっとウザいか滑稽にうつるんだろうなー


 互いに首をかしげながら壁際のベンチまで移動してこの問答を繰り返す。


  「そうですか、それじゃあ行きましょう!」


 何回かの他愛無い問答を繰り返しようやく動く。何処か元々この他愛もない会話をテレザは楽しんでいたようにも感じるな。


  「衣服とか買ってくか」


  「あはは、確かに必要ですね」


 俺たちはあまり良い感触ではない自分たちの衣服を見ながらそう言葉にする。


 一応上の服は義理立てで着ておかなくてはいけないが中の服は変えておきたい。


 意思は決まり俺たちはベンチを立ち上がり上の階を目指す。今は多分昼の一時くらいだろう。会場もある程度落ち着きを取り戻し、中盤戦へと英気を養っている者もちらほらいる。今なら動きやすそうだ。


  「二階への階段は確かこの会場の入り口付近でしたっけ」


  「そうだな。帰っている奴もそこそこいるからそいつらに紛れていくか」


 目立ちたくないんですねと柔らかく笑顔で笑われる。しかし、それはテレザも同じようで文句はなさそうだ。さて、熱くなった手は冷めて、次の楽しみを待ちわびている。であるならば、買い物でワクワクさせるものがあるのだろうか?


  「そろそろ行きますかね」


  「そうですね行きますか」


 手をテレザの方に向けて立ち上がらせる。エスコートという訳でもないが午前も似たようなことをしたのだ。継続しようこちらを見るテレザがじーっとその手を見ていたがにこやかに手を取る。その間に何を思ったのかは知らないがまぁいいだろう。四肢に力を入れて前進する。それでは行くとしよう。


 こうして二階に来たわけですが、思いのほか静かだな。割れる様な歓声も、機器の機動音さえ聞こえない。流石に完全にという訳ではないが一階のパリィイ状態から一転物静かなカフェーなのが何とも拍子抜けである。一階のテンションに疲れたら二階の小粋なカフェで一休みと言うのも考えられているともいえるがな。


  「なんと言いますかとても静かな所ですね」


  「下と比べて静かだよな」


 空調や部屋の構造を調節する事により、一回にはテンションを上げる為に音が籠り易く、二階には音を通し辛くしてある程度、静かに穏やかな空間が広がっている。当然下の方が暖かく上の方が程よい気温だ。観葉植物などが道の中央に置かれている景観も適温に感じやすいようにされているのだろう。


  「存外、考えられているよなここ」


  「確かにそうですねーあ、アイスとかありますよ!」


 俺たちはその程よい空気に包まれながら二階を歩いている。入り口から少し歩いた場所にの角付近にアイス売り場がある辺り考えられてるな。色々と。


  「おーホントだ。って高い!?」


 チキュウ換算で最安値一個五百円くらいって高すぎだろう。工場とか無さそうだしその分高くなってるのか?


  「結構高いんですよね二個買うのに金貨一枚必要ですし、でもうう」


 テレザはアイス屋の方を睨みながら悩んでいる。


 まぁ確かに、一回中央の賭博場を観る為の吹き抜け近くにある休憩場のベンチやテーブルでは美味しそうに食べてる人も多いものな。それにこれだけ高いという事は、食べる機会もない少ないという事でもある。


 うん、テレザも頭から火が出るほど悩んでるなー、その状態を見るのも楽しいのだが流石にそろそろ可哀そうだ。仕方ないので助け舟を出すか……


  「買ってきたらどうだ? ほいコイン」


  「えっえ良いんですか?」


  「おう、ただし俺の分も買ってきてくれコインは三枚でいいな」


 コインを親指ではね飛ばしテレザの手元に三枚飛ばす。コインは放射線を描き、テレザの手元に流れ込む。


 弾き飛ばした俺が言うのはアレだが危なげなくキャッチしたテレザスゲーな。


  「ええ、わかりました。待っててくださいねー」


 こちらに微笑みかけ、手を振りながらアイスのコーナーに向かっていった。


  「こういう所は年相応だよな」


 なら俺は席取りでもしてくるかねー、周囲を確認しながらテレザに合いそうな場所を考える取り敢えず、ほど良く吹き抜けから離れていて観葉植物のある所かねー


 だからと言って入り口付近もアレなので入り口を背にして少し歩いた所の服屋付近のテーブルで待つ。アイス屋付近の服屋ってあからさまに客がアイスをこぼすこと前提の立地だよな。


 等と他愛もない事を考えながらテレザを待つ。こういうのも友達と遊びに行く時の醍醐味だよな。


 目蓋が鉄か鉛のように重い。と言うか良く考えれば手もなんか動かなくなってきた。風景もおぼろげに見えるしなんだ、これ。


 ベンチでゆっくりテレザを待っていたら途端に眠気が襲い掛かる。そもそも昨日って何時寝たんだっけ? そもそも寝たんだっけ。気絶していたような気がする。


 「お待たせしましたーって起きてますか?」


 何か聞こえる、正直あんま聞こえない。鼓膜を揺らすその音が煩わしく俺は音の発生源から顔をそむける。そうするとさわさわとおれを何某かが揺らす。俺はその感覚が嫌で身体を捻る。


