賭博の女神様
多分、俺とテレザがわきに抱えられたのって、俺たちが飛べないってこと以外にもきっとシグさんの事手伝うと思われたからなんだろうなぁ……と後ろの怒声をBGMに考え事をする。
空を翔るこの空気の顔の当たり髪が揺れる程よい感じ。朝と昼の中間の日差しがとても日向ぼっこに最適そうだ。
「現実逃避しても仕方ないですよ? 所で上から見る街の景色って綺麗ですねー」
「あははー、君も人の事は言えないぞ。テレザ」
隣の腋にいるテレザと現実逃避をしながら話し合う。お空って綺麗だよなー
「ディアス、どこいくのー私的には屋台希望!」
「朝食食ったばかりだぜ!? まぁ嬢ちゃん達が来ると思っていなかった頃は『ここ』に行く予定だったんだがな」
「「?」」
「それは、何やってるんですかぁ!」
『ここ』のジェスチャーは俺たちにとってはサムズアップして手を上下に振っているだけだったがテレザにとっては違うらしい。顔を真っ赤にして噛みつかんが如くディアスを見ている。
俺にとってはそんな事よりも、サムズアップして上下に振った手が俺の方だった為死に掛けたというのが一番の感想だ。
「何となく何処に行こうとしてたかわかった。不良領主だなあんた」
「力は抜ける時にヌクんだよ。上も下もな」
「奥さんに言いつける?」
「ゴメンナサイ。やめてください」
真っ赤になってフーフーと睨んでるテレザを横で他愛もない話をする俺達、大体スピードが落ちてきたって事は元から目的地決めてたなこいつ。
「まぁ確か、この辺りか楽しめると思うぜ?」
ディアスはそう言うとゆっくり降下していった。城下町の南東の方にある少々薄暗い場所に下される。
「わぉ、ザ・路地裏って感じだね」
「何所か懐かしいです」
「観光名所じゃなくて何故、路地裏……」
路地裏だがあの時ほど治安が悪いという訳ではなさそうだ。皇都と一地方の町では治安の違いがあるという事だろうか?
「こういう所ほど治安が悪くなると感じたのだけどね?」
「まぁ、そうならない様に気をつけてるからな俺達が、と言っても治安がいいだけなんだが」
そう言いながらどんどん歩いて行く、人もどんどん少なくなって行く何処に向かっていくのだろうか?
「つまり、ここで金を落として治安以外にも貢献しろと?」
「その気も無い訳ではねーがまぁ、結構いいものが流れているんだよここではな。行こうぜ」
何処に行くのかわからない為、どうしても足取りが鈍くなって行く。その中でテレザは故郷に似ている為か足取りが軽い、玖珂は常にテンションが一緒なので気にしない。
「おっここだ。ここ!」
そう言ったディアスが立ち止まり指を指した建物は確かに『遊ぶ』事に関して右に出るものがいない場所だった。
「おい、ここって?」
「あーなるほどここは確かにね」
「もう、ディアスさんに期待しなくてもいいですか?」
ドギツイ色の看板は、ネオンもないし、日当たりも悪いのにとても目立って見えた。
「カジノか?」
目立たない場所のはずなのに、やたら存在感を示す建築物に俺たちは圧倒される。
「真昼間からここですか……」
「よし、行く!」
「レイ、テレザ、置いてくぜ」
うん、訂正。俺は圧倒されたが他の人は思い思いの行動をとっていた。
「置いてかれちゃいましたね?」
「仕方ないし、行くかテレザ、手を出せ」
「えっ? はい! 行きますか」
仕方ないので俺達もカジノっぽい所に入って行く。正直に言うとこういう所は、はぐれてしまいそうな印象が俺にはあった。
これ以上の分断は避けたいのでテレザとは手を結んだ状態で賭博場に入店する。その際、何かテレザの顔が赤くなったのは気のせいだろうか?
