夢の世界 1
「「ちょっと立って」」
オレンジ姉妹が口を揃え残った全員に言った。
管理人はそのまま部屋の隅の
チェストの下の方の引き出しを開けている。
何だろう、といぶかしみながらも
ミノリを促し私も立ち上がった。
水本が私とミノリの手を掴んで部屋の隅の方へ移動する。
高森美々はテーブルの上の開いた食器を片づけ始めた。
「私は見たくないから片づけしとく」
私も手伝った方がいいんだろうか。
水本を見ると小さく首を振っていた。
「美月ちゃんはゆっくりしときな」高森美々が言った。
「今度二人で呑もうね?」
私ににっこりととても美しい頬笑みをくれたが
そのまま水本の事は睨みつけた。
オレンジ姉妹が「「せーの!」」と言うのが聞こえ
二人は、高森美々が少し片づけたにしても
まだ食べ物がや飲み物が乗った食器が乗った楕円形の食卓を
軽々と持ち上げた。
胸オレンジハートの白いTシャツの下は
ピッチピチの合皮のオレンジ色のショートパンツを履いていた。
姉妹は食卓の上に残ったものを全く落とす事もずらす事もなく
まるで病人の乗っていない担架を運ぶように
軽々とそのまま部屋の隅へ運んだ。
「何がはじまるの?」水本にそっと尋ねてみる。
「お楽しみ。すごいよリョウさん」
そしてミノリに言った。
「ミノリ、すげーから、一つも見逃さないように見ときな」
水本がいつの間にかミノリのことを呼び捨てにしている。
ミノリはただ何がはじまるのだろうと
キョロキョロするだけだ。
管理人がチェストから出したのはCDプレーヤーだった。
コードを伸ばしてコンセントにさし、
キャスターの付いたチェストをガラガラと動かしてくる。
一度部屋から消えた奥さんが戻ってきたが
何かよくわからない証明器具のような機材を運んできた。
綺麗で上品な奥さんがこんなものを軽々と手早く運び込むなんて。
そして高森弟が、元から黒いシャツを着ていたのだが
その上にさらにスパンコールの付いた
黒いジャケット羽織り、シルクハットもかぶって
大きな黒い箱を持ち運びながら登場した。
「「ぴゅううううううう~~」」
指笛を吹いたのはオレンジ姉妹だ。
奥さんが機材のセッティングをしている間に
高森弟は黒い箱からいろいろな道具をチェストの上に出していく。
機材のセッティングが終わった奥さんによって、
パチン、と美しく、部屋の電気が消された。
暗くなった部屋鳴り響いてきたのは
「オリーブの首飾り」だった。手品でよく使われる曲。
音が鳴り始めると、
高森弟にほの青いスポットライトが当たった。
「「ぴゅうううううう~~」」
もちろんオレンジ姉妹の指笛だ。
耳にキン!とくる。BGМをかき消すほど高い。
とんとん、と肩が叩かれた。
それは水本で、椅子を3つ並べて
そこに座るように合図してくれた。
ミノリを真ん中に座らせ、その左側へ私は腰かける。
すると水本が右端の椅子を私の横に左側へ並べ変えて
私とぴったりとくっつくようにして腰かけてきた。
ひどく気まずい。
こんなにくっつかれると逃げ出したくなる。
逃げ出したら後がもっと気まずくなるんだろうな。
が、証明がパラパラと変わると
奥さんがどうやって機材をいじっているのかと
そちらの方も気にかかる。
機材の方を見ていると
両耳の脇にそっと手が置かれ、
私の顔は手品をまっすぐに見るように向けられた。
手はもちろん水本の手だ。
恥ずかしくて下を向きそうになる。
が、手品がはじまると私はもう余計な事は考えられなくなった。




