時間は平等ではない
「ふ、未来を見る私の思考を先読みするとは……やはり天才か」
「あんまこの手のくだらない事は、言いたくないけど大人をからかうの止めなよ」
ため息を吐きながら、玖珂につっこむエニグマ。このやり取りも結構やってきたよな。そんな時間立ってないのに。
「なんでくだらないんですか?」
年功序列を振りかざすのは悪しき風潮ではあるが同時に亀の甲よりも年の功では確かにあると思う。それなのに、最高齢がそれを下らないと言い切るとは流石に奇妙である。
「大人とか子供だからってそれで優劣が決まる訳じゃないって、今まさに僕らは体感してるだろう?」
「あ、あーはいそうですねー」
「B-」
「他人の父親を記号で呼ぶのは止めてくれないか?」
所々に挟まれる漫談に、真実は暈けてしまうけれども、それでもいつまでも輝かしく、そして煩わしいモノがそこにはあった事を思い出す。
それにしても本当に、天よりこの地上に舞い降りた生まれついてのバグキャラさんはどうにかなりませんかねー。
俺もあの人の血を継いでいる訳ですが一向に追いつける気が死ねーよ! じゃなかったしねーよ!
「当の本人より強い本人から対抗装備と攻略方法聞いてるのに勝てる気がしないよねあの人!」
「最上はあの人達に関わらない。なんでしょうけど、無理ですよね」
「、YES!!」
やけくそ気味のサムズアップをする玖珂
「だよねーアイツそんなキャラだからな……」
それに相槌を打つエニグマ
「父さんは昔っから鬼ごっこと追いかけっこはゆっくり歩いてるのに負けたことが少ない人だったよ」
根拠を提示する俺で構成された素晴らしい解答
「眼のいい第三者、友達、子供の意見ありがとうございました」
テレザも気が滅入るほどのアンサーを貰えたようだ
やったね……
「あの人、本当に来て一年未満の人なんでしょうかね?」
六歳児に負ける十四、十七、二十三、千歳もうあれだ本当にこうして年齢だけで考えると理不尽だよ。しかも九歳の頃の本人から力と装備分けて貰ってるんだぜ。笑っちゃうよ!
自分の口から抜け、空を切る音と頬に伝う何か、客観的に見れば不気味以外の何物でもないのに突っ込まれない辺り、同じ事考えてるんだろうなぁー
「あいつはどこかおかしい……」
「頭が?」
「、本来知りえない情報を、……知っていた?」
エニグマがぼそりと呟き、玖珂がそれにのる。正解は当然テレザだろうが
「テレザ正解、ユミ黙れ」
「アウチ!」
エニグマがテレザを指さし、玖珂にはチョップ。そこは大変微笑ましいのだが、玖珂の意見も本当に間違っているのか? 父さんの頭は本当に正常な状態なのだろうか?
「アルヴァの懸念と父さんが予想より強い事、そして俺達が強くなった事って……」
「私も、思ってました。一緒だとしたら」
「ああ、多分魂蔵持ちの武器は尚更とられてはいけないね」
「……秘文」
とりあえず、相手の強さの秘密は分かった。魂や魔力を回収して相手が強くなる事も、故に時間をかけてはいけない事も。
「こうまで情報が揃うと余裕がないっぽいね」
出た情報を統合すると確かにそうなる。多分だが、時間をかければかけるほど相手に有利になって行くシステムで、多分、九歳の方の父さんもそうだと思ったから俺達に力と武器を与えたんだと思う。
「私達個人の能力じゃどうにもならないんだろうね」
「それでもレイさんの剣なら……」
玖珂もエニグマの言葉に追随する。ここでボケれるほど余裕は流石にない。しかし、不安をかき消す為か、俺の剣を見る。確かにアルヴァは一撃決殺、触れれば殺す、絶対殺戮の剣だ。だがしかし
「ナナセ『だけ』が敵なら確かにそうなんだけどねー」
この剣には後、三人しか倒せない。それ以上の人数を捧げれば俺たち以外に、何が犠牲になるかもわからない地獄絵図が展開されるだろう。
