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何もない部屋

思いのほか長くなっている気がする・・・

 「しかしまぁ、大変だったねェ」 


 街の入り口真ん前で、そうエニグマが嘆息する。さっきまでとは裏腹に今では本当に余裕そうである。


 「う、う申し訳ありません貴重な体験はしたと思います……」


 意識を明確に取り戻したテレザも、今では取り乱したことを反省しているのか、顔をあげようともせず沈んでいる。


 「いや、驚いた。まさかあんな人がいるとはね」


 俺としては新鮮な体験が出来たし、時間も短縮できたので本当に良い経験だったと思う。


 「あそこまではっきりとしたのは、長い年月生きて僕も初めてだけどね」


 結論だけ言うとエリジアには着いた。それも思いの外早くに、三人無事に辿り着きはした。ただ、道中でとても貴重な体験をさせてもらった。


 その中でも特に印象深いもの皆で思い起こしている。まさかあんなことが起こるとはね。


 時はある程度遡る。


 「エリジアに行くとは言ってたけどやっぱりそこそこかかるね」


 流石に中央に最も近いエリジアにはすぐにはいけない為、ある程度町を中継するつもりである。その最初の中継するテオの町には元々、普通の道もあったのだがそこを通ると十日かかる。


 という事なので、目算で二日で行けそうな草木の生い茂る道を通って近道をした。エリーゼさんの行ったことの影響か、人目を避けたかったというのもある。


 それに、中継の町くらいはすぐに行きたかったしエニグマも俺も似たような道を歩いてあの町まで行ったこともその道を選ばせてしまった理由の一つだろう。


 なのだが……今日の朝日で、もう七度は日が昇った気がする。地図で見れば二日くらいで行けそうな感じだったのだがやはり自然による視界の悪さやそこに住む動物や魔物に襲われていた。


 動物などの生き物は、強い魔力を持つ地域で育った場合成長に影響を与えてより強大な存在となる。その過程でより魔力を吸い魔の属性を帯びて種族も変質するものがいるらしい。それが、魔の力を持つけものつまり魔物という種族らしい。


 その魔物に、俺たちは良く襲われていた。エニグマはそうでもないのだが、そこまで高くない能力持つ俺たち、とくに身体能力という点では低いテレザが良く襲われる。この中でそこそこ強い魔力を持つことも理由の一つだろう。


 それを庇ったり応戦したりしながら進んで行ったら、余りいいペースで進めないのだ。相手を庇えるほどの視野を持つ仲間が今の所エニグマしかいなかったのが理由であり、庇う人間が一人から二人にに増えたことが二人旅の時よりも進むペースが遅くなったことの最大の理由だろう。


  「う、申し訳ありません。庇っていただいて」


  「まぁこの中じゃ僕が一番強いのは僕だし、気にすることは無いんじゃない?」


 問題は他にもあり、稀に対応できないほど数多くの狼系の魔物特に影狼シャドーウルフ(気配が読みにくいから影のような狼と言われたらしい。)という魔物には対応がエニグマでも難しいらしく逃げの一手しかない場合もあった。


 そのせいで、今も最短距離から大幅にずれている。


  「俺も悪いから他人事じゃないけど、このままだと何時つくのか解んなくなってきたな」


 地図上だとこんなにも近いのに実際に歩いてみると果てしなく遠いような気さえしてくる。そんな事を考えながら地図を見てきたが地図も見づらくなってきた日が暮れてきたようだ。


