雪が雷を成すように 騒乱の種
「近くとはいえ奥まで行くの流石にめんどくさいな」
開口一番の俺の言葉にエニグマは「君が行きたいって言ったんだろう」と言う様な顔をしてきた。
「レイさん。あなたがここに来たいって言い出したんですよ?」
「す、すまん」
テレザにはとても素敵な顔でつっこまれてしまった。不用意な言葉は口にしない。この世界に来て初めてエニグマに出会った時に言われた言葉だったな。
本当に今日は色々な事を思い出すな。ここから先は流石に人の手が入り辛いのか雑草などが多くなる。基本、常葉樹の為、枯れ木が見当たらない。
「視界が悪くなってきたな。思いの外遠い」
「うっ確かにそうですね」
「これは予想外だったな」
時間こそ余り経っていないものの想像していたよりも動きづらいのと見晴らしが悪い為、どうしても時間の間隔を失いやすい。目的地はそろそろっぽさそうなんだけどね。
ちょくちょく、歩く途中テレザが躓きそうになるのを支えたりもした。短くお礼を言われたが顔をうつむかせていたな。なんだろう惚れた? アホか、みたいに脳内漫才もしながら三十分位すると……ようやくたどり着いた。
「うん、そんなに時間経ってないのに結構歩いたように錯覚するねここ」
「うっー確かにそうですね」
「ありがとう、迷惑かけたよ」
到着すると各々がここに来るまでの苦労を口にする。俺は、ついて来てくれたみんなにお礼をいい、改めて岩に対して面を向ける。俺たちはそびえたつ岩場というか洞窟チックに穴の開いている巨岩を見ている。うん、居つくこと出来そうだなとか思ってたけどね。
「何、見てるんだい? レイ……うぇ」
「どうしたんですか? 皆さん、ああ……」
俺の見た物に対して二者ともに異なった言葉を返す。反応も呆れている者にめんどくさそうにしている者と別れている。
この二人の意見が分かれたのには情報を持っているか否かであるのだが、今はその様な事を言うべきではないか。
とりあえず俺はその丸い物体に近づく、恐ろしい声で呻くな。物体G俺は敵じゃないな。
「うっーうー」
こいつ、どこまで時を重ねたらこうなるのだろう? そう考えながら俺はポケットから雑貨屋で買った乾パンのような食べ物をその物体Gに投げ込む。
物体Gは、投げ込まれたものを鼻に近づけながら安全なものか確認して口にする。
どうやら本当にお腹が減っていたみたいだ。今思えば纏う物もボロボロで命からがらこの地まで来たようだ。
クイクイ
「懐かれましたね」
「ねぇ、あからさまにヤバいよね。それ」
それ扱いはどうだと思うが、まぁこれの現状を考えるとそう言いたくなるのもわかる。後、テレザもナチュラルに酷いね。怪訝な瞳で物体Gだった物を見て遠巻きで俺におしつけて見守っているエニグマとテレザ達、お前らぁ。
クイクイ
そんなこんなでエニグマ達と視線の応酬をしていると元物体Gがマントの裾を引っ張り催促してくる。多分欲しがっている物である食料と飲み物を与える。
良い食いっぷりと飲みっぷりで与えた物を嚥下していく元物体G、完全に懐いたのかくっ付いてくる。
「お腹いっぱいになりました。ありがとうございます」
うん、知性残ってたんだね。この黒の長髪の『セーラー服』を着た胸部装甲のでっかい奴。
「貴方いい人ですね。ついでにまだお腹が減っているのでご飯有りますか?」
透き通った黒い目に美麗な長髪(であろうボサボサの黒髪)容姿だけなら絶世の美少女がくーとお腹を鳴らし人のマントの裾をクイクイとさせながらゴハンのお代わりを上目使いで要求してきやがった。
「別にいいけど、俺の名前はレイだが、お前誰だよ」
本来なら教えない方がいいのだが、悪意も無さそうだし話し辛いのでエニグマとテレザの名前を教えておく。その間もやたら目の前の女はお腹をグー、グーと鳴らしていたので流石にかわいそうになったので
