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五導の賢者   作者: アイクルーク
第二章
11/91

情報収集withオリヴィア

 

  アーバンでの宿を確保したので、一度ラノン達と集まり、この街の滞在期間などを話した。

 ちなみに部屋割りはラノンとリアで一室、グレイスとアドネスで一室、俺が一人で一室だ。

 まぁ、ラノンが一人じゃないのは予想通りだな。

 もしかしたらリアが侍女的な役割を‥‥いや、ないな。


 そうして話し合った結果、俺はリアと街で情報収集をして、ラノンは二人を連れて街の代表者達に挨拶に行くことになった。

 実はアーバンは自然にできた街なので決まった支配者がいなく、何人かの大商人達がこの街をまとめている。

 なんでもラノンは通りがかった全ての街の代表に挨拶をしているらしい。

 本当に、律儀なこった。




 そういうわけで俺とリアは適当に街を歩いていた。

 なぜリアかと言うと、いつもならこの役割はアドネスがやっていたらしいが情報収集の本職のハンターである俺がいるから、と言う理由で普段は絶対に任せないリアにしたらしい。

 今は表通りから少し外れた場所、ギルドがあるハンター地区にいる。

 ハンター地区とは主にその街のギルドがある場所一帯のことで、近くには酒場や武器屋などが多数できることからそう呼ばれている。

 俺とリアは無難に酒場から情報を集めることにしたが、意外と酒場が見つからない。


「ねぇ、レン。一つ聞いてもいいかな?」


 さっきまでのラノンがいた時とは違った雰囲気のリア。


「なんだ?」


 聞かれることに想像がつかないわけではない。

 それでも、何も知らないフリをする。


「レンって、何者なの?」


 やっぱり‥‥か。


「何者って、言われてもな。ただのハンターとしか答えられない」


「へぇー、ただのハンターが魔法を使えるんだ? じゃ、あの縛雷バインド・スパークは? あれって、王国の魔導士しか使えない魔法だよね?」


 リアの口調が強くなり始める。

 俺はそれを黙って聞きながら歩き続けた。

 国に所属していない魔導士なんてそうそういない。

 仮にフリーの魔導士を見つけたとしたらそれは脱走兵か独学で魔法を学んだ者のどちらかだ。

 独学で魔法を学んだ者は王国に見つかるとしつこく勧誘されるらしいが‥‥


「ねぇ、レン。答えてよ‥‥」


 リアはいつでも使えるよう小杖に手を添えている。

 俺を警戒しているのだろう。

 これだから、魔法は使いたくなかったんだけどな。

 左手に持った刀がいつもより重く感じる。


「‥‥俺は捨てられたんだ」


「捨てられた‥‥?」


 リアは話し始めた俺を見て、僅かに警戒を解く。


「その時、師匠に出会った。そして、魔法を教わり、武器の使い方を教わり、最後には‥‥この刀を託された。縛雷バインド・スパークは師匠から教わった魔法だ。なぜ使えるのかは俺も知らない」


