剣の世界で
周りには何もない、何も存在してはいない。未分化の可能性、生まれる前の嬰児の胎盤。そう呼ぶべき無明の闇が俺の目の前に広がっていた。
「窮屈に感じるな」
第一声が何とも情けない感じもするが、正直なこの空間の感想である。なんというかまるで人間が自然に苦しいのだ。まるでいるだけで大切な『何か』が激流に削られていく感覚がある。
それに、何となくだが悪意を感じる。意図的にそう言う世界になるように押し込められたように感じるのだ。
周囲から感じる成長するな。変質しろ。都合よくあれとでも祝福されているような気配が、よりこの空間を居心地悪くしている。
どこもかしこも息苦しい暗闇の中で、光る何かを見つけた気がする。光源を見つけて安堵してしまったのか、思わず俺は手を伸ばす。
「ぬっ」
虚脱感を感じた。伸ばした手から奪われる何か。この世界の削る力の源はあの光源である事が発覚する。
「あれは……」
俺はそれを確認した後、それなのに抗い難い何かに縋る様に光源に一歩、一歩近づいて行ってしまう。削られる。いや、近づく度に『流される』感覚がある。強大な何かに『何か』が塗り替えられて行くようにも感じる。
「それでもッ」
何かに突き動かされるように進み続けた。そして、目の前に光源が存在する。それは暗闇の中に主張する一本の剣だった。
「やはり、遠目でもわかっていたが俺の持っている剣か……」
この剣、今思えば名前なんて言うのだろう?今までそういえば不自然なまでにこの剣についての名前をエニグマ達は出してこなかったような……
そう俺が、つい剣の前で考え事をしていると突如頭が痛みだし思わず頭に手を添えた。
(かれらにとって、わたしのそんざいはきんきであったり、うらみをいだいているものがおおいの。だからわたしのなまえをださない)
頭に直接声が聞こえる。言葉から考えるに、もしかして、俺は剣の方向を見る。
「お前なのか」
俺は剣に語りかける。当然返事はない。
「当たり前だよな」
剣に話しかけたところで言葉が返ってくるわけがない。見た感じ、周囲の情景は変わらず暗闇しかない。 思えば、この世界を認識する前までやってたことが布団で寝てたことを考えれば、この世界は夢の中である事は確実な訳で……
疲れもあって俺は脱力しながら改めて剣を見た。そしてここに来るまでの現象故の疲労の為か、ついつい独り言が俺の口から流れ出す。
「夢の中くらいはさ。お前と会話してみたかったなぁ」
いつも腰に佩かせている剣。重要な物で世界を滅ぼす可能性を秘めたとても危険な物。
「だけど、お前は本当はどうしたい?」
「もしかして剣なのに人を殺すことが嫌だったりするのか?」
「意思を持つことが確かという事から何時かお前と話がしたいと思っていたんだぜ」
そう更に剣に対して帰ってくるはずもない言葉を投げかける。
(つながった) 「つながった」
突然、言葉が聞こえた気がした。その言葉の発生源を探していると剣のあったはずの場所に突如、目の前に、少女が現れる。
「わたしもはなしてみたかったよ? はじめましてわたしのとうだいのしょゆうしゃさん」
「君はいったい・・・」
話しかけてきた剣の前に浮遊する少女に俺は反射的に返すことしかできなかった。その少女は十代ギリギリくらいの年齢に蒼いストレートの髪の少女。何処と無く髪の毛の色が剣の柄の色と似ているような・・・
「つかのいろと、かみのけのいろがいっしょなのはとうぜんだよ。だって、わたしはそのけんだし」
うん、薄々わかってたことをあっさり言われた。けどやはり驚くな。言ってることに違和感を感じないのは、多分、この子の雰囲気が今まで持っていた剣と似通っている気がするからだろうか。こちらの納得した事を感じて、察したのかそのまま剣を自称する少女が言葉を続ける。
「あらためまして、わたしのなまえは転翔、創世剣・転翔。ひとのときのなまえはアルヴァ」
