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一時閉幕

 流石にばれてたか、忍者っぽい奴を二人倒した段階で四方向からの攻撃が来る。正直最低でも全員から攻撃を食らい伏兵の位置を特定しておきたかったが、それさえ読まれていたのか一成攻撃ではなく、一部の人数による四方から攻撃である。


  「レイ、君の予定通り転移使ったけど、三回目は使うのにある程度時間が必要だからね」


  「ありがとう、エニグマ」


 流石に防ぎきれない為、エニグマにまた同じ魔法をしてもらい元の位置に戻った。リーダー格の男がいる限り下手に動いたのなら即、苦無で穴だらけになるだろう。うん、遠距離攻撃の武器は苦無だったよ忍者かあいつら。


  「囮に使ってゴメン」


 玖珂に謝る。下手に行動できないのだが囮に使ったり、演技とはいえ裏切ってしまったことに少し、負い目があったからだ。だが、玖珂は気にせずに


  「いえ、貴方は守ってくれると知っていましたから気にしていません」


 と言った。落ち着いた優しい声で、それに少しドキッとした。いつもそんな感じで居て欲しいものだ。とも感じたが……


 雑談もしてるってのにリーダー格の男は落ち着いてこちらを監視しているだけで何もして来ない。冷静に様子を見て行動を起こす時に攻撃をしてくる。リーダー格忍者は隙がないあたり、ここで目となり、囮となってこちらの行動を監視、制限しているようだ。


  「むっつり忍者、仲間が二人倒されたけど、君は攻撃してこないのかい? 敵討ちって奴をっさ」


 エニグマが挑発をするがどこ吹く風とも言わんがばかりに気にしていない。いや、目が死んだ奴が悪いとでも言うようにこちらを見ている。俺らはともかくテレザはその目に何かを感じ取ったのか言葉を漏らす。


  「貴方は何とも思わないんですか! 仲間が死んだんですよ」


  「殺したのはお前らだが?」


 正論だが、どこかずれている。その返答にこいつは仲間の死を本当にどうでもいいと思っているのだとわかる。


 テレザもそれを感じたのか二の句が継げないでいる。この手のタイプに言葉は不要か、この緊迫の雰囲気の中、誰もがこの場では行動が出来ないと思われていた。しかし、その中で空気をあまり読まずに行動をしている者がいた。


  「ねぇねぇ、レイ君なんで逃げたり攻撃したりしないの?」


 裾を引っ張りそう言ってくる玖珂にイラッとするものを感じる。


  「敵がどこに何人いるかわからないから動き辛いんだよ」


 俺は仕方ないので玖珂に説明する。すると玖珂が恐ろしい事を言い出す。


  「私、人が何人いてどこにいるのか完全にわかるよ?」


 それ、先に言ってください


  「やはり、か」


 その言葉に一番早く反応したのは俺ではなく目の前の忍者だった。そう言えば北の国から追ってきているのだ。うっすらとわかっていたのだろう。その為、後方に全員の位置がばれていると支持を飛ばしているようだが遅い。


  「この世界に来てからと人の気配みたいなものが分かってた。そう、赤い糸も」


 後ろの言葉が余分だが? しかし、便利だな戦場にいる人間を把握できるというのはこれ以上なく都合がいい。玖珂はいつの間にか右手に回っていた。邪魔だよ。


  「ついでに現在この場にいるのは私たちと目の前の忍者を除いて九人。さっきまで攻撃してた奴を除くと五人でちょうど四人の隙間を埋めるように配置している」


  「だ、そうだ」


  「四人の位置は把握してたからね。すでに小細工はしてあるよ。動けない時間は十分あったからね」


  「だからこんな事もできます。フレイムランス!」


  動かずに転移の回復に努めていたエニグマとそして、さっきから静かだったテレザ、がこちらにピースしている。そう、四人は既に把握してある不確定だった五人の情報さえあればどうとでも修正できる。


