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魔法の夜 1

「それは美月ちゃんもそう感じてくれてると思ったから」

水本が本当に嬉しそうな顔で言ってくれた。

「あ、美月ちゃん、紅くなってる」

私は首を振って言った。「これはビール飲んだから」

「可愛い!!」水本が大きな声で言うのでびくりとした。

「ビールのせいとか」

いや可愛くはないから。

「こいつがいなかったらさ」

と水本は高森美々の事を敢えて見ないようにして言った。

「もうチュウしたい感じだよね」

ダメだ。私は完全に紅くなった。


「よし、帰ろうっと」水本が急に立ち上がって言うので少し驚く。

話がまとまっていないのにあまりに急にそう言ったからだ。

「ホラ!帰るぞ」水本が高森美々の腕を掴んで立ち上がらせようとしたが、

高森美々がその手を払い除けて言った。

「あんたさ、私と一緒に帰った振りして、

後で自分だけまた美月ちゃんとこに来ようとしてるでしょ?」

ちっ!と水本が舌打ちをした。



結局話をしても同じだった。

私の心のもやもやは晴れないまま。

もういいや撤収しよう。ミノリを迎えに行かなきゃ。

「私、リョウさんとこ行きます」

「一緒に行こ」水本がにこにこしながら言う。「一緒にミノリ迎えに行こう」

こいつは私の言ってる事を全くわかってくれてない。


「ううん」私は首を振った。

「迎えにじゃなくて私も手品教えてもらう」

「え…」



5分後私達は高森リョウの部屋にいた。

私達というか、私達がごちゃごちゃしていたせいで

オレンジ姉妹も合流して高森リョウの部屋の玄関にみんなで揃うと

意外に全員を中へ招き入れてくれたので

私達は言われるまま、わらわらと部屋の中へ入った。

雰囲気的に部屋の中へ他人を入れたがらない人かと思っていた。

だから今夜ミノリだけ預けるのも少し不安だったのだ。


全員で部屋に入ったが、高森美々を除いてだ。

「私は止めとく」と高森美々は言った。

…そう言えば歓迎会の手品の時にも高森美々はいなくなった。

「明日待ってる」と高森美々は私に言った。「来る前にメールちょうだい」



高森リョウの家の食卓でミノリはココアをもらっていた。

クリーム色のマグカップから湯気が出ている。

「夜だからね、アイスは止めてココアにしたよ」

高森リョウが私に教えてくれた。

この人は喋り方もやっぱり、少し元夫に似ている。


いや、ミノリと湯気の出ているココアもだが、

私が今じっと見ているのは食卓の上の端で

ニンジンの葉をもしゃもしゃかじっている茶色い子ウサギだ。


オレンジ姉妹が飛び付くように二人揃って子ウサギに顔を近付けた。

「「かわいい~~~!!」」

子ウサギは二人が鼻を付けそうに近付いているのに

もしゃもしゃとニンジンの葉を食べ続けていた。



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