ゆらり 3
「嬉しいな~もう~」と水本が言う。
「今こうしてるのがウソみたい。夢の中みたい」
私もそう思う。これは夢の中だ。
じゃないとこんな素晴らしくドキドキする事なんか
私の身にはおこるわけがない。
「ダメだ…」と水本が言った。「やっぱやっとこう」
水本の抱きしめる力が少し弱くなって、
水本の唇が私の頬に軽く当たった。
少しずらしてもう1回。
私の心は「うわうわ」叫びっぱなしだがもう動けない。
また目をぎゅっと瞑ってしまった。
私の唇の端に水本の唇が優しく触れる。
「美月ちゃん…」聞こえるか聞こえないかの声で呼ばれるが、
目は開けられない。
水本の唇が私の唇に触れた。
優しく何度も少しずつ場所と向きを変えて
私の唇に触れるだけのようなキスをしてくれる。
どうしよう!チュウしてるチュウしてるチュウしてる…
何だか少し震えてきて両手で水本の服をぎゅっと掴んだら
急に唇を噛まれた。
びっくりして目を開けると水本がニコっと笑って
思い切り私の鼻をつまんだ。「痛っ、え?」
少し口を開けた瞬間に水本の舌が入って来て
びっくりしている私の舌を1回撫でて、そして唇が離れた。
またぎゅううっと抱きしめられる。
「美月ちゃん、ヤバいな、ブラはめてないよね?」
そうかはめてない。なんて事してるんだ私。
「このまま部屋に連れて帰りたくなるから
もうこの辺で止めとく。…あ~ホントは止めたくない~」
もうほんと!信じらんないくらいの抑制力使ってんだけど…
それ、わかってる?」
抱きしめられたまま、うんうんとうなずくとさらにぎゅっとされた。
水本は続ける。「ダメだ…ほんと連れて帰りたい…
でもミノリに見つかったりして嫌われたくない。
3人で仲良く暮らさないとね」
水本はまた手を繋いで私を私の部屋の玄関に連れていく。
水本の顔をまともに見れない。なぜなら私はちょっと泣いていたからだ。
「美月ちゃん?」水本が心配してくれる。「え、まさかすっごく嫌だった?」
「違う。…ミノリに嫌われたくないって言ってくれたから…
なんかわかんないけどちょっと涙出てきた」
「うわもう~…頑張って帰ろうと思ってんのにそんな事言うから」
真っ直ぐに、微笑みながら見詰めてくるのを止めて欲しい。
「じゃあおやすみ」と言いながら水本がもう一度抱きしめて
額にキスをしてくれた。
すごい。こんな熱愛してる恋人同士みたいな事を
私がされているなんて。
ずっと夫からも触られなかった私がされているなんて。
水本も言ってた。ウソみたいで夢みたいだってさっき言ってくれた。
わたしだってウソで夢みたいだと思う。
こんな事もうないかもしれない…
「…おやすみなさい」少し目をそらして言った私の手を
もう一度ぎゅっと握って、
水本はドアを閉めて帰って行った。