「何か役得って感じなのでしょうか」
「どうしたテレザ。 役得?」
「いーえ。 何でもありませんー♪」
ともすれば喜色満面と言った感じで握り合わせた手を振って、シックな雰囲気に似合わぬ看板の賭博場に入って行く。
「うん、意外だな」
「確かに、なんというか想像していたよりは綺麗と言いますか? 外観で損してません?」
賭博場は賭博場であったのだがとてもムーディーな曲の流れる落ち着いた所だった。俺たちは顔を見合わせ改めて店の中に入って行く。受付の話では入店料が、掛かるそうだが既に支払われているそうである。
「おーい! こっちだぜ」
「遅いよ。ムシャムシャ」
会場の受付付近には既に食べ物を買ってもらっていた玖珂とディアスが待っていた。
「なぁ、テレザ」
「言わなくてもわかります。数分なのにあの人なんで食べ物買って半分も消費してるんでしょうかね?」
入るまでに数分と言うか二分位のはずだ。なのに、玖珂は何故かそこそこの大きさのプラスチックっぽい皿の上のサンドイッチらしきものを半分減らしている痕跡がある。
「まぁ、嬢ちゃんの早食いには俺もびっくりしているがそんな事より、俺が紹介したい事は別にあるついて来いよ!」
「うぐうぐ。お皿ありがとうございました。待て」
そう言うとディアスは背を向けて手を来いとでも言うようにスナップさせる。それを追い、速攻で皿の中身を空にして返却する玖珂に俺たちはついて行けなかった。
「おい、説明!」
「レイさん、諦めましょう行きますよ!」
「ちょっと! 手はそっちには曲がらー」
勝手に話を進めて先に行くディアスと玖珂に流石にまた置いて行かれる訳にも行かず、俺は止めようとしたが徐々に速さを上げるあいつらの背は遠くなるばかり、仕方ないと言わんがばかりの表情を隣のテレザがしたかと思うといきなり俺の手を掴み突っ走っしる。
急に手を掴まれたためおかしな状態に手を捻りながら走る羽目になる。あいつらあったら覚えておけよ。そう心に今、誓った。
薄暗い飛行機の発着場みたいな通路を抜けてさらに奥へ俺とテレザは歩みを進める。店の先、ディアスと玖珂を追って進んだ奥には、思いもがけないものが多く存在していた。
「一転してすごく騒がしいですね」
「流石に中心地だからな」
ディアスたちと合流して店を見回し感想を一言、店の奥は多くの人ががなり声をあげてギャンブルに精をあげていた。
「買店もあるんだな」
ルーレット、カードゲーム、闘技場、服屋、武器屋、家具店、ギャンブルと言うギャンブルと店と言う店が詰まっていた。
「チップをそのまま商品に換えたりお金でも買えるらしい。当然、チップの方が安い」
あの店の大きさにどれだけ……ああ、エリジアの宿屋と仕組みは一緒か……
「家ぶち抜いてくっつけてる」
「まぁ、俺達もびっくりしたもんだよ。最初は路地裏に賭博場が出来たと聞いてこっそり遊びに行った。しかし、入ってみると建物の大きさと店の中が噛みあわないってな」
うん、こいつは根っからの遊び人のようだ。初めて会った時と比べるとディアスを見る目がだいぶ変わる。それはテレザも同じようで大分胡乱な目でディアスの事を見ていた。
「まぁ、これは個人的にアルカに報告して聞いたらな。民達の娯楽を取り上げるわけにもいかないってんで、こうやって偶に俺達がこうやって問題を起こしてないか監督するに止まっているってっ訳さ」
そう言ってドヤ顔を晒すディアスにイラッとするものが無い訳でもないが、理屈は分かった。確かにこの手のモノは黙っていてもまた出来るしな……
「それなら気にしていても仕方ないし遊ぶか」
そう皆に呼びかける。すると各々反応を示すわけだが、
「そう来なくっちゃな!」
「そうですね。もう少し落ち着いた場所に観光しておきたかった所ですけどここも楽しそうですしね」
もう一人、いるべき人間からの反応は無い。所で、ここにいるのはいつの間にか俺、テレザ、ディアスになっているのだが何処にいるのだろう?
「すまん、玖珂は何所だ?」
「うん、玖珂の嬢ちゃんならあそこだぞ?」
俺たちは中央の場所に指を指すディアスに目を向けた後、指された場所に目を向ける。そこにはルーレットで山盛りのコインを抱えた女性の後ろ姿と何か血走った目でその女性のコインとルーレットを眺めている人影が多数いた。
「フィーバー!!」
ルーレットの回転が終わる。女性はガッツポーズを決めて飛び跳ねていたコインの数が倍ぐらいに増えている所を見るとどうやら勝利したようだ。
うん、声がめっちゃ聞き覚えある。
「嬢ちゃん勝ってるねー」
「スゲーな俺にも稼げるコツって奴を教えてくれよ」
「押すな、押すな、この勝利の女神、玖珂・ユミの加護を授けてやろう」
「「「「「ハハァー」」」」」
山盛りのコインを携えて、賭博台と言う名の賭博台を程よく荒らしまわり、幸運の女神として信者を増やす玖珂の姿がそこにはあった。
何してんだよあいつ。
吸血鬼だけどディアスさんは今朝も元気です




