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近付く人 2

買い物をして帰るとちょうど5時くらいで

買い物したものを片づけているとミノリも帰って来た。



「母さん、何か嬉しそうな顔してない?」

ただいまの後ミノリがそう言う。

「え!…そんな事ないよ

…別に…そんな良い事もないし」

水本から電話が来た時、心を躍らせた自分がちょっと恥ずかしくなる。

そして今も私の耳には水本の声が残っている。


ミノリが私の顔をじっと見ている。

「何?」と聞くとミノリが言った。

「僕だけ今日車降りたでしょ?

友達のうちに持ってくもの取りに部屋に入ろうとしてる時にさ、

カオル君とこに彼女が来てた」

「…彼女?」

「若い女の人。パンツ見えそうなくらいのミニスカート履いてた」


「…あ、そう」私は心は一挙に動揺した。

「カオル君ちのチャイム何回も鳴らしてたよ」

「…あ、そう」何でもない風にミノリに返事をする。

「僕の事ちょっと見て来た。じろって感じで」

「ふ~~ん。…何か言われたの?」

「ううん。何も。今日母さんどこ行ったの?」

「ドライブ」

「どこまで?」

「運動公園」

「で?何したの?」

「…何もしないよ。行ってただ帰ってきただけ」

「それ、楽しかったの?」

「…いや、別に」


そうか…パンツ見えそうなくらいのミニスカートの子か…

そう言えば今日電話の途中でも生徒が来たからって

電話途切れたし…


パンツの子も生徒かな?

前の彼女とか?

今は彼女いないって言ってた。

いや、それは言ってただけか。

もし本当に今は彼女がいないのだとしても

水本の事を好きな女の子はいるだろう。


どんな女の子だったかもっとミノリに聞きたい。

綺麗な子かな。何歳くらいの子だろう…。

けど、聞かない。私は聞かない。


聞くつもりはないけど気になって仕方がない。

やっぱり水本の事なんか最初から気にしないで

ずっと無視していたら良かった。

嫌だな。こんなに心がもやもやするのは嫌だな。

関わらなかったら良かった。


夕食が終わった午後8時過ぎ、ドアチャイムが鳴った。

水本にしては時間が早過ぎる。

誰?高森美々なら開けたくない。

水本にも高森美々にももうできるだけ関わるのは止めよう。

同じアパートの住人、て感じだけで

あたりさわりなく、あたられさわられなくやっていくのだ。


「こんばんは」とドアの向こうから言って来た声は男で

でも水本の声ではなかった。

レンズを除くととそこには水本によく似た顔だ。



「こんばんはー」と水本弟がもう一度言う。

「…こんばんは」何で水本の弟がこんな時間に?

「うちの兄貴に鍵を渡しておいて欲しいんだけど」

チェーンを外さないドアの隙間から、

弟が赤いカエルのキーホルダーが付いた部屋の鍵をぶら下げてよこす。


「ダメかな」

「…管理人さんに頼むとかじゃダメなんですか?」

水本には関わらないようにしよう。

今夜もメールが来たらやっぱり遅いからって断ろう。


「あれ?なんか冷たい…」弟が笑いながら言った。

「…」

「でも兄貴からメールがあって、美月ちゃんに渡しといてって。

本人のたっての希望なんだよね」

チャラっと鍵を揺らして鳴らすが私はまだ受け取らない。


「なんかさぁ」弟がニヤっと笑った。「渡されたいんだって。

鍵を預けといたら夜遅くてもどうどうと尋ねていけるし

なんか鍵渡されたら嬉しいって言ってたんだけど、うちの兄貴。

鍵渡されるって自分の部屋の鍵じゃんねぇ?」

「あずかれません」

「え?でも今夜寄るんでしょ?兄貴」

「…」

「じゃあ、ハイ。今ビイの調子が悪くてさ。

あ、ビイってカエルの事なんだけど。

今夜兄貴んとこ泊ろうと思ったんだけど

邪魔しちゃ悪いから止めとく」

「あなたは朝からずっと下にいたの?」

「あーまぁじいさんの手伝いもあったけど」

「今日水本クンとこに誰か尋ねて来たってうちの子が言ってたよ」

「ふうん。オレは見なかったけどね。誰が来たの?」

それはパンツ見えそうな…「知らない」


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