道具調達,一日の終わりに
「しかし、武器屋なのに良くマジックアイテムとか売ってあったよなぁ」
俺たちは道具やまでの路地裏を歩きながら店の事について語り合っていた。今は売り物についてだ。
防具はともかく他の大半がエリーゼさんの所でもらえる物よりも劣っている感じがしたため買わなかった。しかし、流石に武器屋であることを考えれば異常なほど多くのマジックアイテムが売ってあったのは流石に驚きである。
「あっあれはですね。師匠が金銭面に困ったとき無理やり売ったのが始まりでそれが好評だから置くようになったんです」
恥ずかしげに言うテレザ、どうやら実験に行き詰っていた時に金銭を稼ぐために無理やり周囲の店に売っていたらしい。あの人、本当に最悪だな。
その中で扱いに困って、売り出したのがあの店フリーデンらしい。その後、エリーゼさんに押しつけられた他の店もフリーデンに売り払った。
それが定着してしまってマジックアイテムも売る武器屋という事になったらしい。
一応、儲けているらしいので気にしなくていいだろうけどそういう事か、エニグマも流石にうんざりした顔で聞いている。
「あいつの小遣い稼ぎ、変わってないんだね。いや、むしろ悪化している……」
「そっそうなのですか?」
どうやらかつても似たような事が有ったらしい。あの人、本当になんだかな。次の冒険の為の雑貨を買う店に行く過程で何故、あの店にマジックアイテムがあったのか等の話題となり話を進める。この時ハウザーさんが騎士であることなど多くの事を知る。
「まぁー僕もうっかり油断してたよ。これからは騎士とか武器屋の前で安易に剣を見せない方がいいね」
「確かにそうですね。それ、隠さなくちゃいけないものですものね。私も気をつけます!」
「ありがとう協力してくれて、本来ならテレザは気にしなくてもいいものだというのにすまない」
「いいですよ。これからは仲間! 友達! 家族じゃないですか! 良いですよね家族って響」
「ありがとね、テレザ!」
どうやら前々から家族とかその類になにかありそうな感じのテレザである。が、本人が自分で何か言うまで気にしない方がいいだろう。踏み込んでみたら地雷でした。なんて、いうのは流石に今は避けたい。エニグマはそもそも気にしてすらいないけど。
雑談もそこそこに雑貨屋についた。基本、露天商のようなところだ人通りの多い方なので周囲にも人が多い。
「うっ! テッテレザエリーゼさんは一緒かい?」
露天商の店主そこそこの身長と黒い髪が特徴の男性がテレザを確認した後やたら首をふって周囲を見回している。
今までのノリとテレザを見て発症した事からエリーゼさんを探しているのだろう……あの人は本当にあの人は何をしてるのだろうか。
「落ち着いてください。今日は師匠とは関係ありませんよ」
「そうかい、良かったよ。本当に、いらっしゃい! 所で、何がいるのかな? その為にここまで来たんだろ」
「偉いね、気を取り直してるよ」「触れてやるなよ……」
気を取り直して商売人の顔になる。こういう所に人々のプロ根性、真剣になれる所が羨ましい。
「すいません、簡易宿泊装置や携帯用寝具なんかはありますか?」
「私の物ですよねありがとうございます」
「テレザちゃんが何でそんなもの必要なんだい。追い出された?!」
「違いますが」 「ごめんなさい」
横やりなども入ったが難なく大抵の物が手に入る。次に食料品店で今日の食事の材料と旅の為の日持ちする食料や飲み水などを買う。
他にも必要なものがある店に行く。交通機関があるのかどうか確認。どうやらない様なので仕方なく別の町に言って移動機関を探すことになる。しかし、ほぼ、全てがこの町で手に入ったこれは本当に充実した一日だったと思う。
ただ行く店、行く店でエリーゼさんが恐れられていたのはなんだかなとしか言いようがなかった。
それでも、日も暮れはじめたころには必要な物を買い終えて帰路につく。茜色に染まった街並と徐々に歩いていた人や遊んでいた子供の声が無くなり、静かになっていく周囲の声には哀愁が感じられる。その中で今日の収穫と出来事を思い出す。
無名だけど手に馴染む剣と何とか手に入ったテントと寝袋と必要な物を思ったよりも安めに集められたのは幸いである。
行く先の店の主人、主人があの人の知り合いであったおかげではあるのだがそこに関しては少々考える必要がある。ただ、これで明日の旅立ちに備えられるので感謝はしている。
「僕にとっては今のエリーゼに関する話を沢山聞く一日になったね」
「あっあははは」
「あーうん。そこは驚いたな」
とりあえず大半が苦労話だった。やれ、酒のツケをためる事が有るだの、用途不明の物おしつけられただのあまりにもあんまりなものが多い。でもそうできるという事はつまり。
