これにてしまい
「光の檻よ空より出でよ! 光楼の社」
テレザがそう言うと空から光が降り注ぎ、ゼリウスを取り囲む。さしものゼリウスもひるんだ状態で完全な対応はできなかったのか、ゼリウスの周囲で結晶化した光を片膝立ちの状態でも何本か剣で薙ぎ払っていた。
「よし!」
「この程度で俺の動きが止められるものかよ!」
作られた光の檻は、本来の形である光の社を成さず、ある程度の支柱の抜けた今にも壊れそうな状態で形成されてしまった。ただ、不完全の状態とはいえ動きを鈍らせることに成功している。
ただ、檻を形成するのが不完全であった為かテレザは今いる場所に釘付けとなっている。光の檻を通じて、ゼリウスと綱引きをしているような状況になのだろう。顔にも苦痛の色が浮かんでいる。
この間に俺はエニグマ達の所である中心より少々右近くに移動して距離をとっておく。
ただ、ゼリウスの動きを封じた事自体は事実なのでエニグマは俺の近づくまでの間にガッツポーズをしていた。お前は、ガッツポーズしてる暇あったら魔術を使ってテレザの援護してやれよ……
しかし俺も人の事を気にしてる暇はないのだが、剣に集中しようとしても繋がらない。頼む繋がってくれ!
剣に集中する俺の姿にエニグマは何を思ったのか、声をかけてくる。
「レイ、武器を振るう時は力むんじゃなくて……」 「皆さん、檻が破られます!」
そのアドバイスは、どこかで聞いた事のあるアドバイスだった。ただ、すべてを話し終える前に、ゼリウスは光の檻から解放された。
剣を薙いで檻から出て来た為、その剣圧で、先ほどまで綱引きをしていて疲労が蓄積した故にテレザは体勢を崩し飛ばされる。
ただ、それでもゼリウスはテレザを狙わずにこちらに一直線に狙ってくる。そこは、いつまでも変わらないらしい。
「そういう所は頑固らしいね、レイ! こっちからしてやれることは援護だけだけど忘れないで、武器と担い手は一つだ!」
「そんなこと言われてもなッ!」
「おしゃべりは終わりだ!!」
エニグマから放たれる光弾をものともせずにこちらにつっこんでくるゼリウス。その際に放たれた突きのような技を防ぐ事は出来たがエニグマから引きはがされる。
「六道流初伝・芯突」
芯突は、剣の衝突エネルギーを剣先に集中させる技である。壊れない武器とそれを支えるだけの丈夫な体があればという注釈が付くものの非常に使い勝手のいい突進技であるようだ。
その一撃によりまた炎界の端まで追い詰められる。そんなに狭くもないのだがなこの結界……ただ、防いでも威力は桁外れだったようであり、俺の、意識も、限界……が近い。
「エニグマが間に合うまでにケリをつけるさよならだ!」
ゼリウスも今が好機である事と何か不穏なものでも感じたのか、一気に攻撃をして終わりにしようとしてくる。
俺終わったな……その時は一生懸命だった。
意識も絶え絶えだった事も理由かもしれない。
上手く体が動かないけれど、相手に剣だけは向けて置く必要がある。
多分その状態が良かったのだろう。
力の抜けた身体が、その技に最適な動きになっていた。
「一の秘剣
翔鬼」
「なっ!」
そう、剣と共有した魂の知識での中でその体勢から放てる最高の一撃をゼリウスに与える事が出来た。
一の秘剣・翔鬼。言うなれば簡単にできる魔剣の一つだ。要は常に相手の目に剣先以外見えない様にする業であり、目に突きをするように一直線に剣を置く業である。
これにより、リーチや攻撃タイミングを計らせないようにして攻撃する業で、本来そのまま突きで刺殺するのが元となった技の特徴なのだが、翔鬼は目の付近に剣先を置いたまま切り捨てる技である。
改良されたというよりは、大剣とこの技を開発した当人に合わせて造り替えられた技だと言える。ただ相手を殺すことの結果のみに注釈した場合、改悪された技とも言える。
しかし、今回はそんな技でも良い結果となったのだろう。今のゼリウスの状態は悲惨の一言だ。顔に口から眼にかけて右斜めの傷を作る事になり、仰け反って苦悶の表情で彼は俺を見ている。ただ、苦悶の表情は技の怪我が理由ではないようだ。
「その技でッ! その剣で、その顔で!! 殿下に賜りし剣技ォオオ!!!」
ゼリウスの表情は鬼気迫る。正にその言葉以外に説明のしようがなかった。
手は怒りで震えている。口から出る煙と血を垂れ流していてもそのような物よりも言わなければならぬと言わんがばかりに口を動かし言葉を振り絞っている。
俺の顔や今もなお腰に佩いている剣については因縁があることは分かっていたが、何やらこの技に対しても因縁があるようだ。今を思えば当然か、この剣を使った奴は基本、父さんと縁があるそうである。
