友達に合うとテンションとか変わるよね そして動乱の時
「つーか、うるさいのだけれど。なによあのノックは、わざわざ鐘を設置したのが分からないの?」
先ほど扉を開けて現れた。美人の女性が気だるげにエニグマに文句を告げる。古臭い、もとい歴史のある家に似合う。とてもそれらしい格好をした女性だ。ローブにスリットが空いてたり、胸元に大きな丸い穴があいてたり、所々性的な部分もあるが。
「いやーごめんまるでかつてからあったかのように主張されてのが妙に癪に触ってついね」
俺にも言っていた不満な点をわざわざ本人にもいう、遠慮という言葉が欠片もないその態度が往年の友人であることを想像させる。あー薄々わかってたけど、友人の家に向かってたのね
色々考えていると、表ではいつの間にか、より白熱した舌戦が繰り広げられていた。
「あんたは、今まで古臭い城で剣のお守りをしてたかと思ったら、なんかどこかで見た事のあるような人を連れてきたと思ったら何! 久しぶりに会った友人の家にケチつけるとか何よ! アンタは家に合わせた物をつける事の何がいけないって言うのよ文句アンの?」
怒声が鳴り響く、俺は蚊帳の外でも口を開くと現れる言葉のレパートリィには驚嘆の言葉を送りたし気持ちで溢れるものがある。
「剣のお守りとはなんだよ、これもあの方に頼まれた重要な役目だよ! それに昔なじみの家が何か変わってたからイラッと来ただけだよ! ごめんネ! 」
とはいえエニグマも負けてはいない。女性の言葉が終わると同時に言い返す。譲れぬものでもあったのか、言葉には力がこもっている。ただ流石に、自分が悪いとは思っているのか最後にはきちんと謝っているあたり、傍若無人になりきれないエニグマだった。
そして、多分だがこんな感じで、ずっとケンカしてきたんだろうな、こいつら……まぁ仲良くケンカしてそうな相手だがそろそろ止めないと、話が進みそうもないので止めてみる。
「まぁまぁ、そろそろ落ち着けって」
「「黙ってて!」」
はい、って少々屈しそうになったのはナイショだよ。ここで堪えなくては本当にヤバそうなので止めに入る。無言の静止になってしまったのは威圧に負けたからではない、断じてない。
「ちょっとあんた……まーいいわ! それよりもあんたさどこかで会わなかった。なんか見たことあるような? 全くないような?」
そう俺の顔を見ながら口にする。首を左右に振るのは少々可愛らしいかった。そして、なにが言いたいのか大体分かった。しかし、正直に言うのは少々めんどくさいので黙っている。
「まぁ見たことあるのは当然と言えば当然、彼はナナセ殿下の息子さ」
すると、エニグマがあっさりネタ晴らししてくるああ対外的には殿下って言うのね。その言葉を聞き女性が驚きながらこちらをじろじろ見る。特に顔と髪の毛あたりを見て得心する。
「ああ、確かにその顔と髪の毛は殿下にそっくりね。あの人生きてたんだ……」
毎回、父さんの知り合いに合うと父さんが死んだ扱いになってるのはなんでなんだろう? いつか詳しくエニグマあたりに聞いてみたいものである。
「俺の名前は黎って言います。すみませんがいい加減、貴方についてエニグマでもいいから教えてくれませんか?」
あーといった顔で二人とも顔を見合わせポリポリと頬を掻く。どうやら身内だけで盛り上がっていたことに気付いたようである。
「こいつ「私の名前はエリーゼよ」だよ」
二人同時に答える。エリーゼか、意外と普通の名前だなと思った。答えがはもること自体は今までのノリから大体わかってた気にしない。
なんかまたにらみ合いでもはじめそうな雰囲気だったので宥めておく。そしてすかさず話題転換しておく。
「所で、エニグマはエリーゼさんの所で何をするつもりだったんだよ?」
正直、またケンカになりそうだったし、そろそろ本題に移っておきたい。
エニグマがエリーゼさんの所に向かったことは、俗世から離れて剣を守っていた分、今の世の中に疎い部分がある。それを埋める為にも旧友がいそうな所を訪ねた結果、今もエリーゼさんがいるこの家に辿り着いたのだろう。
エリーゼとエニグマがまだ何か言いたそうにしていたが渋々、といった感じに収まる。流石に双方も大人なのかどちらも落ち着いて対処する。
「まぁ、わかっているとは思うけどここ最近の世界情勢などについて聞きたい。教えてくれないだろうか」
「流石にそれじゃあ大雑把すぎるでしょ……まぁいいわ百年くらいじゃあまり変わらないしね。とりあえず大まかに言っておくわ」
いや百年あったらだいぶ変わるよ? ちょんまげがなくなったり、半分の五十年でも白黒テレビが薄型3Dテレビ位かわるよ?