「エニグマ・テレザ仕方ないからここで夕飯にしよう。どうせ宿屋は素泊まりのようなものだし」
本当に仕方ないのでここで晩飯の仕度に取り掛かる。エニグマもテレザも異論はないのか準備に取り掛かる。黒髪の女が不審なのか俺に交渉を丸投げして会話しない様に声を出さない気をつけてやがる。目すらも合わせない気をつけているその姿勢にはいじめを彷彿させる。
「貴方のヒロインである。絶世の美少女の玖珂・勇美です!」
はい? この子は何を言ってるんですか? たまらなくなって他のメンツに助けを求める。目線逸らしてやがる。
「ああ、いきなり訳も分からない世界に連れてこられたと思ったら本来持つべき能力を持ってないとの事で命を狙われた所、命からがらここまでたどり着いたんです。そこに表れた貴方はきっと私を助けてくれる運命の人に違いない」
玖珂・勇美と名乗る少女がそう言っている。何故この寒い地域で上も下も色々とボロボロな格好で野生動物みたいな真似してたのかわかったがコイツぬけぬけとよく言えるな。とりあえず料理完成したので食わせるか。
「ああ、うん。まぁ、これでも食って落ち着け。ゆっくり食べろよ」
「ありがとうございます。頂きますね」
鍋で作ったオニオンスープっぽい物とそこからアレンジして温野菜の御粥を玖珂に与える。仄かに薫野菜の甘みとコンソメらしき物が生み出す旨味が体に溶けるように染み込む。湯気もこの夜空には風情があり、スープにして正解だったと思う。
「満たされますねー」 「確かに寒空の下でのむ体の芯まで温まるスープと野菜の付け合せにご飯は格別だねー」
「ほざくな、裏切り者ども」
あはは、ごめんごめんとエニグマとテレザがこちらに向けて手を合わせ頭を下げる。流石に玖珂の相手を任せていたことに対して思う事があるのか素直に謝ってくる。言葉ほど怒ってもいなかったので次は玖珂との会話に混ざってくれたら気にしないと言って許そうとしたが
「まぁ、お前たちも玖珂と会話してみろ」
「頑張って似たものどうしでしょ? 服装的な意味で」
「私、人見知りなんですよ? 初めての人と会話とか噛んじゃいます……」
目を逸らされた。 うんそうだね、チキュウ人っぽいしね。君も確かに俺と会話した時噛んでたもんね。事実を織り交ぜながら言いたいことはただ一つ、「こいつ話通じ無さそうだからよろしくね」ってだけだろう。
そうにこやかな目を向けてやる。エニグマはどこ吹く風で受け流してやがるが、流石にテレザには効いている。それでもこちらを向かない様に努力してやがる。
うん、めんどくさそうだもんね。俺は仕方ないので玖珂の方に向き直り調子を見る。今までのセリフからまともなもの食って無さそうなため胃とか縮小してと思われる。こういう場合は暖かなスープと消化にいいものを与えるといいらしい。
バクバク がつがつ ゴクゴク ンッキュ、ンキュ
のだが暴飲暴食とういう言葉が似あいすぎるようにやたらめったら食っている。一応今まで碌なもの食ってなかったとは聞いたがね。
元気よく食べているので今は観察に止めておく。改めて見ても、まぁ百歩譲って見た目だけなら絶世の美女とか名乗っても罰は当たらんだろう。ボロボロになってもこれほど存在感を放っている人間などそうそういまい。
手足も良くもまぁ煤けているのに輝きを保っているものだ。髪も元々がいいのか今の状態でも洗えなかったのにも関わらず、無造作ヘアー程度にしか思えない。
顔も所々泥が付着しているが美麗な相貌崩しておらず、フェイスペイントと勘違いするものもいるだろう。臭いのはまぁ、言い訳しづらいが……
「おいしい、おいしい」
うん、さっきまで行動が無ければ、命からがら逃げてきた美女みたいだったんだがなぁ……
エキセントリックな人
元ネタがいるがそいつはもっと話が通じないひとです
北から来てそう