ならば必然、この剣に残る所有者の魂の残滓からの情報で再現した技にも見覚えがあるに決まっている。
「忌々しい勇者の技で、俺に、殿下の技に、ドロォオ塗ったなッ!!」
「こっちも必死なんでね」
興奮しすぎてゼリウスの言葉が言葉になっていなかった。 怒りでゼリウスの足周りが焦げているように感じるのは気のせいではあるまい。
別に、怒りで強くなったとか、手加減していたのを怒りでしなくなった、とかではない。無駄だからしていなかったことを多分してしまっている。それだけ、この技を本来、使っていたものに対する彼の恨みは深いのだろう。
気迫というべきか、怨嗟というべきか、迂闊に動けないものを感じて立ち止まってしまう。それがまずかったのか、翔鬼で受けた傷が治り始めてきた。
「ぬ、スーハー、スーハー」
翔鬼を食らって動けなかった身体が動かせるようになって冷静さを取り戻したのか、深呼吸する。正直、ちょっと不気味だが彼の行動は効果はあったみたいだ。
「仕切り直しか……」
「どうせだ、ゼリウスさん。もう一度お互いに頼りになる技で一撃勝負といかないか」
一進一退の攻防でお互いに決定打が決定打にならなくなってきた。正直、お互いもう時間がかけられない。こちらは多分時間制限がそろそろであり、あちらはそろそろエニグマの援護が致命的になってくる。
つまり、ここいらでお互いに一対一でケリを付けたくなってきた頃だろう。
こちらに余力は無く、あちらも流石に余裕がない。こちらはもう立っているのも辛くなってきたが、相手はまだ顔に大きな切り傷を食らっただけで余力自体はある。
客観的に見て、どちらが勝ちそうか? と、言われれば十人中十人はゼリウスを押すだろう。
一対一ならば。
そう、こちらにはまだエニグマが残っており、なりふり構わず俺が差し違えた時に、撃退される可能性が高い。故に余力を残したままで居たいはずだ。故にゼリウスもこちらの言葉には納得はしているのかこちらを見ながら静止している。
互いに己の誇る技、現状で成せる全身全霊を持って敵対者を討つ。これが互いにタイムリミットのある今、最も両者に益のある事だろう。
「良いだろう、見せてやる。俺が持てる最強の六道流の技を」
そのこと自体に異論はないのか、彼は剣を構える。静かだが、すさまじい気迫を感じる。その迫力故に、陽炎が出来ている。いや、魔力で形成してるのか……アレ。
相手は正真正銘全力だった俺とこの剣にできる事、手のひらにある無銘の剣と腰にある最初の相棒に目を向けながら考える。いや……考えない、自分にこの戦いに答えられるほどの経験も、才能もない。ならば自分に出来る事はただ一つ、剣に身をゆだねる。
信じて剣と一体になるそうする事こそ、この場を収める最善の手だ。
静けさだけがこの場を支配していた。エニグマもこちらの事情を察したのか、魔力疲れのテレザの看病の傍らにこちらの援護で負けた時に逃げられる手筈を整えるだけに止めている。
その事はどうでもい、今はただ敵の状態でも、周囲の状態でもない。状況の身を見て、剣に同化する。
剣は自分であり、自分は剣である。アルヴァにかつて聞いた魂の同化、共有と、言いつ父さんから教わった六導流の奥義である人剣一体の奥義剣を腕として扱い、自身は剣の頭脳だと思うべしを、思い出した。
自分を持って込めるは思いのみ、相手をただ倒すという決意。それ以外は剣の示すままに!
「六導流奥義真伝・炎龍……」
「秘剣決戦術技・弐式……」
互いに自己の整理が終わり、思い思いの技の構えに入る。ゼリウスは剣を逆手に持ち、走り出す為の前傾姿勢のような構え方になる。
対するレイは、待ち構えて上段いや、天の構えと呼ばれる大きく剣を上に振り上げる形で迎え撃つ。共に守りを微塵も考えてい無さそうな動きで相手に向かい合う。距離はあの時と同じ五メートル一体今度はどちらが勝つのか?
そして、
次の瞬間
「爪破!!」
「貪狼ノアギトォオ!!」
焔を纏い駆け抜けるゼリウス! 纏った焔はまるで物理法則さえも燃やし、握った剣は常識を裂いているかの如く、踏みしめた大地は赤熱化し、光にも届く速さの高速剣技となり、一瞬で相手を貫いた。
対する俺は、ただ、相手の行動に刃を振り下ろす。そうただ、それだけ。いつの間にか下されていた剣と先ほどまであった熱量さえも静かになっていくその光景は、あったはずの事実さえ綺麗に喰われてしまったのではないか……そう思わせる何か異質なものがそこにはあった。
一つだけ言えることはこの時決着がつき、立っていたのは一人も
いなかった。ただ、それだけだった……
檻よ、降りよ!! から作った足止め魔法 社なのに檻なのは荒神を祀る社のイメージだから
今思ったらクライマックスだね




