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私の気持ち 1

「まぁいいや。じゃあオレ帰んなきゃいけないからコレ」

水本弟はドアのチェーンに鍵をぶら下げるようにして掛けた。

「うちの兄貴の事、本当はあんま好きじゃない?」

そんな質問には答えられない。

チェーンに掛けられた鍵が揺れる。


「あんたまだ帰ってなかったの?」

見えないドアの向こうからそう言う声が聞こえた。高森美々の声だ。

「美月ちゃん?」水本弟を押しのけるように高森美々が

ドアの隙間から顔を覗かせた。

どうしよう。何かもう面倒くさいな。

早く鍵を預かってドアに鍵掛けとけば良かった。


私のその気持ちをくんでくれたのか、

「じゃあ、おやすみ」と言った水本弟が

ドアを閉めようとしたのにも関わらず、

高森美々がそれを片手でやすやすと止めた。

ガチャン!とチェーンが伸びてきって、

水本の鍵がガチャっと私の足元に落ちた。


高森美々がドアを掴んだままで弟を睨みながら言った。

「今日あんたの兄ちゃんの元カノ来てたけど?

髪の毛くりっとした、いっつもパンツ見えそうなスカート履いてる子」

「それ元カノじゃないから」と言ったのは水本の声だった。


兄ちゃん?と水本弟が言い、

「早く帰って来て良かった~~」と水本が言っている。

「今こいつが言ってたのは元カノとかじゃないから」

水本が無理矢理高森美々の脇から顔を見せながら言う。

私はしゃがんで鍵を拾い水本に差し出した。


「美月ちゃん!もう~~…何その鍵の渡し方。

オレそんな感じ望んでなかったし、もう~。

くそ、お前のせいで何かすげータイミングわりーな高森美々。

ていうかチェーン開けなよ美月ちゃん。本当に用心深いよね。

まぁこうやってこいつが来たりするからその方がいいんだけどさ」

水本は高森美々に言った。

「オレと美月ちゃんはホラ、もう鍵交換してる仲だから」

ジャラっと水本が自分の鍵を高森美々の綺麗な顔の前にチラつかせる。


「元カノじゃあないかもしれないけど」

高森美々がにこっと笑って言った。

「あんた何回かデートしてたじゃん。

だから今でも来るんじゃないの?」

「兄ちゃん」水本弟だ。「何かめんどくせーからオレ帰るわ、おやすみ!」

階段をダダダッと掛けて下りる音がした。


私のそばにミノリがやって来た。

「彼女じゃない人とデートするってどういう事?」と私に聞く。

私に聞くな。

「してねーって!お前帰れってブス!」

私はガチャッとチェーンを外した。


「美々さんはブスじゃない」

私が言うと水本はびっくりした顔をしている。

今日の午後はこの人の事結構好きになったのにな。

ほんの一瞬だったな私の幸せ。

やっぱり私は誰からも、本当には好きになってはもらえない人間なのだ。

何かもう本当にすごく腹が立って来た。


「うるさいですから」私は二人に言った。「中に入って下さい」

きょとんとしている二人を中に入れる事にした。

今夜でこいつらをきっぱりと断ち切ろう。

ここに越してきて水本に最初話しかけられた時も思ったはずだった。

ちゃんと本当はどういう人なのかわかるまでは

充分に気を付けて馴れ馴れしくするのは止めようって。

なのに私は1週間もたたないうちにほだされてしまって…



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