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賭博場のデート 前編

  「よし、気にせずに行こう!」


  「えっユミさんは?」


 そう言って玖珂の方を眺めるテレザ。だが、肝心の玖珂は決して少なくはない観客をぞろぞろ引き連れて次の賭博台に移っていた。


  「放置しよう。そうしよう」


  「馴染んでるし、良いと思うぜ」


 ディアスは別に馴染んでるからほっといてやれとでも言うように金をコインに変換しに行った。俺はもういいやと言う感じだよ。多分だが、あいつは上手くやる。そのような感じがある。


  「良いんですかね? ユミさん結構暴走しがちだと思うんですけど」


  「それに関しては気になるけど大丈夫な気がするんだよ今までのノリ的な意味で」


 テレザは納得しきれておらず、表情が硬かったが、今日は奴の面倒を見ずに遊ぶと決めた。


 なので、無視する。


  「よし、こんくらいでいいか おーい少年、少女たちよ コインをおじちゃんが配ってやるから来なさい」


 ディアスは換金から帰ってくると千枚以上はありそうなコインを三等分する。にこやかな顔が近所のオッサンめいてるが、配るのは賭博場の限定通貨コインである辺り何とも言えない。


  「ありがとうございます! ディアスさん」


  「応よ、嬢ちゃん、なんだーレイその顔は、コインやらんぞ」


 どうやら顔には出ていた様でコインを貰おうとしたらいきなりコインを入れ物を天に掲げられた。身長差が十センチあるので跳んでも合わせて飛ばれてるのもあって届かない。


 地味にウザい


  「ぴょんぴょん跳んでウサギさんかな?」


  「なら、お前はコウモリかよ」


 視線で射殺せたなら多分どちらかが死ぬその位に場の空気が暖まってきた。


  「そんなことしてないで早くしてください」


  売り言葉に買い言葉で喧嘩が発生しそうになったがテレザの冷めた言葉で正気に返る。いや、自分たちで言うのもアレだけど熱しやすくて冷めやすい。


  「あーくだらんことしたな。ほい、レイよ遊んで来い」


  「こちらこそ、遊んでくるよ」


 そんなこんなで、賭博場での遊びが始まった。


  「何所行くよ?」


  「カードの方行きません? 一番遊びっぽいですし。もしくは動物レースとか」


 ルーレットやスロットの方は確かに、ギャンブル好きでもない限りあまり魅力的には映らないかね。とりあえず行きたいとこはまだ、なかったのでテレザが指差して行きたいと言っている所について行く。


 俺が後ろからついて行くと何故か安堵した様子になるテレザに何か考えるものがある。んーよし。


  「よし、んじゃカード台にでも行きますか。姫お手を拝借」


  「ふふ、エスコートしてくださいね。騎士様」


 俺はそう言って片膝をつき手を差し出す。すると意図に気付いたのか笑ってこちらに手を差し出してきたテレザ。顔が赤いけど大丈夫だろうか?


 こうして俺たちはカード台まで手つなぎで行く事になった。うん、賭場のテンションって凄いね。後で冷静になってこの時の事を思い出すと顔を真っ赤にすると思うんだ。


  「青春っていいねー俺はスロットかな?」


 後ろの不良領主の言葉が耳の片隅に何時までもへばりついて行く


  「カードゲームがギャンブル代わりになっている所もあるんだな、ここ」


  「見たいですね。流石にルールわからない物もありますけど」


 テレザの手を引きカードゲーム台の方を歩き回る。チキュウから人間が来ていると聞いているからトランプがあるのには驚かない。しかし、どっかで見たことあるカードゲームがあるのはどういう事だ?


  「この台のカードゲームに見覚えでもあるんですか? レイさん」


 俺がつい顔を向けたガラガラに空いた緑色の台。テレザが見覚えがあるのかと顔を向けて聞いてきた台に置かれているカードゲームは、単純なルールは三すくみで成立するカードゲームだ。


 父さんの子供の頃にゲームから発展して生まれた物で原作ゲームと共に衰退していった物だ。俺も父さんも新作が出ないと分かった時どうしようもなくやるせないモノがあふれてきた物だ。


  「……懐かしいな」


 言葉が勝手に溢れ出す。どうしようもなく懐かしいという感情が胸を去来するのだ。


  「やってみます?」


 俺の顔を見てなにかを感じ取ったのかテレザは綻んだ笑顔でこちらに聞いてきた。


  「いいのか?」


  「ええ、良いですよ? 遺跡探索の件や前町の件で苦労かけてきましたし、我儘を聞く立場になって見たいなーとは思ってました」


  「しかしな……」


 迷惑をかけてきたのはこちらも一緒なんだがな。


  「ああ、そうそう。ただ見ているだけなのも退屈ですので一つだけお願いさせてください」


  「お願い?」


 テレザは腰を捻り上目づかいでこちらを見る。媚びるというよりは茶目っ気を見せているという感じだ。口元に指を当てるその動作はこれから言う事を気にしてくださいという合図らしいと姉に聞いた事がある。


  「はい、どうせですので勝ってきてくださいお願いですよ。騎士さん」


 この店に入った時の続きであるその言葉であえて返すテレザ。多分、それには最初の出会いからある関係性にも掛けているのかもしれない。


  「ああ、言ってくる」


 なので、我儘を通させてもらう。


  さて、緑の台へ!