 師匠も昔は王国に使える魔導士だったのか、それとも魔道書を盗んだのか、真相は俺にもわからない。


「それで‥‥その師匠はどうなったの?」


 リアが少し遠慮気味に訊いてくる。


「さぁな。剣を一本持って、魔界へと向かって行った。師匠いわく、それが自分の定めなんだとよ」


 魔王とその眷族がはびこる魔界に単身で行って無事なわけがない。

 でも、あの師匠が死ぬはずない、そうも思っている。

 そんなことを考え歩いていると、目的である酒場を見つけた。


「おっ、酒場だ」


 やはりと言うべきが木造建築の酒場はやや薄汚れている。

 リアが立ち止まったが、俺は気にせずに酒場に入ろうとするとリアが口を開く。


「最後に、もう一つだけ」


 その声に反応して俺の足も止まる。

 まだ、納得してないのか‥‥


「レンは、ラノンの味方だよね?」


 先ほどの質問とは打って変わって単純明快な質問。

 俺は口角を釣り上げると、振り返ってリアと目線を合わせる。

 リアの目は俺を見定めているようだった。


「もちろんだ」


 リアは無邪気な笑みを浮かべると、俺の横を走って通り抜ける。


「さっ、早く入ろうよ」


 そう言ってリアは酒場の中に入って行く。

 ‥‥とりあえずは、なんとかなったな。

 俺は一安心するとリアに続いて酒場の中に入る。




 酒場の中は思ったより広く、四人掛けのテーブルが九つにカウンターが五席あった。

 しかし、まだ昼間だからか埋まっているのはテーブルが三つとカウンターが二席。

 酒場の中にいた人達の目線が一気に俺達に集まるが、気にせずそのまま情報を持っていそうな人物を探す。


 安物の武器を持った三人、それとかなり装備が充実している集団‥‥おそらくあれは高ランクパーティーだろう。

 あとカウンターにいるのはソロの低級ハンターだな。

 話を尋くなら高ランクに見えるパーティーか。

 それはリアも同じ意見のようで目が合うと、高ランク達の下に行くよう目配りされる。


 他にも席は余っているが、あえて強そうなパーティーの隣のテーブルにつくと、隣の席から一気に視線が向いてくる。


「ども、そっちもハンターだろ?」


 俺は自分の席を隣のテーブルへと向けた。

 ハンターにとって互いの交流は大事だ。

 自分が命を託せる仲間は多くいた方がいい。

 それに共に依頼を受けた際に連携も取りやすくなる。


「まぁ、そうだな」


 リーダー風の男が答えてきた。

 やや伸びた金髪だがグレイスとは違い、かなりの癖っ毛だ。

 歳は三十を超えているようで熟練ハンター、と言った感じだ。

 ハンターなら情報を持っているはず。


「俺はレン、こっちは連れのオリヴィアだ。よろしく」


 そう言って手を差し伸べる。

 リアは頭だけ下げ、口を開かなかった。

 全部、俺に任せる気かよ‥‥


「俺はドレン、こいつらは俺のパーティーだ」


 そう言って手を握ってくる。

 その間に俺はそれぞれの装備品を見た。

 軽装備のドレンに重装備の男が二人、後は万能型のシーフが一人と遠距離の弓が一人。

 戦闘でのバランスの良さそうなパーティーだ。

 まだ会ったばかりだが、パーティーの雰囲気も良さそうだな。

 根拠のない憶測だが、俺はこの手の勘を外したことがない。


「俺達は旅をしててな、なんかいい依頼はないか?」


 こうやって訊くのが一番手っ取り早い。

 基本的に問題があった場合、ギルドに依頼がきている。

 それを見に行くなり、聞くなりすれば十分情報は集まる。

 だが俺が質問をした途端、ドレンのパーティー全員の顔がにやつく。


「惜しいな。破格の報酬の依頼があったが俺達が受けちまった。今はその前祝いだ」


 破格の報酬‥‥

 その言葉に違和感を覚える。

 確かに依頼によっては異常に報酬が高いものあるものもあるが、その大半は予想を超える難易度だったりすることだ。

 熟練のドレン達がそんな簡単なことに気づいていないわけがない。


「依頼内容を、教えてくれるか?」


 守秘義務のある依頼なんてごく僅かだ。

 こうやって言えば、教えてくれない、何てことはそうそうないだろう。

 ドレンは仲間達とアイコンタクトをとり、どうするかを決めている。

 やがて、ドレンは全員からの承認を得たようで話し始めた。


「実は二週間程前から西の道を通ろうとする人が何者かに襲われているんだ。それも一人、二人じゃない、通る人すべてだ」


 西の道、って俺達が使う道じゃないか?

