古くより伝えられるモノ
日も進み、そろそろ暗くなりそうな気がしないでもないと思われるほど日が高くなってきた。
この中で武相燈籠の情報を唯一知ってそうな玖珂は、足をバタつかせて仰向けになって寝ている。
「ユミ・起きろ!」
エニグマはそんな玖珂に業を煮やしたのか、踏んづけてから蹴飛ばすさまはドラッキングショットを彷彿させる蹴りを行う。
「みぶろッ!」
掛け声とともに畳の上をころがり進む人型芋虫
流石に先ほどからずーっと起こしているのに顔を背けて聞こえてないふりしてたから仕方ないけど友達はボールって奴かな? まぁ、踏みつけ自体も蹴りの威力も見た目だけで実際は過剰に玖珂が吹っ飛んでるだけだが。
あいつ、生粋のエンターティーナーだよな。リアクション芸人寄りの。
「はぁ、分かったよ今回のは私もk、詳しくは視てないから知らないけど、それでいい?」
「? ああ、情報はあった方がいいからな。よろしく頼む」
「っふー、情報があった方がいいのは確かに同感。それに頭を下げられて悪い気はしないね」
玖珂の反応が少し気がかりだが、蹴られた背中をさすりながらも仕方ないなと応えてくれる。俺が頭を下げた段階でにやけづらを晒し、見下ろしてくれたが、まぁ、頼み込んでいる側なので文句は言えない。それに朝っぱらの恩もあるしな。 しかし、何かエニグマもテレザも俺も玖珂に対して起りやすくなってる気がするが気のせいか?
まぁ、玖珂の反応と言い俺達の玖珂へのリアクションと言い答えは出ないので気にしないものとする。
「長い年月を生きる古精霊のエニグマさんでさえ知らない未知の遺跡遺産。ちょっとワクワクしますね!」
父さんが大事そうに管理をし、エニグマも未知の遺跡遺産。今までの遺跡遺産がだいぶすごい物であった事から、魔導師の血が疼くのか、テレザの興奮がまるで幼子の様に止まらない。
「まー私も詳しく知らないけどね。ナゼカミエナイシ、オシ〇モラ〇ナイシ」
???、何かぼそりぼそりと口から鳥そぼろの様に口に出したな。見えない? オシ? ナイシ? どうやら俺以外聞こえてなかったようで、誰も気にして等いないが多分それは、結構重要な事だったのだろうと思う。
今、問い詰めるべきか。あー、問い詰めて吐くようなたまでもないし、足並みをそろえよう。
こいつ自身、言いたくないと言うのなら仕方ないので黙って見守ってやる必要もあるだろう。口げんかで未来を見る奴に勝てそうもないし。
この選択自体は間違ってもいなかったわけだが、正直、この時点で問い詰めてならばきっと違う結果もあったんだろうなと未来の俺は思うのだった。
「さて、何から、かッ↑た→ろう↗か!」
「いや、なにその口調?」
可笑しな口調で説明し始めた玖珂につっこんだら、詰まらん奴だ。そう吐き捨てやがった。
そのせいか、まともな説明に移行しだすのに一悶着あったがまぁ、これも話すべきことではない。
ただのその様な会話の中でも輝く、その双眸が少し気がかりで、エツランフカとかこの手の独り言で珍しく真面目に聞かせないようにしていた。
それでも、徐々に身体能力が上位の存在に書き換えられている俺には十分可聴域だったりする。
聞こえるのには、一応が付く訳だが
「とりあえず、私が知ってるのはそれは、確か、元々この世界のモノではないって事かな」
本当に珍しく、自身なさげに口にする玖珂。ただ、異世界のモノである事には確証があるのか。その部分に関しては力強く答える。
「へー何故、異世界のモノだと?」
「だってそれ、こっちの世界だと平安時代の作品だし、ボロボロだけどその状態でも百万は、するはず、宝珠も擬宝珠ではない辺り、もっとするかも?」
でも、本物の宝珠は改造の結果だしなぁ……と悩んでいる玖珂だが、俺は思ってた以上の大物なので困惑が隠せない。
「へ、平安時代の作品?」
「ぶっちゃけ、状態さえよければ国の重要文化財と言うか、多分、それが本物である事と、元々寺院ではなく個人の物として作られてた事、何故か木材で造られてて小さくさえなければ、その状態でも高値が付くと思う。百万も世間では贋作扱いされてるからの値段だし……」
「使われている技術はともかくとして、凄い遺産な事だけは伝わりました」
「確かに、暖かな光を放つ燈籠だと思っていたけどね?」
異世界の住人も何となくニュアンスは伝わったのかへーっと、目を輝かせながら見ている。元々これに対する好感度が高かっただけに、箔までついたのだから当然と言えば当然か。
俺はびっくりとしか言いようがない。なんで、んな物を、父さんは武器に改造してるんだよ!!