  「NewChallengerの登場だ!」


 緑の台に行くと弾ける様な声でアナウンスが流れる。えっこんなに目立つゲームだったの?


 今、思えば挑戦者がおらずに台でじっとディーラーみたいな人が座りながら待ってた時点で気にするべきだったのかもしれない。


 ずらっと先ほどのアナウンスに引きつられて観客が俺達を囲み始めた。


  「お客様初めてですか?」


  「一応ここでは」


   「分かりました。ルールを説明します」


 大体は元々知っているルールと一緒だった。基本三すくみで魔法なら剣に勝ち、剣なら拳に、拳なら魔法に勝つというゲームである。


 更にこれに数字が関係し数字が同格の同種なら引き分け、剣と拳なら同数以上で剣の勝ち、正し拳の方が数が二以上大きければ拳の勝ちになるゲームだ。


 元のゲームはこれに色々複雑なイベントカードやら剣、拳、魔法のカードにキャラ絵と効果がついているのだが、これには見えなかった。


 ただ、数字が弱いカードには色々と効果が付いており、三十枚から二十枚選びプレイするゲームとなっている。


 元のゲームから大分ルールが変わっているようだが俺は勝てるのだろうか?



―――――――――――



 勝負は殊の外、長くは続かなかった。手札の引きも良かったのか展開も早く終わった。ただ、本当に強かったので喉はカラカラ、汗はびしょびしょ、目はパシパシに乾いている。


  「なんと、なんとなんとぉおお!! New Challengerが勝利したぁ!! この度、二十年間無敗のゲームマスターに勝利したのは今日賭博場に入ってきた名もなき少年だー!!」


 うん? 二十年間無敗? 確かに強かったし、このゲーム運が入る部分はこのカードプール範囲だから無いけどやたら強い人と戦っていたんだな?



  「いい勝負だった。久しぶりに楽しいゲームだったよ」


 そう言うと先ほどまで戦っていた黒髪、褐色肌の青年が握手を求めてきた。その目には強い敵と戦えたという誇りと、次は負けないぞと言うという向上心に満ちていた。


  「そうですね。次があったらよろしくお願いします」


 無難だが、俺はそう返す。というか咄嗟だったのでいい感じのセリフが思いつかなかった。ただ、絶対に言わない様にしていたセリフだけはあったので、それを言わなかった事だけは幸いである。そう例えば、


  「運が良かったからですよ」


 とか


  「実はルールを知っていたのです。それを知らないと思っていたおかげで勝てました」


 とかは相手の誇りを傷つけるだけなので言わない。


 きっと俺が素人かどうかで油断したり遠慮するような人間でもないだろう。故にこの結果は純然たる実力の差。相手もその点については分かっているようだなので今は純粋に勝利について喜ぶ。


 いつの間にか人の壁ともいうべき観客に包まれていた。その観客の言葉には良い戦いだったぜ! とかの健闘を称える声や、運が良かったな等のやっかみも混ざっている。しかし観客の大半は興奮で声にならない歓声を上げていた。


 割れる様な歓声に、そして何よりも後ろのテレザに向けて感謝が伝わるように、手を上げて喜ぶ。


  「約束、守ってくれましたね」


  「ああ、騎士ではなく英雄になってきましたよ姫ってな」


 その言葉遊びは解り辛いとテレザに言われたが、伝わっているようなので気にしない。参加費のコイン三十枚は百倍の三千コインへと変わった。キャリーオーバー故にこの枚数だったとの事だが本当に無敗だったんだなーと思わせる。


 ジャラジャラとなるプラスチックっぽいコインの入れ物が重い。換金すべきだろうか?


  「何かちょっと怖くなってきたのでそろそろ抜け出しません?」


  「ああ、同感だ。それではさらば!」


 流石に時間がたち興奮が冷めてきたのかちょっと緊張してきた。テレザもそうなのかこちらの服の袖を掴んでちょいちょいと逃げないかの合図を送ってくる。


  「あっちょっと名前は?」


  「レイです。ありがとうございました」


 歓声に包まれる中、最小限の質問に答えてそそくさと台を離れる。時間も経てば落ち着くだろう。


  「ふはははは! わが勝利を妨げるものはいっなーい!」


  「流石ですユミ様!」


  「メ・ガ・ミ! メ・ガ・ミ!」


 別の台ではまだ玖珂が派手なことやらかしているようなので少し経てば騒ぎも落ち着いてくる。うん少し物悲しいな。


  「ふふ、本当にありがとうございました」


  「んーいや、まーアレだ」


 店の壁際まで退避し、騒ぎに巻き込まれないようにする。台の上でカードゲームをしていただけなのに全身汗でびっしょびしょだ。けれども顔が熱い気がするのは運動のせいだけではあるまい。どうせだもっと楽しむか。


コイン一枚・金貨一枚くらい


 つまり一万枚のコインは一千万円です

カードゲームの方は持ち込んだのはナナセです。ルールが違うのはうろ覚えで再現した為です。


後、トランプはナナセじゃありません。もっと前の人です


正直、カードゲームの作品でもないので勝負は省略

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