「無限に敵を倒せたとしても、そんな分かりやすい戦法だと人海戦術で圧殺されるのがオチ」
「合流されると厄介な奴もいるし。どうするかな」
沈み始めた日を窓から眺め、珍しくまともな事を言い出す玖珂と、その言葉を聞き、エニグマが何かを思いだし頭を抱える。
「厄介な人とは?」
「あー二人いて一人は私たちの探しているナナセの元右腕兼教育係のマティウス、もう一人が僕の直属の部下、オーベルだね」
グーから一本ずつ指を立て、ピースする様に二本の指を立ててこちらに説明する。
「あー、目的の人物の一人か。確かに厄介そうだけどもう一人については?」
マティウスに関しては、召喚術やそれ以外の父さんが生み出した魔導の知識の大半を預けられ、彼自身も魔導に対して研究をしており、合流されると勝つ可能性が少なくなるという。
「もう一人は、まぁ僕の部下で陰気な奴でね。一応危険だけどそこまで重要でもない戦闘に役立つ宝の管理を任せてある」
「あー、ナナセさんは、先の戦闘でも微かに思ってましたが武器を使い分けるタイプっぽいですしね」
マルチウェポンだとか二闘流を好む。
なんというか本来なら器用貧乏としか言いようのない戦闘法で、敵を翻弄するのがあの人の基本戦術だという。
一つの戦法になれてきた辺りで距離感を変えてもう一度。その戦法は現在のまともな装備の無い、言い方が悪いが残滓でしかない小父さん達にはできなかった。
「合流せんでも仲間の装備パくればいいのに」
「味方の戦力低下させてどーする」
まぁ、当たり前だよな。
その為、少しでも出来の良い物を武器にせねばならず、それを補ってくれるのは、オーベルが管理する魔剣(力のある戦争武器の総称)だそうな。
夜の戦闘だとあからさまに武器もってない時、可笑しな場所に手があったもんな、あの人。それでも何とかでしか勝つことができなかったとはいえ舐められている感がバリバリだった。
「それに関しては片手が空いてるとすわりが悪いんだってさ」
「両手で持てよ」
玖珂のツッコミもそうだろうが同じ血を引いている俺にもその感覚は分かる。何となく、だが両手で一つの武器を持つのは必殺の時、それ以外は片手は空いてるか、基本別の武器を持っておきたい。
言うべきか悩んだが、雑談気味だし黙っておこう話し進まないし。
「まぁまぁ、その二人にこちらが先に会って力を貸してもらうって事は」
「確かに急がば廻れって言葉もあるけどね。一人はどこにいるのか分からず、もう一人は南の果てにいる正直、このまま直進するのが正しいかな?」
テレザが食い入るようにその二人の力を借りれないかと相談するが、エニグマは首を横に振りそれを否定する。
上手い話は無いもんだ。
「玖珂、そう言えばマティウスさんは探せないのか?」
天眼は遍くものを見通すというのなら多分あった事も無い人も見れるはず。そう思い。もう、蒲団を定位置に移動させ始めた玖珂に、問うたのだが、口に出す前に首を振られ言葉で返された。
「縁が無いから無理」
さらに告がれた情報によると
「万能ではあるけど、正直持ってる人の感覚的にはやたら遠くと視野が広いだけで実際の事象や、もの探しはきちんとそれを知ってないと多くの情報で見逃すからキツイ」
らしい。要は、天眼で見た事も無い人をきちんと確認するには、相手が魔法なんかで逆にこっちを見てたり、こちら側に居場所の証拠になる何がしかが必要との事。当然だが俺達はそんな物もってない。
「意外と制約とかあったんですね?」
「まぁ、良くも悪くもすんっごい眼なだけだからね」
蒲団にこそ入ってないが座布団を枕にし今朝燃やしかけた毛布に似た何かを身体にかけ、寝る準備をしながら横になり会話に参加してくる。
ここまでの口の挟み具合から、全てが見えるとかそんな具合のイカサマ染みた能力かと思っていたんだが。
そうは上手くは行かないようで消して万能じゃないんだなと思い知らされる。




