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皇帝の寝室で 彼らなりの答え

  「父さんを超えてみたい」


  「だから苦難には挑戦するし、人を見捨てない。そして父さんの顔を見る為には帰らなければならない!」


 そう、今の所俺如きが出せる答えなんてそんなものだろう。今まで息が詰まりそうなほど考えて考え抜いた結論はそんなちっぽけで男の子なら当たり前に持ってる純粋な願いだった。


  「く、はははそうか。なるほど、なるほど」


 大きな声で笑う。笑みを堪え様として我慢してたが堪え切れずに、身体を九の字にしながら大笑いしている。


 アルカンナさんの表情は今まで以上にとてもいい笑顔でまるで大輪の華の様に綺麗であった。その表情は改めて容姿だけなら俺と近い年代であることを認識させる。ただ、そのままの姿勢だと……


 ゴツ


  「痛いな……」


  「あー大丈夫ですか?」


  「うん、大事ない」


 アルカンナさんは机に頭をぶつけてしまう。手のひらをこちらに向けて顔を横に向けている。小さな音であったから無事だろうけど精神には大きなダメージを受けたようだ。テンションがやけに下がっている。本当にどじっこみたいだな。


  「しかし、そうか。お前は道を自分で見つけたのだな。小さくても良い道じゃないか」


 そう言うアルカンナさんの顔はとても羨ましそうだった。まるでそれは、自分のできなかった事をできた人見る目であった。その俺の視線に何か気づいたのか、アルカンナさんはポツポツと独り言をつぶやき始めた。


  「私はな、君みたいに選べなかったんだよ」


  「かつては戦争があって、私には救う力と立場があった」


 立ち上がり窓の方を向き空を見上げながら言う。


  「一応、身内を殺されたという理由もあった気がするし、|命を救ってくれた人(君のお父さん)が示した道だ」


  「でもそれさえ、時代に流された結果だった。私が選べた訳じゃない」


 それは、|今(俺)はなしている相手に背を向けて語るそれは、多分過去を語ろうとしているのだと思う。


  「後悔はないよ。望んだことでもある。人の笑い声が聞こえる世界も流されていく過程で願ったことだ」


  「でもやはり自分の意思で選んで進んでいる者を見ると稀に思う事がある」


 戻れない過去を眺め、|眩(羨まし)い未来から一時目を逸らしながら。


  「流されて皇となった私は、今の家臣たちに国民たちに誇れる皇なのだろうかと……」


 きっとそれ以外にも思う事はいっぱいあるのだろう。窓に映る彼女の顔は悲しそうな、愁いを帯びている顔に近い複雑な顔をしている。


 当初、何故このような事を語りだしたのか、俺には分かっていなかった。


 でも、話を聞いて行くうちにわかっていった。


 当然の疑問であり、悩みだ。


  皇帝だって、普通の人なんだから。


 そう、誰だって普遍的に思うものだ。


 自分は本当にこの仕事であっていたのだろうか?


  この仕事には適任者がいたのではないだろうか?


   自分には適職があったのではないだろうか?


    この道を選ばなければ得られた幸福があったのではないか?


 あれこれそれ、その悩みを俺は完全に払しょくする事も背負ってやることもできない。無意識に握りこんでいた手を解きながら俺は窓を眺めているアルカンナさんに俺はただ、話すべきことを話した。



  「歩いて行った町は少ないし、触れてきた人も少ないけど、アルカンナさんの治世のおかげで色んな物が生まれてよかったって人の方が多かったですよ?」


 アルカンナさんは俺の言葉にこちらに向かい緩やかに振り向く。振り向く中でまるで年頃の少女の様に驚いていたふうに見えたが気のせいだったのかもしれない。今は俺の言葉を真剣に聞いている。何処か切実に。


 確かにアルカンナさんの進んできた道は誰かに選ばされた道かもしれない。もしかしたら、他にもっと良い事をできた人がいるかもしれない。


 だが、今まで歩いてきた町の中には魔導列車や飛空艇、遠距離通信道具もあるとか言ってたか。そんな便利な物が増えて良かったと言っていた人がいた。


 今まで碌な職業に就けなかったけれども今は図書館の司書に就けるようになったので良かったという人もいた。


 平和になったお蔭で今まで中止も多かったイベントもまともに出来る様になった都市もあった。


 大きく息をすい、呼吸を整える。確かに大魔王時代が良かったという人達もいるけれど、確かに今、アルカンナさんの治世で救われている人がいる。だから、


  「見当違いな意見なのかもしれません。あなたが悩んでいる事は、正しくは自分で未来を選択できなかった事なのですから」


  「いい、言ってみろ」


 こちらの言葉に|正面を向い(現在にきっちり目を向け)て聞いている。その真摯なまなざしに、俺の心音も高鳴る。ここまで真剣に耳を傾けてくれる人を目の前にするのは初めてだからなぁ……


