敵を知り、己を知れば かつては神門都市アリアトレス
「ごちそうさまでした」
「御粗末さまでした」
……くっ……お前の料理ではあるまい玖珂!
「それもそうですね」
突っ込まねーぞ!
ボケがギャグに回転する。食後を乗り越えて
存在否定はさせぬと矢鱈滅多ら自己主張を繰り返す玖珂はほっとこう。
中々豪勢な食事であった。かの国が近い事もあり、食事が和風であったというのもいい。和風であり、完全な和ではなかったがそこが逆にそこが別の国に来ていると思わせ素晴らしかった。海に近いが故に、新鮮な塩と海産物が豊富で、寒さゆえか食物の身がしまってるのもポイントが高い。
「落ち着いたから話、再開させるよ。レイ」
おっと
皆でご飯を食った後、喧嘩で滞った話がまた始まる。
「何の話だったけ?」
玖珂、本気で言ってるならお前の目を使って過去の世界史漁ってこい?
飯食ってすぐ横になった玖珂に、にこやかな顔で挑発してみるも笑顔で返された。クソ、込めた感情分かってるくせに皮肉が通じん。
「どうせわかってますし無視して進めてください。エニグマさん」
「そだね。それではまず、銀の腕輪について説明しようかな?」
二人は泡でも共に出てきそうなため息をつきながら、玖珂を無視して話を続ける。
途中、あーうそうそ、と何処からか聞こえてきたが気のせいだろう。とりあえず俺達は、後三時間ほどで夜になりそうな絶妙に暇な時間をエニグマの説明で潰そうとしていた。
「そう言えば遺跡遺産ってさ」
「、他の呼び方は無いよ」
音速いよ! 光速すぎる!!
本当にゆっくりと、そして淡々と処理されたリアクションにクリティカルな物を感じる。
多分、言いたかった意味まで理解されてるんだろうけどそれだからってこれは酷い。次につなげるボケを躱されたが、躱したくなる気持ちも分かる。またかって言う感情のこもらない目で見てたしね?
「ともかく、元々銀の腕輪は魔導書の携帯化を目指して開発された物なんだ」
その為、魔術に適した神秘性を持つ銀で構成されている。他にも色々と材料が使われているが最も驚いたのが
「えっナナセさんの血が混ぜ込まれてるんですか?」
そう、父さんの血が銀に続くメインの材料らしい。このサイズの腕輪作るのにどれだけ血を流したというのだろうか?
血を材料に使う際に実際に見える質量よりも遥かに大量の血液が必要になる。
「ついでに指輪サイズで二リットル必要だよ」
大きいサイズのペットボトル一本分必要なのか、腕輪を創るなら最低五倍は必用そうだ。それだけの血液をどうやって絞り出したんだ?
と言うか、何故血液?
細かな疑問が尽きないのだが、主に何故血液が必要だったのかなどは、すぐわかる事となる。
「しかし、気持ち悪くないのかテレザ。それ父さんの血液が主な材料らしいけど」
他人の肉体の一部が使われた装飾品など気持ち悪くてつけてられないだろう。そう思っての言葉なんだがとても不思議そうな顔をして、どういう事ですか? と言う顔をされた。
「ああ、血液や、身体の一部と言うのは魔術師にとって結構一般的な素材なので気にする人はいないと思いますよ?」
わお、それは驚きだ。その答えに色々考えていると更に、疑問に対しての答えまで降り注ぐ。
「更に、血液は最も魔術を通し、優れた魔法の使い手は血液こそが個人的な一種の魔導書として機能したといいます」
自分の分野故かとても楽しそうに語りだす。指を指示棒に見立て振るうその様は、まるで自分の担当科目の中で好きな部分が出て来た新米女教師のようで微笑ましい。
「そしてナナセが発掘してきた遺跡の技術は魔術の血液伝授、血液を媒介に吸血による奪取、輸血による伝授、同じ血を受け継ぐ者に生まれる前からから相続させるものだった」
「へぇ、てことはさ」
エニグマが説明してくれたことから推測する。その事が事実だとするならば、玖珂も気づいているのか乗ってくる。
「そう、安全に製作時期であった時に、ナナセが持っていた魔に関する知識を与え、使用血液量分の魔力補助をしてくれる疑似的な賢者の石それが、銀流の腕輪の真価だよ」