 何某かの声がどんどん遠くなる。身体の空を浮く感覚にともしれず頭を付けていた物の感覚が柔らかくなる。柔らかい、まるで低反発枕で寝ている時と同じ感覚だ。


 顔を地面に向けると何故か地面の温度が高くなるのが奇妙だが、心地よいので止められない。頭をこつんこつんと何かが触れている。


 その感触に思わず顔をずらす。光が目蓋に当たり、意識が若干覚醒してくる。


  「冷ってー」


 口の中に何かが入れられた。それはとても冷たく、舌に触れるその冷気が気付けとなって思わず目が覚める。


  「やっと起きてくれましたか」


 空を見上げると見慣れぬ天井ではなくよく見た事のある顔が映る。ブロンドの髪が綺麗に流れる可愛らしい顔の少女。そうテレザだ。何処か顔が赤いような気がするのだが気のせいだろうか? 逆光故に、判別がし辛い。


  「なあ、テレザどうして眠っている俺が見上げている天井に君がいるんだ?」


  「貴方が枕にしてるものを確認すればどうしてなのかわかりますよ?」


 そう言われて俺は頭の下を触ってみる。何か柔らかいものが肌かこれ?


  「なぁ、これッ!」


 手刀が空を切る音が真上から聞こえる。思わず避けるがもしも当たっていればどうなっていただろうが?


  「一回だけ許します」


 こちらを見ている目から溢れる力はこちらの心を傷つける所か心弱い人なら死に至らしめそうである。その様な目力でにこやかにされても全然癒されません。


 睨まれてばかりでは何も始まらない。仕方ないので確認しろと言われた所を目で探してみる。テレザの目に力の入った笑顔の位置から確認する。ベンチの感触じゃないし、ベンチにはテレザも座ってー



  「あーごめんなさい」


  「分かればいいです」


 そう顔の位置から考えれば、と言うか状況から考えれば普通に分かったことだった。俺はどうやら寝ぼけていたらしい。


 俺が枕代わりにしていたのはどうやらテレザの膝らしい。まぁ、それなら手で撫でられたら奇妙な感覚がして怒るはずだ。それにしては怒りすぎている気もするが何かあったのだろうか?


  「いえ、気づいてないようなのでもういいです」


 何処と無く諦めたような拗ねたような顔を見せながらテレザはこっちに来いと手招きをする。周囲を確認して思ったことは俺たちのじゃれ合いすらも周囲は気にせずまったりと食事や買い物したりしたのギャンブル見てたりするのな。


 流石、賭博場と言うべきか、喧噪一つでは自分に降りかかってこない限り、日常風景でしかないのだろう。周囲の人間は呑気に休んでいる。


  「俺も一休みするかねー」


  「もう、やんちゃはしないでくださいね?」


 俺は独り言をつぶやきながらテレザのいるベンチとテーブルまで行く。


 そのテーブルにはアイスが二つあった。アイスはコーンに台座がついている物で一つは淡い緑色の丸いモノ、もう一つは鮮やかな赤と白のコントラストの映えるソフトクリームだった。ソフトクリームの方は若干溶けかかっている。もう一つは付属のスプーンで一回すくって食べた形跡があるものだ。


 先ほどまでいたのでそこまで距離は無かった事もあり、俺はアイスを眺めて歩いている間にベンチの向かいに一つある四本足のプラスチック椅子に腰を掛ける。


 どちらかは俺のモノの可能性があるが、先ほどのやり取りのせいか尋ねる事も出来ない。と言うか、普通に会話もキツイかもな。そう思いながら手持無沙汰てもちぶさたにしていると淡い緑色の方をテレザは持ってスプーンですくい始めた。


  「はい、これレイさんのです」


  「あの、俺にスプーンくれない? 恥ずかしいんだけど」


 --すくい始めたので、それを食うのかと思ったのだが違ったらしい。そのスプーンは、こちらの顔に突きだされている。


 テレザの顔は至極真面目だ。ある意味風情が無い、真剣な瞳でこちらを見ている。先ほどとは別の意味で目力が強い。ついでにこちらの言葉は無視されている。


  これは逃げられそうにないな。


 何故、こうなってるのか分からないがじーっと見られる視線と突きつけられたスプーンに溶けたらアイスがもったいないので、うむ儘よ。


  「頂きます」


 食らう、食う間際に笑みを浮かべたテレザを見た気がしたがやはり恥ずかしいから良くは見れ無かった。ただ、淡い緑色のアイスの味はミントにソーダを混ぜた様な特殊な味だ。俺の好みに近い味だったのはとても行幸なのかもしれない。


  「美味しいですか?」


  「美味しかったよ。しかし、急にアイスを食べさせてくれるとはなー」


  「これ位はさせてください。折角アイスを持って来たのに寝てたんですし」


 それに関しては言葉もないので甘んじてこの公開処刑ともいえるアイスを食べさせられることを受け入れる。これは流石に目立つのか周囲の人間がこちらを見ている事がたまにあるのは間違いなく気のせいではあるまい。


 これがまだ序章に過ぎない事を俺はまだ知らなかった。

間に何があったのかは自由に想像してください

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