 故に、手に冷や汗を握るが何故か悪くない気分なのは決して気のせいなどではない。 つっかえないように注意しながら次の言葉を紡ぐ。


  「きっと誰だってそうですよ。望んだとおりに所か生き方そのものさえも望めず生きている者が多いと思う」


 そう、誰だって本質的に自分で道を選ぶことは難しい。


 大体は環境がそうさせないし、才能がそうさせない。きっと選んだつもりが選ばされてる事も多いだろう。


 争いのないチキュウでさえそうなのに、この世界は更に大きな戦いが続いていたのだ。だから、選べなかった事に対して別に悩む必要などないのだと思う。


 答えにはならないと思うけど、それでも誇っていい道を歩いていると思うから、俺は右手を自身の胸の方に当てて肺から強く音を出すように声をあげる。言葉は上手くないから、せめて気持ちだけでも届いてほしいから。


  「だから私は……いえ、俺は貴方の進んだ道を尊敬し誇ります。戦乱を収める為に自身を投げ出した素晴らしい親族がいたと」


 万感を込めて言葉を発した。彼女は変わらずこちらを眺めている。俺は最善を尽せただろうか? いつも言葉を出してからそう思う。


 だって何度も思うのだ。本当にこの人が思っている事の答えになっていない。彼女は選択できなかった事に対して悩んでいるのに俺はそれでも良かったとしか言えていない。


 この時、俺は改めて浅い経験しか詰めていなかった己に対して表には出さぬように嘆いていた。上手く自分を隠しているが佇まいだがアルカンナさんは悩んでいたのだろう。


 期待されているから周囲に言い出せなかった悩みをぶちまけてくれた。あったばかりなのに、身内と言うだけで、俺はそれにこたえる事が出来ただろうか?


 決意を込めた瞳でアルカンナさんの反応を見る。肩を震わせている?


 顔を伏せたままゆっくりとこちらに近づいてきた? 一歩、二歩、少しずつ近づいてくる。


 なんだろう顔が下向いていて怖いのだが。


 表情が読み取れないというか、間違いなく読み取らせない様に歩いている。


 三歩、四歩とてもゆっくり歩いている。静かに歩く姿は若干怖い逃げた方が良いのだろうか?


  ――逃げられないな、自分で言った言葉には責任を持たなくてはいけない。


 そう思い、逃げようとしていた足に喝を入れ覚悟を決めてアルカンナさんを見守る。距離にして後二歩ほどでこちらまでつくよな……と思い覚悟を決めたはずなのに身構えるのは正直許して欲しい。


 一歩、すさまじい気を感じる体格は変わっていないはずなのに大きく見える。


 一歩、ほぼ至近距離、手に完全に嫌な汗がどくどく流れてくる。ままよ。


 そう思い改めて正面に意識を戻そうとすると不意に頭に暖かいモノが当たる。


  これは、手?


  「まったく、何度も言わせるな、っというのも理不尽だな。からかってすまない。お前の言葉は未熟なモノだったと私も思う。だが、元気は出たよありがとう」


 そう言うと優しく抱きしめてくれた。ゆっくりとした動作故に、逃げようと思えば逃げられた。正直、エリーゼさんのせいで抱きしめには若干恐怖もある。


 しかし、抵抗できなかったのは、彼女がお礼としてだけではない理由で抱きしめていたからなんだと思う。身内のぬくもりを感じていたかったのだろう。抱きしめる力も段々強くなってきた。家族のいない世界で一人生きる事の辛さは今の俺ならある程度分かる。だから、俺も素直に抱きしめられておこう。


  「いえ、こちらこそ本当にありがとうございます」


 メシ、メシ



 うん、万力みたいに締め上げられてるけど我慢だ。俺!

そして、唆していた父さん



仕方ないねん


彼がこうなってしまうのは身体能力差です

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