曰く、魔力量及び魔術知識に於いて、父さんを超す、あるいは匹敵したモノは少ない。
トップクラスでさえ、神以外となると匹敵するのでさえ五人見つかれば良い方であり、後にも先にも上回ったのはこれから向かう国の元女王である自称普通の女子高生ただ一人。
ぶっちゃけ、魔王に匹敵すると言われた父さんを上回った時点、で普通の女子高生って名乗るのヤメロとその人に言いたくなったのは俺だけじゃないはず。
そう、それはつまり、その腕輪さえあればどんなものでも神に近きチキュウの源世覚醒者と魔術だけなら匹敵できるようになる夢の装備という訳である。
「え、そんな、すごい物なんですか……でも師匠は」
「あいつあんなんでも、わざわざ人間の国から魔族領も王宮に招へいされる程度には桁外れの才能を持った魔導師だからね」
そう、それは危険な物を監視する魔族がわざわざ監視しなければならないほどの有能な存在であったことを意味する。
あの人、ただの、のんべぇだと思ってたけど実は相当にヤバい人だったんだな。
あかされる腕輪の真相と共に明かされるエリーゼさんが実はちょーすごい人だった説。うん、人は行動によらないな。
「へっくしょ!」
遠い地でくしゃみをする誰かの幻聴が聞こえた気がした。
「しかし、銀流の腕輪なんてそのような物を造ろうと父さんは考えたんだろうな」
当然出る疑問。銀流の腕輪を見ながら俺達はその事について考える。まぁ、あいつに関しては眼もあり考えなくても分かるようで、
「ナナセさんは、万能属性の性質を秘めたすべての源の中央、そして統べる王の性質をもっとも突き詰めた土属性の終極。ただ、本当に極めすぎてたから造らなくては行けなかったんだよ? 失敗したけどな!」
ババーンとでも言うべきか、いきなり立ち上がり自身の顏に親指を向けて語り始める玖珂。
まぁ、玖珂の口から語られたのは意外と言うべきなのだろうが話し方が気に入らない。が、無視されて悲しかったんだろうなとも思う。
「天眼って本当に便利そうですね?」
のだが、当然そうも思わんのもいる訳で、唐突に躍り出た玖珂にテレザは冷静に返す。輝きの放たぬ瞳で立ち上がった玖珂を見上げるその姿は何の感情があるのかは分からない。
ただ、その目にか、それともその言葉にか、不服な物があるのか珍しく、見下ろし、口ではへの字を描きながら沈みがちに表情を変えながら言葉を継いでいた。
「コレそこまで便利でもないけどね? ま、失敗したナナセさんはそれでも研究を続けてならば他者が使えば万能属性ではあるという事で、他人に自身の持つすべての魔術を使える適正と知識と魔力を分け与えるー。まぁ要約すると、魔に関する全てを授ける試作実験として銀流の腕輪造ったって訳さ」
長かったなー説明、本当に長かった。と言うのが正直、第一の感想である。
「ユミもこれで重要な所以外飛ばして話してるんだけどね?」
「結局、本来成功させたかった実験の方はなんだったんですか」
自分が話す必要も無くなり気楽になった為か、玖珂に対してフォローを入れるエニグマ。茶をしばきながらのほほんと語るその仕草は、とても食事前いじけてた人とは思えませんね。
話しが一つ落ち着いた故に、テレザが手を上げおずおずと質問する。発現された内容に関しては俺も疑問に思ってた事で俺もそれに頷き、答えを待つ。
「それは終極の土は、そのあり方から守る事、造る事、成長させること、そして癒す事に特化してしまうんだよ。本来なら万能と言う全てを統べる皇の魔術特性を帯びているハズなのにね」
「あー、分かりました攻性魔法が使えないんでしたよね、ナナセさん」
唐突に始まった属性講座に俺達は首を傾けざるえなかったが、最後まで聞けば何となく言いたい事と、何故この様な説明の仕方にしたのか察する事が出来たので、エニグマに文句をいう事は出来なかった。
いちいち疑問に答えるのめんどくさくなってきたんだろうなぁ……
結構すごい属性で西洋東洋問わず偉い人が持ってる属性なのに軽んじられることの多い属性 土 まぁ本来のナナセの属性はこれに分類されるだけだけど




