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電話とメール

私は水本へ返すはずのメールを送信フォルダに保存して

取りあえず今は送らない。


「ミノリが嫌ならお母さんは水本さんとメールもしないよ。

ていうかミノリが嫌だったらここから引っ越してもいいよ。

でもね、…元に家には戻れないし、

お母さんはお父さんとは一緒に暮らせない。

一緒にいるともうものすごく寂しい気持ちになるから。

ホントごめん。本当に本当にごめん!」

ミノリが私を睨みつけた。「いいよ!もう…嫌だけど…」

「ごめん…」

また今夜もせつない夢を見そうだなと思う。



風呂と歯磨きが終わったミノリがもう一度元夫に電話すると

今度は電話に出たらしい。

ミノリの顔がパアっと輝いた。

そしてまずミノリが心配して聞く。「ちゃんとご飯食べてる?」

何だか私は泣きそうになる。


「そっかぁ」ミノリが言う。「ねぇ父さん、今度さ、

公園か河川敷とか一緒に行ける?じゃあさ、

行けそうな日をまた教えてね」

他愛もない会話が続く。学校の事、友達の事、宿題の事…

私の事は話さないで欲しいな。


ミノリは歓迎会の話も月見の話も水本の話も、

高森美々の話もしなかった。

小3男子ながら、その辺は話さない方が良いと判断したのだろう。

それでも高森弟の手品とオレンジ姉妹のダンスの話はした。

手品とダンスの話だけ聞かせたら、

いったいどんなアパートへ引っ越したのだろうと元夫は思うだろうか。

…いや何も思わないかな。ただミノリの話を「うんうん」と

優しく聞いているだけだ。


「お母さんと代わろうか?」

ミノリが言うのでびっくりする。

「止めてよ!」と口パクでミノリに言うが、

それを見てもミノリは何食わぬ顔で続ける。

「いや、すぐそばにいるけど?

…え、ううん、そうじゃないんだけどさ…」

ミノリが私の顔を寂しそうな目で見た。

「うん、うん、じゃあまた電話するよ。おやすみ」

ミノリはもう私の顔を見ずに電話を切った。



お母さんと代わろうか、の後はだいたい想像がつく。

たぶん、お母さんが何か話があるって言ってるのかと元夫が聞いて

私が言ってるわけじゃないっていうのをミノリが言って

「じゃあ、また今度でいいかな…」みたいな事を元夫が言ったのだ。

きっと。

…イライラする。


これで元夫が再婚相手をさっさと見つけて

再婚相手が子供を産んで何年かたっても

私とのように寂しい感じにはならないで、

始終幸せに暮らしたりしたら私は悔しくてたまらないんだろうな。

そしてそういう事を思う自分の腹の黒さに

どんどん、どんどんブスになるのだ。ブスで嫌なおばちゃんに。


私は頭をぶんぶんと振る。

それを見たミノリが私に白目を向いて見せた。

私が嫌な気持ちに囚われそうなときにそうするのを

ミノリは知っているからだ。

「おやすみ母さん。

カオル君とメール、ずっとやんないでよ?」

「やらないよ。まださっきのも送ってないよ」

ミノリが送ると言うので私はケイタイを渡して風呂に入った。



風呂から出るとミノリが先に寝ている。

今週はいろんな事があったものね。疲れるのも無理はない。

お母さんもいろいろ疲れたよ。


机の上に置いてあったケイタイを見ると

ミノリが送信したはずのメールの返事が水本から来ていた。



『件名  もう寝た?


 本文  返事ありがとう。

     ぶっちゃけ返事くれないかと思ってたから

     すごく嬉しかったな!

     大好きだよミノリ、美月ちゃん。

     また明日ね               』



また明日ね、っていい感じだなと思う。

変わった人たちばかりだけれど、私はここへ越して来て良かった。


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