  「流石に、指示も間に合わなかったか……マヌケどもめ」


 肉の焦げる臭いと上がる炎の柱を見る。この調子だと何人かは倒せたな。


  「三人の気配が消失、五人の気配が小さくなり、一人が健在って所」


 具体的な情報が玖珂から入る。一人は無事なのが痛いが大分戦力は削れたようだ。


  「どうやら、大分戦力は削れたようだな?」


  「大人しく逃げた方が良さそうだけど?」


  「……貴様らは暗殺者というものを舐めている」


 俺たちは挑発して気勢を削ぎ、行動の単純化を目的としたのだが、目の前の人間はどうやら頭はまだギリギリ冷静なようだ。


  「だが、良いだろう我らのあり方というものを教えてやる」


  「こちらに六人全員向かってくる」


 忍者のセリフと玖珂の方向に自分たちなりの気配察知でその事実を確認し迎撃の体制に移る。しかし敵の姿は陰惨なものだった。直撃をギリギリ避けたとしか思えず肉体の焼失したものや、生き残っていたに過ぎない者、何故動けるのかわからないものばかりだ。


  「この状態でも襲い掛かってくるんですか」


  「なるほど、決死隊ってわけだ。レイ、テレザ、僕は健在の奴がいる右側を担当する」


  「頼んだ、すまないテレザ、左側を頼む」


  「分かりました。この状態にした責任もあります、任せてください」


 俺は当然、目の前のリーダー格に目を向ける。さて互いにショーダウンと行くか。


 こうして、追跡者達との最終決戦と相成った。右側をエニグマが、左側をテレザが担当する。そして俺は当然真正面のリーダー格の男と戦っている。肉体を欠損させても戦闘能力を落とすにとどまり戦意を失わない戦鬼の群れに異様なものを感じながら俺たちは相対する。


  「何故、戦う! もう、勝ち目などないだろう」


  「我らにそれを問うのは愚かな事だ。特に貴様自身、自覚もあろう?」


 事実、説得もできると思ってないし興味もそれほどない。慈善家ではないのだ戦いたくもないというのならともかくそうではないのなら切り捨てるのみ。なのに何故、この様なことを聞いてしまったのだろうか?


  「……鬼に憑かれているようだな。貴様こそ死んだ方がよかろうよ」


 俺の言葉を聞いた後、俺を見て得心が行ったとでも言うように、そう言葉を投げかける。隙でも作るつもりか?


  「意味がわからない、俺たちが生き延びる為だそこをどけぇ!」


  「左に行く、そこに剣を向けて!」



 相手の方に駆ける。剣で対抗するにしても早さゆえに届かない。ただ相手の動きは一定だ。自分のペースを守り持久戦に持ち込むためだろうか? 


 どのような作戦があるのかはわからない。けれど、目の前の人間は玖珂を始末せねばならず、玖珂は相手の動きが読める。ならば後方にいる玖珂のいう事を参考に戦術を組めば戦闘は成立する。これはこの戦闘を本格的に始める前、事前に話していたことだ。


  「なるほどな、全てが他者に依存しているわけではない、か。しかし、ほとんどを他者に預けてお前の真は何処にある?」


  「急に饒舌になったな。あんた」


 剣が拮抗した時にこちらの気勢を削ぐ気か、意味の解らない言葉を口走る。こちらを見る忍者の視線は、侮蔑するような、同情するような視線だった。さっきからいったいなんなんだよ!?


