土曜日の朝 4
「美月ちゃん?」水本が笑うので気持ち悪さ倍増だ。
「そんなにあからさまに気持ち悪がられると
なんかちょっと面白い」
面白いのか!
「違うよ」笑ったままの水本が言った。
「そういう長いスパンのストーカーとかじゃないから」
水本がそう言ったところにドアチャイムが鳴った。
なんだかよくわからないが椅子からすっと立ち上がった水本が
私より先に玄関に行く。
ちょっと、という私の止めもきかずに、
わざとぶっきらぼうに閉まったドアの向こうに応えた。「はい」
「兄ちゃん?」ドアの向こうの男の声が言った。
「ハル?」そう言って水本がドアを開ける。
「兄ちゃん!すげーな、もう一緒に住んでんの?」
「まだだよ。うるせーな。大きな声出すなよ」
「いや、だって朝からいっしょとか…」
そう言って水本の肩越しに私の顔をのぞいてきたのは水本の髪の長い弟だ。
「おはようございます」と私に挨拶をするので
私もペコンと頭を一応下げてみる。
やっぱり顔が水本に似ている。
「2号室の鍵貸して」水本弟はそう言う。
「よう、ミノリ!」水本弟は私の横に並んだミノリに手を挙げた。
おはよう、と言われたミノリは「…おはよう…」と小さく返す。
「何か良いにおいするんだけど、兄ちゃん」
「知らねぇ。鍵はオレの部屋の靴箱の上にあるから」
「ミノリ?」水本弟がまたミノリを呼ぶ。「カエル見に行く?」
「…今はいい」
「そっか?来たくなったら下りて来いよ」
「お前あんまりさ」水本が弟に言った。
「ミノリに馴れ馴れしくすんな。
オレだってまだいろいろ試行錯誤してそこまで仲良くなってねぇんだぞ」
そこへ水本弟の顔の両脇からごついツインテールがピョコンと揺れた。
「「水本~~~」」
ちっ!水本が大きく舌打ちした。
「ホラね?美月ちゃん。美月ちゃんがオレの言う事聞いて
さっさとオレんとこへ朝ごはん食べに来てたら良かったのに」
「お前らにやる分はないの」水本は弟とオレンジ姉妹に言った。
「「そんな事言うなよ、水本~~すんごい良いにおいがする」」
オレンジ姉妹が二人揃って大きく息を何度も吸う。
「「久しぶりだな、水本のパン食べんの」」
「だからやらねぇって!」
「「じゃあお前の部屋先行ってっから」」
そう言うとオレンジ姉妹は速攻で姿を消した。
「バカじゃねぇの、あの筋肉姉妹」
「兄ちゃん?」水本弟が呼んだ。
「何だよ?大事な話美月ちゃんとしてたのに。
今、軽くプロポーズの手前までいけてたのに」
「マジか!!オレ母さんに連絡するわ」
「連絡はいいよ。はっきり決まったらオレの口から言うんだから」
「そっか。じゃあオレもメシもらってから鍵貰ってくわ」
「勝手にオレの部屋入んなって。
今からミノリと美月ちゃんと3人でゆっくり朝メシ食うとこだったのに」
水本の話も聞かずに水本弟も消えた。
「僕嫌だからね!」ミノリが大きな声で言った。
「カオル君が母さんと結婚とか。
それに母さんも、もう結婚とかしないって言ってたし!」
「う~~~ん」と水本が唸った。
「何か時間が足りないな。ミノリとじっくりと話をしたいな。
オレ今日仕事休もうかな」




