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すごく近付く人 2

ミノリが私を見つめる。入れたいの?と言う目だ。

私はさっきぎゅっと握ってきた水本の温かい手を思い出す。

「玄関でもいい?」ミノリが言った。

「嫌だよ!中まで入れてくれよ」

「う~~ん」とミノリが唸った。「もう遅いから」

私はケラケラと笑ってしまい、水本がむっとして言う。

「今日が大事なんだって。明日とかにしたら効力弱まるから」

「何の?」

「心がうまく伝わるっていう力が」

「さっきも言った通り、僕は僕の父さんの事が好きだから」

「うん」

「カオル君と母さんがイチャイチャするとか気持ち悪い」

「まぁな」

「母さんが嫌がる事しないでよ?」

「うん。絶対しない」

「…じゃあ今日だけね。そいで20分だけね」

「ありがとうミノリ」

脇で二人のやり取りを聞いていた私は

とてもそわそわした気持ちになった。



居間で私達は畳の上に座る。

何か飲むかと聞くと、いい、と水本は答えた。

「20分しかないから。話の続きからはじめるんだけど、いい?

もうオレが一人でずっとしゃべるから何も言わずに聞いといてよ?」

私はぎこちなくうなずいて、ミノリは…白目をむいて見せた。

「ミノリ~~…まあいいや。

何回も美月ちゃんたちを見たって言ったでしょう?

それはオレが通りかかった小学校の校庭で

美月ちゃんがミノリをブランコに乗せているとこだったり、

あの大通りに出る手前の川沿いのあぜ道を散歩してるとこだったり、

今はもうなくなった公園の近くのコンビニで駄菓子買うとこだったり…

ミノリと一緒でいつも嬉しそうだった。

ダンナさんと一緒のとこ見た事もあったよ。

ミノリ、あんなに言っちゃったけどお父さんはかっこいいよ。

ダンナさんちょっとリョウさんに似てるよね?

さっき美月ちゃんがバラ渡されてる時ちょっとイラっとした。

まぁいいけど。

で、ある時からぱったり見なくなった。

ずっと見ない時が続いたからオレももう忘れてた。

でもまた見たんだよ。美月ちゃん一人だった。

自転車に乗ってたから仕事の帰りだったのかもしれないけど、

結構…なんかちょっと悲しそうな顔してた。

オレは美月ちゃんと話した事もないし、

その時は名前も知らなかったのに何かすごく気にかかったんだよ。

それでしばらくしてからまた美月ちゃんを見た。

たまたまいつも仕事に行くのに通る道が工事中で、

裏道通って、いつも通らない道だからちょっとキョロキョロしてて、

そしたら美月ちゃんの元の家の庭先に美月ちゃんが立ってた。

また少し哀しい顔で。

あ、と思ってオレは知り合いでもないのに自転車を止めてしまって、

でも美月ちゃんは道にいるオレには気付いてなくて

で、空を見たんだよ美月ちゃんが。真上の空。

それで、ぱああっと、もうそれは曇ってた空が

いっぺんに晴れ上がっていくような感じに、顔が変わった」


水本が話すのを止めて私とミノリの顔を見た。

「それだけだったんだけど。

でもそれでオレは…恥ずかしいけど大好きになったんだよ。

それからしばらくしてこの部屋を美月ちゃんが見に来て

オレは2号室のビイのとこからそれを見かけてびっくりした。

当然のように運命だな~と思って

美月ちゃんとミノリが来るのがすごく楽しみだった。

早く仲良くなりたいと思って。

ミノリ、嫌がるけどさ、でもオレはやっぱり美月ちゃんが好きだな」


ミノリが困った顔で水本を見る。

「でもカオル君はさ、母さんじゃなくても

他に彼女できるんじゃないの?」

まぁね。小3の男子でもこういう事言うんだな…

私が小3の頃の男子を思い出そうとしてみるが

今水本に言われた事で頭がいっぱいでうまく思い出せない。



水本はうずまきを見た時の私を見ていたんだ。

じゃあ水本もうずまき見えたかな。聞いてみたい。

たぶん、というか絶対に見えていないとは思うけど。


アレは私にだけ見えたモノなのだ。



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