今まで無銘の剣だと思っていた為、名前が多くてちょっとだけ混乱する。二つ名前があるようだがどちらで呼べばいいのか・・・迷っても仕方ないので尋ねてみる。
「なぁ、どっちで呼べばいいんだ?アルヴァか?転翔か?」
その言葉に少女は言葉に詰まる。が、特に悩んだ風もなく切り返す。
「どちらでもすきなほうでおねがい。ついでにせんだいはひとのなまえでよんでた。けど、だいたいは、けんのなまえでよばれてた。」
また、返し辛い返答が帰ってきた。さてどちらの呼称で呼ぶか・・・
まぁ今、冷静に考えて思えば、結構簡単な事だった。まず、剣の方が本当の名前であるからそちらの方で呼んだ方が良いのだろうけど、人型である時はできる限り人の名前で呼ぶ方が良いだろう。
それに、剣の事を隠す必要もある。その為にわざわざ広く知られている可能性のある方の名前で呼ぶわけにもいかないというのがもう一つの理由である。
一応名前の認知度についてもアルヴァに聞いてみたが、やはり人の時の名前の方が認知されてないとの事。
「わたしのヒトとしてのなまえをしってるのはしょゆうしゃとそのなかまくらいだとおもうよ?」
という事なので、今後できる限りアルヴァと呼んでいく事にした。語りかけてきた理由と、なんで今になって俺に語りかけてきたのか聞いてみた。一応、所有者になってもう一週間にもなるのに今の話しかけた理由はなんなのか聞いてみた。繋がったというのも少し気になった。
「まずは、イマはなしかけたリユウからこたえるね。たんじゅんなハナシなんだけどイマまでは同調がうまくいってなかったからはなしかけられなかったの」
同調とはなんなのか、深く説明してもらった所、同調とは所有者の魂と剣自体の魂を程よい感じに近づけることで、能力の安定性を保つことらしい。これが出来ていないと剣に魂を食われやすくなるとの事である。
さらっと恐ろしいことを言ってくれる。ようはそれが出来なかったときは魂とやらが食われていたことを意味する。
ただ、これをやっておかないと所有するだけでどんどん、魂を吸われていくらしい。この過程で何故魂が吸われていく現象が起こるのか説明をうける。
曰く、魂とは強制的な融和性を持っており、肉の器が無ければ混じり合ってしまうらしい。これが本来、善人であったはずの幽霊が他人の思念に影響を受けて、幽霊になった後に他人に迷惑をかけてしまう遠因でもあるらしい。
魂の総量が絶大的に高いと、肉の器を通り抜けて他者の魂に干渉してしまう。ただあるだけで相手の魂を奪ってしまう出来事が起こりやすくなるらしい。
その為、同調することで対象を所有者に限定し、魂の循環を行うことで、所有者の魂をとりすぎず、そしてあるだけで他の魂に影響を与えないようにしているらしい。
他にも、時間の経過させる度に少量でも魂を他から補てんすることは、所有者にも影響を与え、命がけづられていく代わりに、体力や他の能力を上昇させることも可能との事。ただし、これは剣が近くにあった時のみの恩恵であるらしい。
「持ってるだけでも恩恵と呪いを与える剣か・・・」
何故、この剣がエニグマ達に危険視されているのか、改めて分かった気がする。
「ソレいがいにもリユウがあるんだけどね」
時折、まるで心を読まれているかの如く話が進むのは、本当に心をよんでいるというか、魂を読んでいるから、らしい。魂を重ねる同調によって、相手の考えている事が読めるらしい。時折、聞こえてきた声もその現象が起きていたからだという。
「アイツラがワタシのせつめいをロクにしなかったのは、アイツラにとってわたしがあまりいいエイキョウをあたえなかったから、あいつらとテキタイすることがおおかったからだよ。」
そして、アルヴァは魔族に敵対するものによく使用されてきたらしく、その過程で彼らの大切な人を殺してきたらしい。その為、特に古い連中はアルヴァに対して良い感情をもっていないらしく、名前を言わないのもその一環らしい。
なんというか、色々因縁があるのだと改めて感じた。
このこの口調意外とめんどい