「その作品は元々、仏の慈光を表す作品として石造りではなく、木造で世に出された物で、何らかの事情があって鎌倉時代近くで消失、してたはず?」
「父様の遺失物文化財禄? にそう書いてあったし、眼でもある程度は視えているから間違いはない」
そして初めて出て来た玖珂の父に関する情報。そう言えば君、お嬢様でしたね。だから知ってたと言うべきか。
「眼でも分からないんですか」
「それ自体が仏由来のモノのせいか、それとも別の要因か、見えづらいんだよ。後、誰かに妨害されてる」
仏ってスゲーなって今では思う。天眼の妨害が出来るらしいし。
妨害で玖珂がこっち見る辺り、父さんが妨害してる? この調子だとチキュウにいる方の父さんっぽいなぁ。こっちの子供の父さんは多分これ知らないッぽいからな。
いろんな情報で頭がこんがらがる。多分客観的に俺の頭、覗ける奴いたら面白い事になってるって指差して笑われる自覚が今の俺にはあるよ?
「分かるのはそれが限界、他は知らんがな!」
先まで食べていたプリンのスプーンを投げ捨て愚痴る。彼女にしてみれば天地の全てを覗き見る天眼で意識して覗けぬものがある事が苛立たしいのか大層拗ねていらっしゃる。
「分かったありがとう、ユミ」
少しでも情報が集まったが故か、真剣に説明してくれたことえの感謝か、エニグマは心を込めて頭を下げる。追従する形だが俺もテレザも教えてくれた感謝をこめた。
「あー、どういたしまして」
真正面から感謝されたのはそんなにない事なのか、顔を赤くして照れる玖珂。大変珍しい微笑ましィ光景なのだろう。が、まぁ直後に、
「だけど、匙投げ捨てて散らばったプリンカスは綺麗にしときなよ?」
「……う、へーい」
当然と言えば当然のお叱りが来た。皆もマナーを守って正しく旅館を使いましょう。
「で、結局、燈籠だけ使い方が分からないと来ましたか」
話が終わり、まとめに入る。
大体の事情と、遺跡遺産については知れたわけだが俺の燈籠だけ、どういう風に使えばいいのか分からなかったなぁ。本当にこの燈籠の価値しか分からなかった。
机の中央に置き、薄らぼんやりと俺達を照らす仏の慈光を放つ燈籠。曰く通りのその光は心を癒してくれるものだけど、それでも届かないモノが有るのだと知る。
「--ゴメンね」
「見えぬのだから仕方なし」
口調は軽いが玖珂もエニグマもそこそこ責任感を感じているあたり、どうにかしたいのだが、どうにもできない。
「でも、今後の戦闘にも差支えありますものね」
「時が来れば教えてくれるとも言ってたし、実際に使われてた事知ってるから何とかなりそうな気もするけどなぁ」
だがしかし、今までの説明で分かる事がどうしても戦闘と結びつかない。
「それ、本当に物なの?それ」
「分からん。何か物だろうと即答すらできない」
生命の脈動とかそう言った系統は感じないし。
「本当に未知なんですね?」
「そーいえばこれの代わりに渡されそうだった魔刃」
「知らないよ?」
燈籠を指でちょんちょん弄りながら、玖珂の言葉をバサリと切り捨てる後方召喚士、全く心が繋がってるっていいね。こんなにもふざけ合えるんだから。