 確認しようとリアを見ると黙って頷く。

 まじか‥‥まずいな。

 ラノンを連れたままじゃ、その道は使えないよな。


「それで? 相手はなんなんだ?」


 肝心なのは敵の強さだ。

 魔物の名前を聞けば個体差はあるもののある程度のランクがわかる。

 魔物のランクはハンターのランクと対応しており、Cランクまでいくと倒せる者が限られてくる。


「さぁな。言っただろ、通った奴は全員死んでるんだ。死体は街の近くに捨てられてるから、何かがいるのは間違いないんだけどな」


 ドレンは酒を一気に飲むとマスターに追加を持ってくるよう指示している。

 ただ単に魔物が居座ってるだけか?

 それだと生存者が誰もいない、ってのが引っかかるな。

 だとすると山賊か、もしくは‥‥


「レン、何か食べない? お腹減ったんだけど」


 リアが後ろから服を引っ張ってくる。

 そうだった、まだ昼飯を食ってなかったんだ。


「リア、なんでもいいから頼んできて。俺はもう少し話を聞いてるから」


「わかった。お金は払ってよ」


 リアはきちんと確認を取ってからカウンターへと向かう。

 ちゃっかりしてるな‥‥


「まだ何か訊くつもりか? なら俺からも一ついいか?」


「あぁ」


 ドレンはそう言うとテーブルの上に銅にも見えるほど淡い桃色のメダルを置く。

 大きさは手のひらに収まるほどで暑さは二センチくらいだ。

 これはハンターが自分のランクを証明するもので自身のハンターランクに応じてメダルに使われる金属が変わっていく。

 SSランクから順に白金、純金、黄色金、赤金、桃金、緑金、銀、銅が使われている。

 黄色金や赤金は銀や銅を混ぜた金である。

 ドレンのメダルは桃金、Cランクハンターだ。

 これはあくまで個人のランク。

 このパーティーのランクはBランク以上‥‥おそらくはAランクだろう。


「俺達は全員がCランク。パーティーではAランクだ。さぁ、お前もメダルを出せよ」


 やっぱり、か。

 片方がメダルを見せたらもう片方もメダルを出す。

 ハンターでの常識の一つだ。

 俺は腰袋の奥から赤金のメダルを取り出すと手に持ったまま、ドレン達に見せる。

 本当は個人でのBランクなんて目立つものを見せたくはないが、今は情報収集が優先だ。

 ドレン達は眉を上げながら俺の手の中のメダルをまじまじと見ている。


「個人でのBランク‥‥お前、何者だ?」


 この街の中でもトップクラスに強いドレン達ですら個人ではCランク。

 驚くのも無理はない。


「まぁ、色々あってな。話す気はない。で、他にこの近くで何か変わったことはないか?」


 このままだと道を変えることも考えられる。

 他のことも知っておいたほうがいい。


「他にか? 特にはないと思うけど」


「そうか」


 だとすると問題は西の道か。

 まぁ、少し待てば解決するだろう。


「まぁ、そんな辛気臭い顔するなよ。俺達と一緒に楽しく飲まないか?」


 ドレンはそう言って酒の入った木のコップを差し出してくる。

 中身は果実酒‥‥多分、レモンだな。

 酸っぱい匂いが漂ってくる。

 酒は苦手ではないし、嫌いでもない。

 ただ、昼間から飲むことに少し抵抗があるだけだ。

 ドレンは笑顔でレモン酒を渡してくる。


「そうだな。久しぶりに、少し飲むとするか〜」


 受け取ったレモン酒を一気飲みすると、空になったコップをテーブルに置く。


「ふぅ〜」


 レモンの酸味が効いた酒はなかなか飲みやすく、喉あたりもいい。

 久々の酒が体全体に染み渡っていく。


「いい飲みっぷりだな。もう一杯いくか?」


「まぁ、そんなに焦るなよ。ゆっくり飲ませてくれ」


 新しいレモン酒をもらった時、何枚もの皿を持ったリアが戻ってくる。

 皿の上には美味しそうな料理がいくつも乗っていた。


「えっ、レン、酒飲んでんじゃん」


 リアは驚いた様子で皿をテーブルに並べる。

 その後、俺とリアはドレン達と楽しく昼飯を取ってから宿へと戻った。



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