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場所も飛んで、話しが飛ぶ

  「ああ、うん。面白かったよ」


 先頭を歩く目の前の年齢不詳が、意外と普通の話でそんなに面白くなかったなぁ。

 とでも言う様に、中々に平淡な声で俺の回想の感想を漏らしてくれた。


 歩いている最中、暇だったので目の前のこいつと出会うまでの事を軽く思い出していたのだが。


 その途中にどうも目の前の年齢不詳もここから、久しぶりに獣道とはいえ足の踏み場のある場所を真っ直ぐに進む事になった時、暇なったらしく話しかけてきたので聞かせる事となった。


 メンドクサイの極みだったが、迷惑をかけている借りと、こうやって案内してもらっている恩がある訳で話したのだが


  「反応、薄いなー。めんどくさいと思ったけど、色々してくれてるからおm」


  「出来る限り、名前で呼んでくれるかな?」


 赤い目がぎろりとこちらを睨みつける


 人の話には平淡なリアクションで返す癖に、自分の譲れない所にはきちんとケチをつける様である。どうにも素晴らしいプレッシャーをニコニコしながら俺に与えてくれる。


  「分かったよ。エニグマ、エニグマ」


  「突っ込んでやりたいけど。まぁ、いいや」


 何故かは知らんが、こいつは名前で呼ばれない事をやたら嫌っている。人懐っこい所がある為なのか、それとも別の理由があるのか? 流石に一週間かそこら一緒に旅を続けている程度では分からない謎の存在だ。


 まぁ、性格が掴み辛いのは俺自身人付き合いが苦手だから、と言うのも無きにしも非ずな気もするけど

 出会った時は色々あったしな。


 それでも、一週間も過ぎるともう過去の話となっている。


 話を聞かせた後、俺達は改めて前を向き鬱陶しい草木に相対し始める中でエニグマに対しての自分の情報を整理していた。


 まぁ、知り得た情報の中でこいつについて特筆すべきは、エニグマはかつてこの世界に住んでいた父さんの友人だったらしいという事だろう。


 当初、警戒こそしていたものの俺が父さんの息子だと分かると好意的となり、友人となり度について来てくれた。


 ……まあ、警戒されていた事と、一緒について来た一番の理由は、出会った場所が何らかの重要な施設内で、エニグマが守っていた『剣』を抜いた事が最大の理由ではあるけどな。


 抜いたせいで封印が弱まり、剣を悪用されない所に安置する為に、異世界である俺の家に送ろうと提案した事で、俺たちのチキュウ帰還の旅が始まった。しかし、家に戻るには東北の国に行く必要があるのだという。


 であるのにエニグマ曰く、ここからあえてそのまま東北に直進せず、大きな木々の生えそろっているところを抜けて東に行きかつての親魔族派の人間たちが暮らしてる町を中継するそうである。


 確かに、長距離らしいし、持っている剣はとある理由で殺生をするのは危険な代物なので装備を整える必要がある。その為、ある程度町や村から中継する必要はありそうだ。その為にもめんどくさいけど森を歩きその町まで行かなければならない。


ここ一週間以上も森の中歩かされて正直辛いとしか言いようがない。食べ物も荷物として持ってある缶詰などを非常食としてとっておくために、エニグマの知っている食べられる虫とかを食わされたりもした。


 何故こんな苦難をしながら親魔族派の町とやらに行く羽目になったかと言うと、魔族はかつての宗教国家等のせいであまり好感を持っている人間が少なく、もともと住んでいるのならばともかく余所から来たものにはあまりいい顔をされないそうだ。


 これは種族関係なく魔族領(特に爺さんの家があった付近)に住んでいたものもそうであり、流石に遠くの地域に行けばばれないがここら辺の町とかであるとそうもいかないらしい。


 その為、親魔族派であった町とか魔族であることを気にしない町などを経由して遠ざかっていく必要性があるのだそうな。


 正直、余り歩きたくないので、できる限りは直進したかったのだが、流石に、異世界人とダンジョンボスの真似事やっていた二人組の強行軍では情報やら持ち物やらが不足している。


 今でもかつての魔族領に好意がある為、魔族に対して差別感情が少ないであろう町で色々な知識を得ておく必要があるそうである。


 運が良ければ馬車で行けるかもしれないと聞き、流石に快く返事をするしかなかった。


 その為、できる限り、この世界の現状を把握するまでは人に合わない為にも近道という名の獣道を進んでいる訳だが、また木々や草が人の身長並みに生えている所に出て来たようである。草がうっとうしい。