 「日も傾いてきたし、どこかテキトーな所で野宿かな?」


 「つっても周り木、雑草、木だぞ?」


 周囲には基本木や草の遮蔽物ばかりでまともな視覚さえ確保できない。こんな所で野宿などどうぞ襲ってくださいと言っているようなものだ。


 「私っ! 野宿場所探してきます!」


 「あっちょっと待って」


 エニグマの静止も効かずにテレザは野宿場所を探しに行く。あいつがよく狙われてるんだから行ったら仕事が増えるだけなのに、失敗を取り戻そう必死のようだった。


 「責任感の強いというか、自罰的というか、まぁいいや襲われると危ないから行ってきなよレイ!」


 「俺も一緒だと思うが」


 平地で一対一なら余裕なのだが、俺も一人だと流石に魔物相手には対処が難しい。それでもとエニグマは俺に言い聞かせる。


 「二人なら後衛、前衛でいい修行になるだろ? 危険になったらキャー助けてとかいいなよ? 必ず行くからさ?」


 「ヘイヘイわかったよ。めんどくさいけどそれ以上にテレザ心配だし言ってくるわ」


 まだ言いたいことはあった。これ以上だとテレザが危険になるので渋々テレザの後というか、テレザの通った跡を追う。大丈夫だろうかテレザ。


 「さて、僕は彼らが野宿場を見つけてくるまで簡単な準備でもしておきますかね? もしもの為の準備もね」


 そう言いながらエニグマは何らかの準備を始めていたらしい。その間俺は、なんとかテレザを見つけられた。テレザが踏みしめた草や土を見ながら歩いて行ったら何とかテレザを発見できた。


 そもそもあちらは先行しながら道なき道を歩いた事と、速度差13俺の方が高かったのも理由の一つだろう。



 でなければ発見できたか怪しい程度に視界がここは悪い。ハズだったのだが、「レイさん遺跡ですよほら!」 「うぉ、また小さいけど年季のありそうな遺跡だな、テレザ」


 テレザの興奮もわかる。正直、遺跡のあるべき大きさなど知らないが、多分の普通遺跡よりは小さい、近所のスーパーサイズの遺跡だがそれでも年代は古そうだ。それに人の手が入って無さそう。そのような未知の遺跡を前にテレザがやけに興奮していた。


 「レイさん! レイさん! エニグマさんも呼んで此処に入ってみません? いい野宿場所にもなるかもですし!」


 研究職のサガなのか、黄緑色に近い目をキラキラさせながら言ってくる。お前反省どこ行った。


 しかし、主旨が変わってきそうではあるが俺も気になる。それに見えてる限りそんなに広くも無さそうだ。良いのかもしれない、安全ならば野宿場所に最適でもある。


  「わかった。エニグマも一緒に呼びに行こう」


  「ありがとうございます! 良い発見あるかなーまだ誰にも荒らされて無さそうだしなぁー師匠の言いつけ守って本当に良かったかもなぁ!」


 こうして俺たちはエニグマを呼んで小さな遺跡探索としゃれ込む事となった。それがまさかあんなことになるとはね。



 こうして、俺たちは小さな遺跡の前にいる。エニグマを呼びにいった時のエニグマのめんどくさそうな顔はきっと忘れられない。


 「いや、君たちエリジアに行くの忘れてない?」


 そう、あきれながらもついてくるエニグマには感謝の念を禁じ得ない。まぁ、エニグマ自身も気になるんだろうけどな。そうこう思いながら回想しているとついたあの時の遺跡にしかし、改めて見ても小さいな。


 「待ってましたよ! さぁ、行きましょう!」


 「テレザのテンションが変わってるね、あいつ思い出しそうだよ」


 「まぁいいじゃないか、行ってみようぜ。いい感じなら今晩はここに泊まろう」


 やたらテンションを高くして移籍へ向かおうとするテレザにエニグマは今のテレザのテンションからエリーゼさんの事を思い出しているようだった。


 俺は見たことないけど、強引なときのあの人と今のテレザは少々似ているらしく、その状態のエリーゼさんには昔の仲間たちは基本的に辟易していたという。


 そのような話をしながらも遺跡に歩を進める。入ってみると罠もなく魔法もかかっておらず普通の場所のようにも感じられる。少々広いが玄関のようにも感じられ歩いて三秒くらいの場所に新たな扉が見える。


 「まだです。まだ私たちの冒険は始まったばかりです!」


 「テレザ、いい加減に君は落ち着くべきだと俺は思うよ」


 「なにがあるかわからないから注意して扉を開けてね。難しいこと言うけど、扉に近すぎ過ぎず扉の裏の音を聞くようにね」


 やたら興奮しているテレザを宥めながら次の扉に向かう。エニグマの指示に従い先にある音を確認する。静かな気がする。さて、危険はないようだ。皆にそう伝え、次の部屋に進む。