そのような俺の疑問も関せず、エリーゼさんがここ最近の情勢について説明する。ここ最近は確かにあまり変わってないわね。
魔法で遠くの情報を伝えられるようになったり、ギルド? ってものができて窮屈になってきたかしら。
そういえば、民間の飛空艇がそろそろ完成しそうという話も聞くわ。そういえば、昔と違ってここ最近は戦争してなかったから金銭の価値が最近では浸透しきったところかしら?
どこでも同じお金が使えるって便利よね。例えば、覚えてる私の愛飲してた酒が今では金貨一枚、そこそこの宿が金貨五枚位で泊まれるわね? そうそう、最近、弟子をとったわね。
明らかに大陸の情勢ではない情報の羅列が話されていた。というか、個人的な物が何度も、何度も、混ざっていた。しかし、無駄なものばかりではない。特に、貴重な情報は技術革新と紙幣価値の浸透があったということなのだろう。どこでも大体同じお金が使えるということは大分ありがたい。
貨幣交換をしなくていいということは、どこでも緊急でお金を使わなくては行けない時でも焦らなくていいということだ。
身近な所では、医療にかかる時や飢えている時に、食料を買う時等がそれにあたるだろう。この際にお金別の通貨で払えなくては、死につながる危険性もある。後、個人的に一々交換するのめんどくさい。酒を見た感じ、見た感じ、千円くらいのモノの様にも思える為、日本円換算で金貨一枚は、千円だろうか? まぁ物価は、後で市場見たり、エリーゼから聞けばいいか。
「君のおしゃべりに付き合っている気はないんだけど」
俺自身はうっとうしいモノが有るものの得るモノが有ったわけだが、この世界に元から住んでいて、外世界にあまり興味がなさそうなエニグマにしてみれば、ただ長い話のようである。煩わしいと言わんがばかりに辟易しているようだ。
「君が弟子をとった。という情報は大変興味あるけど、申し訳ないが現在のこの大陸の主な統治者とかこの子に関わりそうな国とかの情報をくれないか? 後、マティウス達の居場所とか知ってたら教えてくれないだろうか?」
手を差し出したジェスチャーをしながら別の話の誘導をする。どうやら、どちらかと言うともっと別の話を聞きたかっただけのようだ。
エリーゼは口を挟まれむっとした様ではあるものの、自分でも世間話が過ぎたとでも思ったのか酒瓶を持ったまま、器用に腕組みをしながら話し始める。
「現在のこの大陸の統治者は魔族と人間のハーフと聞いているわ。噂話レベルの話だと我らが陛下の孫……という話よ? 眉唾だけど、後、かの国は今だいぶきな臭いことやっている気がするわね……」
「魔力の流れがあの国に流れているそのような気がする。近々またやらかすんじゃないかしら、地球への幻想を捨てきれない国ですからねあそこは」
「後、マティウスおじいちゃんについては分からないけどあの人の直属の部下は何かよからぬこと企んでいるのか散り散りに色々な所にいるのよね」
「あいつら昔っから魔王様と四姉弟の事崇拝していて、人間が嫌いなくせに、ナナセ殿下にもお熱だったから全員死んだと思われている今、もしかしたら彼の腰にある剣かそれに匹敵する御魂蔵を持つ神器と中央の塔に匹敵するマナの流れている所を探して、現世に召喚するつもりなのかもね」
話しなげーよと言いたい気持ちすら失せてしまう。どうでも良いと言いたげに、彼女の口からポロポロのろのろと言葉が溢れて来た言葉のおかげで、、
「なんというか、これは……」
エニグマが頭を押さえている。俺も此処の事情は知らないが明らかにヤバいということは分かる。これ本当に重要な情報ではないだろうか?
旧友に合うと連れとか気にせず話し込んでしまうやつです
まぁ協力し合う時以外、荒れている時の方がどんなことでもやりやすいからね。
通貨に関しては金貨一枚千円くらいですね