 ここら辺が廃墟になってからはあまり人の手が入っていない為、所々草やら舗装されていない道やらで動きづらい。


 背中に荷物を背負い、腰に佩かせた大剣もある為、本当に動き辛く、今では百七十㎝以上の自分の身長にいつも以上に感謝している状態だ。


 エニグマの便利なポシェットにせめて背負ってる荷物ぐらい入れたいところだが、どうやら出すとき手間が半端ではなく無い為、できる限り日常で使うものは手元に持っておきたいそうな。じゃあエニグマもこっちの荷物持てよ、と言った所逆にポシェットを持たされた。


 すると、手が曲がってはいけない所に曲がってしまうかと思い手を引いた。どうやらポシェットは重さは決して消えないらしく、精霊種等の超常の身体能力及び、魔力による重力の軽減などを必要とするらしい。


  「どうする? 荷物交換する?」


 その後、にやにやとエニグマに聞かされた時はなんだかやるせない気持ちになったものである。


 こいつは前から思っていた事だがそこそこ底意地が悪い所がある。


 その様なやり取りを終えた後に思う。荷物の軽減が無理ならせめて動きやすい道に行きたいものであると。しかし、それもどうやらきついらしい。


 一応、此処に来る人もいる為、手入れのなされている道もあるのだがエニグマ曰く、その手の道を使う人には僕らは遭遇しない方がいいんだよ。との事、どうやらこの剣やエニグマはここら辺限定なら今でも十分高名なのだという(悪い方に)。


 実際、後ろから遭遇したらエニグマを見て略奪精霊エニグマとか言われていた気もする。明らかに盗賊のルックスの奴に。


 そいつらを後ろから襲って金品と装備をある程度、奪ったのでそう岩手も仕方ない部分があるが本当にコイツなんか他人のモノ剥ぎ取るの手馴れてるな。


 金銀輝く悪趣味なベルトでさえ、金目のモノだと判断すると手早く奪っていく。その鮮やかなスティールは色々と突っ込みたい。


 そんなこんなで、もし悪意ある誰かに見つかった時、盗賊から奪った鈍しか持ち合わせない俺では足手まといな事もあり、仕方ないので足や腰を動かしてこの道を通っていくしかない。のだが、やはり所々でずっと気になっていたのだが、背中の方の剣で草木とか切れないだろうか?


 「なぁエニグマ、この剣で草木を斬っていいか?」


 道を通ったという情報を残すことになるが、極力他人に出会わない方がいいのであって、別にここを通ったという情報を残すなとは言われていない。それでも一応確認をとっておくのは少々グレーゾーンだと自覚しているからだろう。


 「いや、できれば、その剣を使うこと自体できれば避けて欲しい所なんだけど。まぁ、いいかな草木を薙ぐ程度でどうにかなるようなものでもないし」


 とは言っても鈍の方では西洋剣である事も含め草さえきれないので仕方ない。一応、許可が下りたのでかつての日本神話の神剣の如くに草を薙ぐ。


うん、かっこつけすぎた。


ザクザクなんてレベルでなく草が斬れているのを感じる。まるで空気でも切っているような気分であり、改めて伝説の剣なのだとしょうもない事で確認する。



 こうして移動がかなり楽になった事で違う事にも頭が回り始める。そういえば使用すれば、使用者が破滅するとか聞かされていたがそっちの方は大丈夫なのだろうか?


今すごく、草を斬るのに使用してるけど? そのような疑問が頭に過ったのを察したのか、突然顔を憮然とさせながら草を斬っていたのを悟られたのか、エニグマがその疑問の答えをくれた。


 「その表情の変化からして多分、今更になってその剣の使用が大丈夫か心配になったのかい?」


 エニグマはいつもの調子で声をかけてくる。


 「まー流石にね心配になってきた。」


 と、返答するとあきれたような顔で俺の疑問の答えをくれた。


 「流石に、草木を薙ぐ程度や、人間や他種族を倒す程度の使用じゃあ破滅なんかしないよ」


 との事である。それではどの段階の、使用をすれば俺の身は破滅してしまうのだろうか? 流石にしょうもないことに使って人生終わりました。は、避けたいところである。


 そんな事を、更に森林の奥へ奥へと人里につく前の暇つぶしの話題として、エニグマに聞いてみると「まぁ、人間とか魔族とかを殺さなければいいんだよ」と言われた。


 どうやらこの剣は前にも説明されたがとある事情で命を吸う。命を斬り殺すことで蓄えていき活動が活発化するそうである。虫とかだと別にそうでもないのだが、意識を持つ生命であると色々と効率が違うらしく。一人、一人と斬り殺すたびにかつての力を取り戻していくらしい。そして持ち主の精神。いや、『魂に』影響を与えていく剣だという。


 今でも十分、凄い剣なのにかつての力とはどれほど凄いのだろうか……


 「あ、懐かしいな意外と変わってない!」


 考え事をしていると喜色を含ませた声が響く。森林も抜け、エニグマの反応どうやら遠方に見える煙が出ているところが、目的の町がありそうである。

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