帰り道 1
「なぁなぁミノリ?」水本が言う。
「美月ちゃんとオレでミノリを挟んで手を繋ご?」
え?と思ったがミノリが即答した。「そんな事しない。
小3にもなって親と手とか繋がないって」
「マジで!え~~…じゃあ今度3人でどっか行こう、ミノリ、どう?」
そう言った水本にミノリは「何で?」と無下に質問する。
「え…行きたいから…オレが。…ミノリは嫌だ?」
「嫌じゃないけど、3人で行く意味がわかんない」
「…そうか、そうきたか」
「オレンジアイスは好きかな?」とミノリが私に聞いた。
オレンジ姉妹の趣向の事だ。全く話を変えたな。さすが子ども。
「好きなんじゃない」と答える私は、
オレンジ姉妹がガリガリに凍った棒付きのオレンジアイスを、
まるでこんにゃくゼリーでもあるかのようにパクついて食べる姿を想像する。
「たぶんオレンジ関係の中では
オレンジピールだけがダメみたいって言ってた気がする。
違ったかな。でも失敗したなお母さん。
もっとオレン…ミカちゃんリカちゃんが好きなもの
リサーチしていけば良かったね」
「今度一緒にオレンジアイス食べたいな」
「そうだね~お母さんも一緒に食べたい」
「ねぇ」と水本が不機嫌そうに言った。「オレの話を二人で無視してる」
「無視してないよ」ミノリが言った。
「オレは3人で行きたいな」
「「…」」私とミノリは無言だ。
「今度オレンジアイス持ってったら一緒に食べてくれるかな」
ミノリはまだオレンジ姉妹に話を戻した。
「二人とも仕事してるからねぇ」私も水本の話には乗らない。
「ねぇミノリ。月は何であそこにあると思う?」
どうやら水本もあきらめたようだ。空を指差した。
「もともとは地球の一部で彗星とかがぶつかって
月になったのかもとかって、テレビでこの前やってたよ?」
「そうか?でもさ、それにしてはちょうどいい所にあると思わない?」
「…」
「もともとはあそこより近いとこにあったのかもしれないし、
遠い所にあったのかもしれないけど、
それでも今一番良い場所にあるよな?」
ミノリは首をかしげている。
もうアパートが見えてきた。
「寂しいな」水本が小さい声で言ったのでドキリ、とする。
「オレは部屋に独りだよ。ちょっとだけ3人でお茶飲もうよ。
どっちかの部屋で」
「カオル君、彼女いないの?」ミノリの質問にもドキリ、とする。
「いないよ」
「今はって事?」
「今はいない」
「だから僕たち誘うの?」
「だから誘うんじゃないよ。
ミノリと美月ちゃんを誘いたいから誘うんだよ」
「でもダメだよ」ミノリがきっぱりと言った。
「今夜は父さんに電話かける日だから」
「あ…」と水本が黙り込んでしまった。