  「何、こちらも追い込まれているのは事実だ。その為、少々口がすべっている。無様なものは目に突くだろう?」


  「何が言いたい!」


 忍者の持つ短刀がこちらの胴にかすろうとするのを防ぎながらも必殺の一撃を切り返す。糞、当たらない。言葉に気を取られ過ぎている何故か奴の言葉が耳から離れない。



 その為、当然その隙を狙われる。そもそも、当たるかどうかわからない場面で大降りになってしまったのがいけなかった。忍者のような男がその隙を逃すはずもない。


  「真実は耳を逸らせない……か、最早いう事は無い。無様な奴はそのまま死ね」


 最後の手向けか、そう言葉を口にする。その刹那、速度を変えてこちらに迫る。狙いは首。求めるは必殺。


 言葉に気を取られ過ぎていた。一定速度で動いていた相手の動きが急に速度を変えて首を狙ってきた。人は行動に慣れると急に変わったことをしろと言っても動けない。



  つまり、全てはこの一撃の為の布石。正面からの暗殺術ってわけかよ!


 こりゃ死んだなと思って、悪あがきをしてみるが、大振りの隙でまともに体が動かない。相手は速度こそ早いもののジャブの様に隙を小さくしてこちらの行動に合わせられるようにしている。最小の動きで最大の結果という奴だ。


  「終わりかな」


 そう考えて、俺は死を思っていた。すると身体から余分な緊張が無くなってきた。目前に刃が届くその時まで、そう思っていたんだが、


  「足かっくん」


 誰もが思わぬ伏兵が、普通はしないだろう行動に出た。これが普通の反撃や援護であったならば、忍者も対応できただろう。改めて言う人間は急には対応できないのだ。それは想像外の事でも同じである。


  「何!」


  「……また、貴様か」


 人の身体は大きな行動に出た時、自分の行動で急に動きは変えられない。


 そう、自分からは、外部からは変えられるのだ。しかも、死を考えていた為、体に余分な力が加わってなかった。その為、玖珂に膝を急に曲げられ俺は屈伸のような姿勢になり、俺の首を横切りしようとしていた剣は思わず空を斬る。


 相手は流石にこれでとったと思っていた。ゆえに当然、小さいものの隙もできる。身体もそこそこ伸びているだろう。俺はそこにアッパーを繰り出す。


 「グッ!」


 急であったため、こちらもきちんとした攻撃に出られなかった。しかし、起死回生の一打にはなったようだ。左右の戦闘もそろそろ終わりを迎えている。


  「これで大将を残すのみ、かな?」


  「終わりました。そう終わりです」


 終わったという感情を載せている者もいる。悲しいと思っている者もいる。思い思いの感情を載せてこちらに応援に駆け付ける。


  「……仕方ない任務継続は不可か」


 そう、リーダー格の男が剣を構えて言う。死は免れない、潔くこちらとケリを付けるようだ。 


  「一対一と言いたいけど相性が悪い。多勢に無勢で相手をさせてもらう」


  「なんか不良みたいだ」


 俺はそういうと剣を相手の方に向け、エニグマとテレザ達と協力して相手にあたる。そして、玖珂の発言は無視する。


  「絶体絶命か……」


 諦めている忍者、こいつも人間臭い時があるんだな、そう思ったのが隙だったのか、後ろの行動に対応できなかった。


 「頭目……あんたは、無……い……くれ」


 後ろからの声に気を逸らされる。その声は自決用であろう爆弾を使い、自身の身体を膨れ上がらせた。


 膨張する肉体と漏れ出しそうな何か、そして内側から焼ける臭い。一瞬でそれを判断し、指示をする。あの瞬間で出来る最善ではあった。惜しむらくは、圧倒的に時間が足りなかった。


  「ぬ、皆防げ!!」

 

 伏せろではなく防げ。そう言った理由はただ一つ、これが逃走用だと気づいていたからだ。それでも、大きな音に光はこちらの注意を惹きつけるのには十分で、防ぎきれなかったそれは完全な隙となってしまった。


 光と音と肉片に紛れ、頭目と呼ばれていた者を逃がす結果となる。


 俺たちの耳に残っていたのは、「今は生き恥を晒す。また、いつかケリを付けよう」という先ほどまでとは別人のような奴の感情のある言葉だった。

まぁ、逃げ切れてるからね、だよね

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