次の部屋にはなんと、年代物の家具が家具が置いてあった石造りだが立派な家具であり、なんというか今でも誰か生活してそうである。


 「なんなんだ? この遺跡」エニグマがたまらずそう漏らす。


 お宝だとか、未知の部屋だとかそういうものが無くて拍子抜けなのもそうなのだが、そうでなくてもどこかおかしい。先ほどの部屋が玄関みたいなのもそうだがこの部屋もダイニングみたいで人が住んでそうだ。


 なのに、生活臭が無い。だけど綺麗に整頓されているし、他の生物が寄り付いてるようにもみえない。そう、虫の一匹も見えないのだ無人なのに。


 「これはなんなのでしょうか?」


 「わからない、だけど気を引き締めた方が良さそうな気もする。エニグマ頼めるか?」


 「まぁ、こんな時こそ僕の出番だろうね。任せてよ」


 「私がこんなことを言うのも身勝手かと思いますが、エニグマさん気をつけてください。何か、へんです」


 声を鎮めテレザもこの奇妙な空間に対して感想を述べる。俺たちは気を引き締めて三方向の内、右側のドアを開ける。当然、今までどおり何の音も聞こえない。俺たちの出す音以外には。


 右の扉を開けても何もなかった。「僕たちは外にでたのかな?」


 「この部屋外に繋がってる。もしかしてベランダ?」


 「おかしい、ありえない」


 俺の言葉に困惑するテレザと、俺の言葉の意味に気づき考えているエニグマ。そうこんなことありえない。


 「え、確かに遺跡にベランダがあるのは有り得ない事ですけどそれがどうしてそんなに困惑してるんですか??」


 「テレザ今まで緊張してたから解らないのだろうけど落ち着いて考えてごらん? ここはどこと繋がってる? 何が見える?」


 「え、そんなのお外、? え、お外なのに!?」


 テレザは気づき大きな声を出さない様に驚く。そうだココは外に繋がっている。ならば、なくてはいけないのだ


  「そうだ。外に繋がってるのに虫一匹ここにはいない。俺たちはここに来るまで多くの獣に襲われたのに侵入している形跡すらない」


 そうここにはこんなにも外に繋がっている部分が多いのに他の生物が一切寄り付いていないというのは実におかしい。そんな可笑しな部屋に、俺たちは少しの恐怖を覚えた。だけど、俺たちは互いの顔を見回す。お互いにまだ顔は恐怖心のみではないようだ。


 「左側に進んでみましょう!」


 「まぁまだこっちに被害はないしね」


 「せっかくの謎がありそうな遺跡だ行ってみるか」


 そう、この程度で怖気づくほど胆力のない人間は此処にはいなかった。なので、行かなかった左の部屋に向かってみる。


 無意識に俺たちは正面の部屋を避けている気がするが、あえてその誰かの意思に介入がありそうな行動に乗っかってみる。とりあえず今は避けさせられている場所以外の安全性を確認する方が先だ。さて左の部屋は何かな……


  「左の部屋は、どうやら客室のようですね?」


  「ご丁寧に五人分のベッドがあるね。机もいい感じだ」


  「なんだこの和洋折衷な部屋は?」


 なんというか背の低いテーブルに足を広げて座れる床の和の雰囲気があるのに寝所だけはベッドという何とも言えない部屋だった。そして、窓といい他のインテリアも一応洋物っぽい。


 「なんか、ここ誰かの家だよね完全にさ」


 「だけど誰の家なんでしょう?」


 「家の中にも外にも気配がないのがだいぶ可笑しい。俺はそう思うけど?」


 互いにこの遺跡の感想を漏らし始める。この圧倒的な、居住地臭は家と言って過言ではない。だけど、セーフハウスでもないのにこのような雰囲気は少々、不気味だ。


 「ここで考えても仕方ない。みんな正面の部屋に行ってみよう。大きさ的にあれが最後の部屋だ」


 こうして、俺たちは最後の部屋に向かう。さて、何が出るのかな?

一応完全版だー


西端近くから二日で行ける大陸の中央付近って何なのかわからないので少々修正

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