「それでも正直な所安心もした。彼女はどうやらこの町でやっていけてるようだしね」
「はい、師匠は皆さんに慕われています。例え、魔族だとしてもやっていけるんです」
エニグマの言葉に胸をはって師匠はやっていけてると答えるテレザ。そこに師弟のつながりを見る。そういう人間関係を構築できるというのは大変好ましくついつい自分の事でもないのに口元がほころんでしまう。
「おう、レイなんだいテレザの方を見てにやけづら晒して、茜色に染まるこの道で唐突なエロスでもテレザに感じたかい?」
「エロスってなんですかぁ!」
なんだか唐突に話を振ってくるエニグマと顔を真っ赤に染めてテンパり始めるテレザにどう対応すべきか困惑もするがそろそろ帰路につく。正直、この調子だと言い旅になりそうだとテレザとエニグマの表情を見ながら思った。
色々あったがエリーゼさんの家に帰ってきた俺たちが、最初に見た者とは玄関先で酒を抱えて寝ていたエリーゼさんだった。これは一応俺たちの帰りを待っていたんだろうかと思いテレザの方へ顔を向ける。
「多分そうだと思います。待ってる間に酒を飲んでいたらこうなったのかと……」
「こいつ本当に変わらないんだね嫌な方に……」
どうやら本当に昔っからこのような感じらしいこの人、とりあえず起こすとしよう。肩辺りをゆすって声をかける「おおーい起きてくださいーエリーゼさーん」「「ああ……」」
なんか異口同音で行動を冷たい目で見られた。エニグマは目を押さえ、テレザは顔をそむけた。何かあるのだろうか? と思っていると急に景色が変わった。
「うおっつ!」
どうやら肩を掴んだ手を逆に捕まれたようだった。引き寄せられる胸元に引き寄せられるのは役得だと言えるかもしれない。
ただそれは、自分の光景を客観的に見れる立場だったらの話だ。今なら、何故冷たい目で顔をそむけられてたのか良くわかる。ラッキースケベなどではなく痛いのだ。苦しいのだ。
そもそも酒ビンも依然として握られている。その状況で余った手で引き寄せられたのだ当然ビンは後頭部に思いっきり当たる。意識を失わなかったのは幸運ともいえる。
そして何より、抱きしめられたときの力も可笑しい。まるで絞殺されるかのような力で酒ビンと共に抱きしめられるのは辛い以外の何物でもない。
胸に顔を埋めているが今の俺は殺されかけているようである。後、酒ビンから嫌な音がするもしかして割れる? 後頭部に割れたビンが出来上がる!? ちょっ誰か助けて。
胸に顔が埋まっているせいで声が出せない。表情が見せられない。周囲が確認できない。こんなにも辛い状況にさらされるとは、しかしさっきから何の気配も感じないのはなんでだろう? 誰か助けてくれ。
そう思っているとビンにひびが入る音が聞こえる。ああ、ここで終わりそうな感じがする。ッごめんエニグマ、テレザ、ある、ぶぁ?!
アルヴァのところで水をぶっかけられる、寒い。
「さぶっおはよう」「師匠、おはようじゃないですよ」
「役得だったね?」「そうじゃないことくらいお前なら分かってんだろうに」
微笑ましい師と弟子の話し合いの裏で俺たちはエリーゼさんに抱きしめられていたことについて話し合う。
死にかけていた事に気づいているくせにそう煽ってくるエニグマに辟易しながらも夕食の仕度にうつる。
今日は明日の冒険に備え精のつく料理だった。肉料理にもそこそこに魚の生姜煮。そしてコーンスープにサラダ等と言った栄養のある食事だった。
「君も料理したらどうだい? エリーゼ、君はナナセから習ってただろうに」
「もうしない、他人がいる時はめんどい自分の時のみする」
素敵な発言と新情報ともいえない発言が聞こえる。そういえばシチューの時も似たような事言ってたなぁ。と、料理をしているはたで聞く。
「ナナセさんってどのような人だったんでしょうか」
「さぁ、普通の父親ってのが俺の意見だけど」
「普通の父親……きっといいお父さんだったのでしょうね」
そう、テレザがエリーゼさんとエニグマの父さんに関する質問をする。ぶっちゃけこの世界においての父さんがどんなものだったかは知らないので答えに詰まった。しかし意味深な顔を向ける。
「まぁこれで料理が完成したぞー」
「よし、料理を食べましょう!」
「君ねェ」
「はは、みなさんいただきましょう」
こうして、料理を作り終えおいしい食事を食べて皆笑顔になる。今日も様々な話題で盛り上がる。間違いではない。ただ、父親の話題を告げた時、当たり障りのない意見を告げた時もどこかテレザの顔が遠かった。
真剣に人に触れていると一日一日新しい発見がある。どうかそれが、明日以降も続きますように。そう願って、この騒がしい状況をみ守りながらも本当にそう思うのであった。
さて次から、旅立ち編ですね




