私の気持ち 3
私は戸棚の中から自分のつまみ用に取っておいた柿の種を取り出し
皿にザラザラと開け、
1番にプルリングを開けて立ったままビールをゴクゴクと飲んだ。
「「美月ちゃん?」」と高森美々と水本が言う。
ゴクッ…。「…はい」
「私と一緒に座る?」と高森美々が聞く。
「いいえ。私は立ったままで。あの…さっそくですけど
お二人にお願いがあるんです。
こんな私がこんな事言うのはおこがましいんですけど
ミノリの前で、…その…」
やっぱり言いにくいし恥ずかしい。
「私の事を、その…好きとか言うのはもう金輪際止めにして下さい」
「今朝も言ったけどさ、そういう…」
と水本が言いかけたが私は水本に首を振った。
「ダメ。ダメです。私は普通に暮らしたいの。
普通にミノリと楽しく暮らして、普通にお二人とも、
ここの他の皆さんとも、同じアパートの住人として
仲良くしてもらいたいんです」
高森美々が肩肘を付いて私を上目使いで見つめる。
本当に綺麗だな高森美々。普通に友達になってくれたらいいのに。
いや慣れるだろう。なってくれるはず。
今ここで私が頑張ってきちんと自分の気持ちを話したら。
「こんな私、とか言うの止めてよ美月ちゃん」
その綺麗な高森美々が言った。
「私が好きになった人なのに」
「なんかさ」水本が言った。
「オレは結構進展したと思ったのにな。
今日の午後、電話で喋った時に。
オレは美月ちゃんをものすごく近くに感じたよ」
恥ずかしい。私は紅くなる。
水本の言い方のストレートさにもだが、
私も水本と同じように感じた事が私の頬を紅くさせた。
「美月ちゃん、水本に電話してんの?」高森美々が私に聞く。
「私にはまだ1回も電話もメールもくれないのに…
美月ちゃんは私よりこいつの事がもう好きになってんの?」
「だから進展してるっつってんだろ。お前もう帰れよ。
オレは最初っから美月ちゃんとこ寄る約束してたんだから。
お前もう、ものすげー邪魔」
「美月ちゃん」高森美々が言った。「それに普通に、って何?
私は女で、女の子の事を好きになるけど
でもそれが私には、私の普通なんだよ?」
「はい。わかります」私は言う。
「それに私は美々さんみたいな綺麗な人に好きって言われるのも嬉しい」
「そう?」と高森美々はにっこり笑い水本はむっとした。
「私友達少ないし、その…美々さんみたいに綺麗で頭良さそうな人に
普通に友達になってもらえたらすごく嬉しい」
「美月ちゃん」高森美々は顔色を変えない。
「さっきも言ったけど、普通にって何?
でもまぁいいや、最後のところもう1回言って?」
「お友達になって下さい」
「そこじゃない。『すごく嬉しい』ってもう1回言って?」
「…すごく…嬉しい」
「気持ちわり~~」水本があきれた顔で高森美々をバカにする。
「水本、あんたこそ早く帰って
今日来てた元カノに連絡してあげなくていいの?」
高森美々が言う。「何回もチャイム鳴らしてけど?」
「元カノじゃねーつったろブス。
美月ちゃん、元カノじゃないから。
今日来た子は元カノじゃないから。
一緒に何回か出かけた事はあるけど、それだけだから」
高森美々が笑いながら攻撃的に聞いた。
「今日来たパンツ見えそうなミニスカートの子は元カノじゃないけど
元カノは他にいて、今日来た子はたまに遊んだだけって事?
帰って連絡してあげたら今からでも来るんじゃないの?
来てもらえば?」
「お前何オレの事攻撃してんの?
お前だっていろんな女の子に声かけ過ぎてトラブル起こしてたろ?」
「止めてください」と私は言う。
そんな私が知りたくもない話を私の前でわざわざするな。
それに何で水本は高森美々の事を『お前』って呼んでんの?
「今日来た子とはホント付き合ってないから。
一緒に何回か出かけた事はあるけど、それだけだから」
何回言うんだ。もうわかったって。




